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しおりを挟む「本日は皆様にお伝えしたい事があります。 ステラリア、私の隣に」
「はいっ、お父様」
嬉しそうに階段を登る妹、その横顔は自信に満ち溢れている。 自分は選ばれた人間、特別なんだという自覚からだろう。
「ノームホルン家の誇り、神に選ばれ加護を授かったわたしの娘」
「ふふっ」
いつもそう、まるで一人娘みたいにお父様は言う。 それでも我慢した、お互い好きな人を譲ってくれた妹の為に。
本当はあなたに加護はほとんど無い、そう言うのは可哀想だったし、王子との結婚までは……と。
「このステラリアと、ダラビット家のリオネルが婚約する運びとなったのです!」
「おお……素晴らしい!」
「両家に繁栄あれっ!」
……白々しい、腹の奥はそうじゃないでしょう。 王宮を追い出されて舌の根も乾かぬうちに、それを受けるダラビット家も加護に目が眩んだ、そう思っているくせに。
「それではリオネル、こちらへ」
胸が焼き切れそう……。
一瞬だって隣になんか居て欲しく……
「リオネル……は、どこだ?」
――え? まさか、まだ戻ってないの!?
「あ、ええと……先程ロイドと外へ……」
「――なんだと!? まったく、今日がどういう日かわかっとらんのか!」
何やってるのリオネル、こんな大事な時に……――――も、もうっ!
「わ、わたしが連れてきますッ!」
これじゃ先に進まない、そんなの困るのッ!!
◇
「どうしたっていうんだ!? 私は酔ってなんか……」
「どうしたもこうしたもない、今日が私にとって大事な日なのはわかるだろ?」
「そっ、そうだが……。 ――いや、違うんだリオネル! いいか? これは妬みで言ってるんじゃないぞ?」
「はぁ……なんだ? 私はただ、お前が騒ぎを起こしそうだったから……」
「聞いてくれッ! ステラリア様はいい、だが姉の方には気をつけろ」
「……どういう事だ」
「姉に力が無いなんてのは嘘だ、ステラリア様は神の加護を授かった、だが姉の手に入れた力は――――悪魔の力だ……!」
「悪魔?」
「ああ、私は体験したんだ、恐ろしい力で私を串刺しにしようと―――うッ……」
「……ロイド、お前は噂話や人の不幸が好物だからな。 誰が悪魔だ、しばらく寝てろ」
「……悪魔」
「――っ」
そうか、リオネルが連れて行った友人は、街に出たあの日の……
「ダリア……そうか、もう始まったのか」
「……ええ、急いで」
呼びに来たわたしを見て、状況を把握したリオネルは大広間へ走って行った。
すれ違い際に、「泣き虫な悪魔だな、ちっとも怖くないぞ」そう言って、わたしの頭を撫でてから――――
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