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第8章 国立学校編
創造神の慈悲の光
「なぁ、この女神どうやって元いた世界に戻すんだ?」
俺はその疑問をユーリに聞いてみた。
だって本人(本神?)、自分では戻れなさそうだもんね。
「そこは創造神がなんとかするようだよ?ちょっと痛いかもとは言っていたけど、それはしょうがないよね?」
ユーリはそう言って女神テネブルの方に顔を向けた。
それを聞いた彼女は渋々といった表情で頷く。
「仕方があるまいて。配下の尻拭いは甘んじて受けよう。」
女神テネブルは覚悟を決めた顔だ。
「じゃあ……にぃに、この建物と彼女、魔物達の結界を全て解除してくれる?それをしてもらわないと連れていけないんだってさ。」
ユーリがチラッと上空に目をやると、そんな事を言った。
……ん?結界が邪魔になるのかな?
解除するのは良いんだけど、魔物達は逃げ出して王都の市民を傷つけたりしないだろうか?
俺がそう言うと、ユーリはニッコリと嗤って「大丈夫だよ、にぃに。創造神が見逃すはずないじゃないか。ピンポイントで潰すから大丈夫!」と言った。
……ユーリや、君はいつからそんな表情をするようになったんだい?
なんだか不安になるような言い方をされたが、まぁユーリが大丈夫って言うなら大丈夫なんだろう。
とりあえず俺はユーリの言う通りに全ての結界を取り払った。
「じゃあにぃに、僕達はこの建物から少し離れよう?……できるなら外に出たら結界を張ってもらえる?」
「えっ……この場の女神や魔物はどうするんだ?」
「もちろん、このままここで待っていてもらうよ。……待てるよねぇ、テネブル?」
ユーリはとても冷たい表情でテネブルを見ると、彼女は青ざめた顔で頷いた。
それから俺達はミラー騎士団長を立たせ、3人で教会を出る。
もちろんその時に建物の中に他に人がいないことは一応確認した。
どうやらスコットさん達は街の方の騒ぎの沈静化に向かったようだね。
俺は建物の外に出るとすぐに3人まとめて結界を張る。
……これから何があるのかな?
「……何故、私も連れてきた。」
ミラー騎士団長はガラガラの声で、俺に向かってそう言った。
「何故って……逆に聞きますけど、ミラーさんはあそこに残って何するつもりだったんですか?」
俺はまさか居残るつもりだとは思ってなかったから連れてきたんだけど、何か考えがあったのかな?
そんな俺の質問にミラー騎士団長は「……あいつらはこの世から居なくなるまで見張っていなければ。信用などできんからな。」と答えた。
まぁ……それは確かにそうなんだけど、ユーリがああまで言うなら大丈夫だと俺は思ったんだよね。
それってユーリへの信頼が厚いからなんだろうね。
「大丈夫だよ、あなたが心配することはない。だって……ほら。」
ユーリはそう言うと教会の上空へ指をさす。……ん?何だ???
俺たちが上空を見た瞬間、細い一筋の光の線が先ほど出てきた入り口の上に落ちた。えっ?何ごと!?
「ほら……ね?あれはね、こちらの方に追ってきた魔物をこの建物から出さないために潰したんだよ。」
ユーリはフフッと嗤うと、両手を上に掲げる。
すると次の瞬間、いつかのように眩しいほどに光るもの凄く太い光の柱が天から振ってきた。
「っ!マジかっ!」
俺は慌てて更に強度の高い結界を重ね張りする。
その瞬間、辺りを轟音と目も開けていられないほどの光が満ちた。
暫くして音も光も落ち着いた頃、目を開けてみると先程まであった教会が跡形もなく更地になっていた。
そう、建物の残骸なんかも全く無い。
だがすぐ隣に建っている王城は全くと言っていいほど被害は無い。
……なるほど、先ほどの光の柱でここだけをピンポイントで『無かったことにした』訳だ。
良かった、しっかり結界張っておいて。
俺はホッと胸を撫で下ろす、
1枚でも多分大丈夫だった気もするけど、2枚張っておけば安心感が違うよね。
ふと横を見ると、とても顔色の悪いミラー騎士団長がいた。
……あれ?もしかしてこうなる事を予想してなかった感じ?
それならあの発言も頷ける。
俺は薄々気づいていたけどね!
……あんなに太い光だとは思ってなかったけど!
「……連れ出してくれていて助かった、礼を言う。」
ミラー騎士団長は青白い顔で、その顔に複雑そうな表情を浮かべていた。
「それにしても君達は、何だかそこまで驚いたような感じがないな。俺は相当な恐怖を感じたのだがな。」
「えぇ、過去に何度も体験していますからね……。慣れていいものではないんでしょうが、慣れました。」
俺は遠い目で苦笑いをした。
そんな俺にミラー騎士団長は「大変だったんだな」とひと言声をかけてきた。
すると、遠くの方からたくさんの人が集まってくる気配がする。
そりゃああれだけの事があったんだ、人も集まるよね。
「おいっ!大丈夫か、シエルッ!!」
大きな声で俺の名前を呼ぶのはリッキーだ。
その後ろにスコットさんたち3人の姿も見えた。
……良かった、4人共無事だったんだね。
俺はホッと1つ息を吐いた。
「ここには教会があったような気がするんだが、全く何も無いが……もしかしてあの光は例の?一体ここで何があったんだ?」
俺のそばまで駆けてきたスコットさんは俺の無事を確かめると、ひと息ついてからそう聞いてきた。
……そりゃああれだけの事があったんだもんね、気になるはずだ。
俺は教会に戻ってきてからの出来事を話す。
するとそれを聞いていたミラー騎士団長は少しだけ顔を背けた。
たぶん自分が女神の召喚の引き金を引いたことに後ろめたい思いを感じているのだろう。
全てを聞いたスコットさんは「……そうか」とだけ言うと口を閉じた。
神父にとどめを刺したミラー騎士団長の気持ちもよくわかるから、何も言えなくなったんだろう。
でも元凶の神父がいなくなったんだし、これでやっと第1王妃とその子供を癒してあげられる。
どこまで治せるかはやってみなければ分からないが、少しでも良くなってくれれば……と思っているよ。
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