妹が約束を破ったので、もう借金の肩代わりはやめます

なかの豹吏

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 夜会は続き、わたしは笑い合う人々の端っこで感情を抑えるだけ。 それでも、やっとあの二人が離れてくれたから良かった。 

 この隙に少し心を休めよう……と、思っていたら、

「――お、お父様……」

 今度はあの父が、アインツマン様の方へと向かっているのが見えた。 子供同士が婚約するのだから当然挨拶はするでしょうけど、でも……


 ―――絶対失礼なこと言うわ、あの人。


 ああもうっ、ハラハラする! 出来るならあの口を塞いでしまいたい……!



 ◇



「久しぶりだな、アインツマン」
「……そうだな」

「先に言っておくが、ステラリアはノームホルン家の物だ、ダラビット家に神の恩恵は無いと思え」

「好きにしろ」

「フン! ……その、なんだ、コリーンは来てないのか」

「……会わせる顔がないそうだ」
「わ、私は別に、もう……」

「お前にじゃない、ダリアにだ」
「ダリア? ……どういう意味だ?」

「まったく、お前という奴は……」



 ◇



 アインツマン様が頭を抱えてる、やっぱり何かバカな事を言ったのね……。

 身内の恥に嘆息していると、他の令息達と三人で歓談するリオネルが目の端に映った―――


「おめでとうリオネル。 加護持ちの令嬢を迎えて、ダラビット家は更に大きくなる訳だ」

「ん? ああ、まあ、そうかもな」

「おいおい濁すなよ、もうみんなわかってるんだ、なあロイド」

「あ、ああ、でも……リオネル、さっき一緒に居たのがステラリア様、だよな?」

「そうだが、どうした?」

「いや、少し前に街で会ったんだが、なんか、違うんだよな……でも加護の力で小石を三本の剣にして、そんな事出来るのは―――ん? あ、あれ……あの隅っこに居るの――」
「ルーカス、ロイドはちょっと飲み過ぎたみたいだ、外で休ませてくる」

「あ、ああ、それなら私が……」

「大丈夫だ、すぐ戻る」


 ―――どうしたのかしら、友達を連れてリオネルが大広間から出ていく。 


「あなた、そろそろ」

「ああ、そうだな」


 視線をお父様達に戻すと、お母様が耳打ちをしていた。 そして父が動き出す。 大広間の中央、階段を登って―――

「いよいよね」

 始まる、二人の婚約発表が。


「紳士淑女の皆様っ! 今宵はノームホルン家へお集まりいただき誠にありがとうございます!」

 両手を広げ、呼びかけるお父様に注目が集まる。 

 いよいよかと思ったのはわたしだけではないだろう。 もう、ほとんどの人間は解っているのだから。


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