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第9章 ネシアのダンジョン編
ゼフィアはどうしてるかな?
しおりを挟む「どうする?ゼフィアを迎えに行くのか?」
リッキーが苦笑いをしながら俺にそう言った。
そうだよねぇ……でも迎えに行くならリリーさん連れて行かないとだな。
「……あいつ、多分大喜びで乗って帰るかもな?」
「そうなの?リリーさんって小さくて可愛いものが好きだったはずだけど……?」
「それは変わってないんだが、実は超大型犬を飼った事があってな。その時に『乗れたら良かったのに!』って言っていたことがよくあったからさ。『今度こそ乗れる!』って喜ぶんじゃないかな。」
俺の心を読んだリッキーが、前世での姉さんの言動からそう言った。
それなら案外ショックは受けなくて済むかも?
……いや、ゼフィアを改めて『譲れ!』と言ってきそうだ。
だがそうなったら、そこはもうゼフィアの意思を尊重することにする。
あの子がリリーさんを主にしても良いと思っているなら、従魔契約を解除し、改めて結んでもらってもいいだろう。
俺がそんな事を考えていると、リーシェさんは俺たちの話を聞いてなんとなく理解したのか、「リリーさんはゼフィアの事をそんなに好きなのかい?」と聞いてきた。
「ええ。俺の従魔になったゼフィアを、肌見放さずしっかりと服のポケットに入れて守っていたくらいですからね。俺の従魔を辞めて私の従魔になって!って言い出しそうです。」
俺が肩をすくめてそう言うと、リーシェさんは珍しくお腹を抱えて笑い出した。
ひとしきり笑うと、涙を拭って微笑む。
「そんなに好きだったんだね。ならフェンリルの長にもう1頭譲ってもらえばどうだろう?あそこは子沢山だから、みんなが乗れるほどの頭数は譲ってもらえるかもしれないよ?」
「いやいや、そんなにはいらないですよ!それにそんなことになれば森の守護にも影響が出るはずですし!」
俺がリーシェさんの言葉に慌ててそう返すと、笑いながら「そうかい?」と言って首を傾げる。
「それにちょうど、もうすぐ出産の時期になるだろうから子供も生まれるだろうしね。その生まれたばかりの子を譲ってもらえば良いんじゃないかな?」
リーシェさんはそんな事を言うが、流石に産まれてすぐの子を譲ってもらう訳にはいかない。
赤ちゃんの時はやはり親元でしっかり愛情を受けて育つのがいいと思うからだ。
俺がリーシェさんにそう言うと、優しい目で「そっか、君は従魔をとても大切にするんだね。」と言った。
「それって当たり前じゃないんですか?」
「いや、そうでもないんだよ?君のように魔獣、神獣どちらも従えることのできる能力を持っている人は、大抵自分の従魔になると手のひら返しのように『物』のように扱うようになる。だからこそ神獣は姿を隠してしまったんだ。君の場合はユーリ様がいるから安心して姿を見せてくれるけれどもね。本来は本当に森の奥や姿が見えないように隠れてしまっているんだよ?それに神獣は無理でも魔獣を扱うことのできる者はなおさらその傾向が強い。特に強い魔獣を見つけると何人がかりであっても絶対に捕まえようとするしね。その手の輩を私が冒険者をしている時に相当数見かけたものだ。」
リーシェさんはそう言って、昔のことを思い出したのか顔を顰めている。
そうなんだ……そういう奴ばかりだと俺が神獣だったとしたら確かにやだなぁ。隠れるのも頷ける。
だがそういえば俺は気づいたことがある。
「でもリーシェさん、魔獣使いって見かけなくないですか?」
そう、俺は今のところ俺以外の魔獣使いを見かけたことがない。街中でも魔獣を連れている人を見かけないのだ。
「いや、実は案外いるんだよ?ただ、街中で従魔を連れてると人によっては奪われたりするから見せないだけでね。特に強い魔獣を連れている者は影に潜ませたりしてるようだ。」
「……影、ですか?」
「ああ。……って、あれ?そういえば君は従魔を腕輪に収納しているけど、影に入れたところを見てないね。もしかしてやり方分からないのかな?」
「ええ、初耳です!」
「おやおや、父さんもうっかりしてたんだね。てっきり父さんから聞いてるのかと思っていたよ。」
リーシェさんはそう言うと、俺にとりあえずユーリを収納から出すように言う。
だがしかし、タイミングよくユーリが収納から出てきたので出す手間が省けた。
「じゃあ簡単に説明するけど……ユーリ様はなんとなくシエルくんの影に入れそうだと感じませんか?」
リーシェさんはまずはユーリに話を振る。
ユーリは頷くと、俺の影に手を突っ込んだ。
するとそのままスルスルと中へと入っていく。
えっ、まじか!?入っちゃったよ!
でも俺から入れたわけじゃないから、どうしたら良いのか分からないんだけど!?
俺は困った顔でリーシェさんを見る。
「ユーリ様は自ら入っていったけど、本来は入れる時は名前を呼んで『影に入れ』と言えばいいし、出す時は名前を呼んで『側に控えろ』と言うんだよ。まぁ君の場合は名前を呼ぶだけでも従魔は出入りできそうな気がするね。」
リーシェさんは俺の影からちょこんと顔を出しているユーリを見て、そんな事を言う。
……ユーリや、なんか見た目おかしなことになってるから早く出てきなさいな。
ほら見ろ、リッキーが顔引きつらせてるぞ?
とりあえずリーシェさんからは「影の中にいるほうがシエルくんの魔力はたっぷり貰えるよ」とのことなので、俺の魔力を与えたい場合は影の中にいてもらうことにした。……ユーリは強制的に腕輪ね。
それから俺たちはリーシェさんとまた学校で会う約束をして、みんなのいるネシアの宿へと一気に転移した。
部屋にはまだみんな帰ってなかったのか、部屋の中が真っ暗でびっくりしたよ。
「なんだ、あいつらまだ帰ってきてなかったのか。」
リッキーは部屋の明かりをつけながらそう言った。
そうだね、俺も皆はもう帰ってきてるのかと思っていた。
だってもうすぐ暗くなる頃だ。
とりあえず俺たち3人は部屋のソファーに座ってみんなの帰りを待ちながら、先ほどのゼフィアの事を話していた。
いつ迎えに行くのか、リリーさんを連れて行くのか、それともみんなで行くのかとかね。
とりあえずはリリーさんに知らせて、すぐに迎えに行きたいとなればすぐに迎えに行くことにした。
そんな話をしている間にみんなが帰ってきて、今日の出来事を話し出す。
どうやら皆はヒューザとか出ていなかったが、闘技場で大会を見てきたらしい。
悠馬が全然見足りなかったようで、観戦することになったのだ。
それを見てから屋台でいろいろ買い食いをしたり、あちこち店を眺めて帰ってきたらこんな時間になったそうな。
「……夕飯は?」
俺はみんなが買い食いをしたあたりから嫌な予感がしていたのだが、やはりみんなお腹いっぱいでいらないと言われてしまった。
しょうがなく3人だけでルームサービスを頼む。
……つもりだったのだが、4属性竜の長たち4人は一緒に食べると言って一緒に頼んでいた。
まぁ少人数より大人数のほうが美味しく感じるよね!
夕飯を食べ終わってから、今度は俺たちが何をしてきたのかの話になり、いろいろ話したのだが……ゼフィアが大きくなっているという話をするとリリーさんはリッキーの予想通りに喜んでいた。
「ねぇ、いつ迎えに行くの?ねぇ、ねぇっ!!」
「ちょっ!落ち着いてよ、姉さん!」
俺の両肩を掴んでガクガクと揺らしながら聞いてくるリリーさんを抑えつつ、少し離れてくれと頼む。
リリーさんは渋々と俺から離れると、改めて聞いてきた。
「それはお前がすぐに迎えに行きたいっていうなら行っても良いんだがな、ただゼフィアも久しぶりに両親と過ごしているだろうから、もう少し後で迎えに行くのも良いんじゃないかと思ったんだ。」
リッキーがリリーさんの頭にぽんと手を乗せると、リリーさんは「む~……」と唸ってしまった。
「まぁどちらにしろ、明日ちょっと様子見に行ってみるか?向こうもこちらの事が気になっているかもしれないしな。」
そう言って、スコットさんは苦笑いをする。
そうだね、明日は久々にゼフィアの顔を見に行こうか。
リリーさんには言わなかったけど……もしかしたら赤ちゃん産まれてたりするかな?
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