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第12章 新しい土地へ
依頼の受注
「どうだ?気が済んだか?」
スコットさんが口の端に笑みを浮かべてそう言った。
俺はつい、子供みたいに口を尖らせてしまう。
俺は内心で「知ってたなら最初に言ってくれても良いじゃない!」と思ってしまった。
そんな俺を見てスコットさんは苦笑いをして、無言で頭をくしゃくしゃと撫でてきた。
……なんか、ムカッとくるんだけど!
しばらくするとやはり思っていた通りに冒険者の波はかなり引いていき、悠々と高ランク冒険者用の依頼書を見に行く。
すると、グリーさん達のいた休憩所にいた冒険者達もこちらへとゆっくり歩いてきた。
……なんだ、あそこにいた冒険者たちも、低ランク依頼書を見ている冒険者たちが去るのを待っていたんだね。
でも俺たちは目の前に立っていたのもあって、まだ冒険者がいなくなる前に掲示板へと近づいて真っ先に眺めることができた。
「……これって、高ランクじゃなきゃ駄目な案件なの?」
その掲示板に貼っている高ランク冒険者用の依頼書を見た俺は、思わずそう呟いてしまった。
だってさ、『街から船着き場までの護衛』や『騎士団との合同演習』、『森の中の魔物討伐』などの内容ばかりだ。
特に『街から船着き場までの護衛』や『森の中の魔物討伐』なんて、低ランクでもこなせる依頼じゃないのか?
それに『騎士団との合同演習』も……いや、これは高ランクでなければ意味がないのか。
弱い相手と戦っていても、騎士団は成長をしない。
成長を促すならやはり自分達よりも強くなければ。
俺がそんな風に依頼書を眺めていると、後ろから手を伸ばして『騎士団との合同演習』の依頼書を取った人がいた。
振り向くと、全く知らないエルフの男性が後ろに立っていた。
「……失礼。もしかしてこの依頼を取りたかったのかな?」
そのエルフの男性は俺と目を合わせると、感情の読めない表情で小首を傾げてそんな事を聞いてきた。
「いえ、俺は特には何かを選ぼうとはしてませんから気にしなくて良いですよ。」
俺は彼にそう答えると、にっこりと笑う。
「そうか。それなら良いんだ。では、私はこれで失礼するよ。」
そのエルフの男性はそう言うと、さっさと依頼書を持って受付へと向かった。
「ほれ、うちらはこの依頼を受けるぞ。」
リッキーが手に持った依頼書をヒラヒラさせながら俺と肩を組む。
「何の依頼書を取ったんだ?」
「ん?ああ、比較的無難な『森の中の魔物討伐』を選んだんだ。本当は演習のやつでも良かったんだが、なんか今のエルフと被るのが嫌でやめたんだ。」
リッキーはそう言うと肩をすくめる。
まぁ、そりゃそうか。
俺が「違う」って言ったばかりなのに、依頼の場所に行ったら俺達がいた、なんていうのはなんか気まずい。
「じゃあ何で『街から船着き場までの護衛』の依頼書は選ばなかったんだ?」
俺は少し疑問に思っていたことを聞いてみた。
するとリッキーは「そんなの簡単だよ」と言って苦笑いをする。
「ああいうのはな、もし万が一でも荷物を少しでも駄目にした場合、この国の政府が巨額の賠償金を請求してくるんだ。だから依頼も『高ランク限定』なわけ。高ランクならその万が一も起こりづらいからな。かといって、知らない国に来て初の依頼がそういう、いわゆる『赤い依頼』なのは勘弁だよな。」
リッキーはそう話しながら受付へと向かう。
他のメンバーの顔を見ると、3人とも同じ様な苦笑いを浮かべていた。
そうか、冒険者への依頼にはそんな依頼もあるんだね。しかも『赤い依頼』って呼ぶんだ。
そして俺達がその場を離れたのと入れ替わりに、男性3人と女性1人の集団が掲示板へとやってきた。
そしてすれ違う瞬間、先頭にいたエルフの男性がこちらをチラッと見た。
その男性と俺の視線が交わった瞬間、その男性の表情に驚きの色が浮かんだ。
俺はその視線をなんとも思わず、皆についていく。
俺が受付に到着する頃、背後から「どうした、ジイ?何か気になることでもあったのか?」という声が聞こえてきた。
俺が少し振り向くと、先ほどのエルフの男性とまた目が合ったか、今度はあっちの方から視線を外した。
それを見て、俺も受付の方に向く。
「この依頼を受注したいんですが。」
受付にはリッキーではなくスコットさんが先ほどの依頼書を提出していた。
やはりここはリーダーに、ということなのだろう。
「はい、こちらの依頼書ですね?こちらは低ランクの方にも依頼が出される森で、どちらかというと街に近い方は低ランクの方向け、奥の方に向かえば向かうほど高ランク向けの魔物が出てきています。実はあの森には本来、弱い魔物しかおらず、街の人も安全に散策できていたのです。」
受付の人はそこまで話すと、急に纏う雰囲気が悪くなった。
「ですが、1年ほど前から急に住み着く魔物の数が増えだしまして。奥に行けば奥に行くほど強い魔物が出てくるので、高ランク冒険者の方には一体何が原因でこんな事になっているのか調査してもらう事もこの依頼には含まれています。ですが今のところ、まだ原因がつかめていません。あなた方もこの依頼を受けるということは高ランク冒険者なのでしょうから、できるだけその原因となる事を探ってきてもらえないでしょうか?」
最後には受付の人は懇願するような顔でこちらを見てきた。
えっ……そんな懇願するほど困っていたのか?
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