440 / 526
第10章 国立学校 (後期)
魔術トーナメント戦 5
しおりを挟む俺が試合場に戻ってくると、グリーさんから「すぐに試合始めるで~」と声をかけられたので、そのまま中央に向かう。
対戦相手はもう立っていて、その相手は予想外のミストさんだった。
「えっ、ミストさんが決勝戦の相手なの?」
俺は驚いて、思わずそう言ってしまった。
するとミストさんはむっとした顔で「悪かったな、俺で」と言った。
……ごめん、意外すぎて思わず言っちゃった。
「シエルさん、この坊主、意外と強い魔法を使いよるんやで?適性魔法が闇魔法なんはなかなかおらんしなぁ。あ、あと火魔法も使えるよって、案外強いで?」
グリーさんがそんな事を言ったが、『闇魔法』と聞いてなんとなく俺は納得してしまった。
あのお父さん、性格的にそっち方面に適性ありそうだったもんね。
それにあの女神の加護を貰っていたとしたら尚更なのかもしれない。
俺がそんな事を考えているとグリーさんから「始めるで?」と言われ、俺は慌ててミストさんの方に向き直る。
その直後に開始の合図が出された。
俺はとりあえずミストさんの出方を見るために様子見をしていたが、どうやらミストさんは前もって準備をしていたようで、急に目の前から居なくなった。
俺は慌ててキョロキョロしたのだが、やはりどこにもいない。一体どこへ?
するとその背後になんとなく気配がしたので振り向こうとしたところへ、小さなファイアーボールが叩きつけられた。
その気配に反射的に身体が反応し、ファイアーボールへ拳を叩きつけて霧散させる。
だがファイアーボールが打たれただろう場所には誰もいない。
そんな事が何度もあったことで、俺もようやく気がついた。
そっか、これが闇魔法の影移動なんだね!
ならばこれの対処は……これだっ!
俺は試合場全体に巨大で薄く平たいライトボール?を作り出した。
もうすでに『ボール』ではないが、これなら影は足元に映らない。
「シエルさん、それは確かに有効やけど、あの坊主が出てこられへんがな。一旦しまおうか~?」
呆れた顔でグリーさんがそう言うので、一旦しまう。
すると俺の足元にある影からミストさんが出てきて、「何してくれるんだ?」的な苦い顔で俺を見る。
「……お前なぁ。あれでは俺が出てこれないじゃないか。」
「だって影から出てくるなら影を消せばいいって思うじゃない。でもまぁ……全く影が無くなるようにしたのはごめんね?」
「それに、なんだあの対処法?普通、拳でなんて魔法は消えないんだぞ?」
まだ苦い顔をしているミストさんに、俺は素直に謝る。
「んじゃあ改めて試合始めてや~」
グリーさんのその言葉に、構える俺たち。
ミストさんはもう影移動は使わないことにしたようで、姿を消すことはなかった。
その代わり、闇魔法の1つらしき真っ黒な球体を空中に作り出す。
それは周りの光を吸い込むようなブラックホールみたいな見た目をしている。
俺が「なんだ、あれ?」と見ていると、ミストさんはそれを俺の方にものすごいスピードで飛ばしてきた。
あれは……どう対処する?
なんとはなしにあれに触るのは危険だと本能が告げている。
ならば……色からして闇魔法ぽいので、光魔法か神聖魔法で無効化できないだろうか?
俺は必死に考えて、光魔法で柔らかな壁みたいなものを作り、勢いよく飛んでくるそのブラックホールみたいな球体を包んでしまう。
それならば魔法同士がぶつかっても内部に閉じ込められて安全だろう。
案の定2つの魔法は中でぶつかって結構な音の爆発をしたらしいが、俺の魔法の方が魔力が強かったらしくて周囲には問題なかった。
「あっぶないなぁ!あれって何だったんだ?」
俺はミストさんにそう言うと、彼は肩をすくめて「闇魔法で作ったボールだ。ぶつかると爆発はするが、まだ習いたてだからそれほど威力はないぞ」と言った。
「でも俺の魔法の中で爆発したのは結構な音がしてたよ?」
「そりゃあ、そうだろう。お前の魔法の威力も合わさるから、爆発の威力も倍になったんじゃないか?」
……まぁ、確かに2つの魔法の威力が合わされば倍になるか。
俺はなんとなく釈然としなかったが、試合に戻ろうとした。
「いや、俺の降参で良い。どうやっても勝てないだろうからな。それに……ほら、あっちの方も優勝者が決まったようだぞ。」
ミストさんのその言葉に、俺は先ほどまでいたBチームの試合場を見る。
するとリーシェさんが中央に立っているアンドリューの方へと、拍手をしながら向かっているのが見えた。
なるほど、あっちはやはりアンドリューが優勝したんだね。
「なんや、坊主はもうええんか?まだ出すもんあるんやったら、シエルさんにぶつけてみればええのに。ほんまに負けでええんか?」
グリーさんがミストさんに確認を取ると、ミストさんは頷き「ああ、それで良い」と答えた。
「ならAチームの優勝者はシエルさんで決まりやな。みんな、お疲れさんやったな。」
グリーさんはそう言うと、拍手をしながら俺のもとへとやってきた。
するとBチームの方から「そっちも決まったかい?」と叫ぶリーシェさんの声が聞こえた。
「はいな~。やっぱりシエルさんで決まりやったで~。」
「そうか、やっぱりね。さてシエルくん、最後の試合をするからこの白線の上にある結界を解除してくれるかい?」
リーシェさんは白線の所まで歩いてくると、立ち止まって俺にそう頼んできた。
俺はすぐにその結界を取り除く。
これで試合場は倍の広さになったわけだ。
「さて……シエルくんもずっと魔力制限をかけていて疲れただろう?アンドリューくんとなら思う存分戦えるし、その後にはグリー殿との戦いもあるからその魔道具は取り除くよ。」
リーシェさんはそう言うと俺の手首にはめている魔道具を取り除いた。
……おぉ~、なんか身体が軽くなった気がする!
俺がにこにこ顔で2人を見ると、リーシェさんは苦笑いをしていた。……ん?とうした?
「今までシエルくんがはめていた魔道具なんだけど、実はそれ、犯罪を犯した魔法師用の拘束具なんだよ。本来はそれをはめると全く魔法が使えなくなるから安全に魔法師を無力化できる魔道具なんだけど……君の場合はあまり意味を成していなかったよね。それに結局はみんな、君との力の差を見て試合放棄しちゃっていたし、あまり意味なかったようだし。ごめんね、結構疲れたでしょ?」
リーシェさんはそう言うと、俺に謝ってきた。
……なるほど、でもなんとなくそんな使い方をする魔道具だろうとは思っていたよ。
だって普通に過ごしていれば、魔力制限をかけるような場面って無いもんね。
俺は苦笑いをしながらリーシェさんに「気にしてないから大丈夫ですよ」と伝える。
でもまぁ、これで能力は戻ったし、アンドリューとグリーさんとはしっかり戦えるね!
アンドリューも得意な風魔法が使えるし……どんな試合になるのかワクワクするよ!
171
あなたにおすすめの小説
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる