異世界のんびり漫遊記

カイ

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第3章 スノービーク〜

聞き取り開始!

昨日の魔法行使の現場を見たという証言を探すために、エミリーさんとスコットさん、リッキーとリリーさん、俺とセバスの3チームに分かれて探す事になった。

俺もセバスと一緒に、一番目撃情報がありそうな街の中心部を探すことに。

ここなら顔もわれてないし、聞き取りしても素直に話してくれそうだからという理由で選ばれた。

富裕層が多い地域はリッキーとリリーさんが担当し、街の入り口に近い地域はスコットさんとエミリーさんが担当している。

俺たちが聞き取りを始めると、やはり最初は警戒をしてあまり口を滑らせなかったが、しばらくすると俺たちの顔は街の中でほとんど見かけてないので「観光客」だと思ってポツリポツリと話し出す人も出てきた。

その人たちの話では、リリーさんとミストさんが言い争うところはみんな見ていたが、ミストさんが魔力を高めだしたところで逃げていった人ばかりのようだ。

なかなか目撃者がいなくて困っていた頃に、時々だが別な案件の証言も話し出す人がいた。

その人達によると、ヘイスさん一家は本当に街ではやりたい放題だった様で、無銭飲食はもちろん、いろいろな暴行も何度もあったようだ。

特に酒場での暴力沙汰はしょっちゅうで、その時にも掌に魔力を高めて魔法を使うぞと脅すこともあったらしい。

そんなこともあったから、昨日掌に魔力を高め出したら蜘蛛の子散らすようにみんな逃げていったのか。

「そういう話ってウォールさん…領主様には話したりしないんですか?」

俺は聞いた人に毎回そう尋ねたが、みんな一様に「次期領主になるから、何言っても有耶無耶にされてしまうだろう。」と言って諦めていた。

でも俺がその度に今朝ウォールさんから聞いた話をすると、みんな顔を青ざめさせたり真っ赤にして怒ったりしていた。


夕方近くになった頃、時間を知らせる鐘が鳴り響いた。

この街は鐘が3回鳴るらしい。

朝の7時と昼の12時、そして夕方の5時だ。

それをめどにみんな行動しているらしい。

話はそれたが、皆とは夕方の鐘がなったら領主屋敷の門の前に集合することになっている。

そんな感じで俺の担当エリアの聞き取りを終了しようとした時、1人の少女が俺に近づいてきた。

「どうしたんですか?なにか用でも?」

その子は俺のそばに来ると、意を決したように真剣な顔で俺を見上げた。

「お兄さんが昨日のリッキーさんとミスト様の件で聞き回っているって聞いて……。」

「なるほど、それで情報を、と思ったんだね?どんな情報を持ってきてくれたんだい?」

「私……あの時一旦は建物の角に隠れたんですが、そこから顔を出して見ていたんです。たからミスト様がリッキーさんに向かって雷を落としたのを見ました。」

「っ!それは本当ですか!?それ、証言として領主様の前に一緒に行き、証言してもらえませんか?」

「はい。その為に声をかけに来ました。」

よしっ、証人をゲットだぜ!

それから俺たちはみんなとの待ち合わせ場所へと急ぐ。

向かっている時にふと気づいたが、この少女、リッキーは「リッキーさん」、ミストさんは「ミスト様」って呼んでいた。

それだけ街のみんなの中では、立場が逆転していたんだろうな……。


夕方の鐘が鳴ってからしばらくして、俺達は待ち合わせ場所に到着した。

そこにはメンバーの他にも、結構な人数の街の人が集まっていた。

「どうしたの、こんなに人がいっぱい集まっているなんて?」

俺はリッキーに話を振ると、どうやらここにいる人たちも昨日の件の目撃者らしい。こんなにいっぱいいたんだね!

それから俺たちはみんなで門をくぐった。

その足で領主の館に向かっていると、屋敷の扉の前にヘイスさん一家が立っていた。

「いったい、何の真似だ?」

ヘイスさんは俺たちを睨みつけながら低い声で話す。

すると、ついてきた街の人達が恐怖で口をつぐんでしまった。

まずい展開だ……と思っていると、門の方から大勢の街の人達がやってきているのが見えた。どうしたのかな?

「我々はもう、あなた達ヘイス様一家の事は恐れません!今までの事を領主様に訴えに来ました!」

こちらに人々が到着すると、その中の代表の人がそう叫んだ。

おぉ~、街の人が立ち上がってくれたんだ!

すると、俺達と一緒に来ていた人達も真剣な顔でヘイスさん達を見た。

「我々も、もうあなたを恐れません!昨日見たことを、ありのままに証言しに来ました!そこをどいてください!」

そう言われたのが相当頭にきたのか、ヘイスさんが顔を真っ赤にしながらみんなに向かって叫んだ。

「貴様ら~っ!我々を誰だと思っている!次期領主一家だそ!?歯向かったらどうなるのか分かっているだろうな!!」

ヘイスさんに怒鳴られた街の人は一瞬ひるんだようだが、さらに声を大きくして叫んだ。


「何度も言うが、我々はあなた達一家をもう恐れない!お前達にはこの街を出ていってもらうんだ!」

代表者がそう叫ぶと、後ろにいる人達の口からも「そうだ、そうだ!!」と賛同の声が。

するとヘイスさん達の後ろにある扉が開いた。

中からはウォールさんが出てきた。

ヘイスさんの後ろから前へと出ると、辺りにたくさんいる人集りを見て訝しげな顔をする。

「一体、何事なんだ?」

ウォールさんは街の人達を見て、それからヘイスさんを見た。

すると今度は街の人達とは逆に、ヘイスさんが焦りだす。

「いえっ、兄さん、これは何でもないんです!」

「何でも無いでこんなに街の人が集まるわけないだろう。……みなさん、一体何がありました?」

突然の領主登場で驚いていた街の人達の中で代表者が一番早く元に戻ったようだ。

彼は少しオドオドしてはいたが、はっきりとした口調でみんなの言葉を代弁した。

「領主様。我々はもう限界です。ヘイス様がたをこの街から追放してもらえないでしょうか。」

「……追放するにはそれなりの理由がいる。君たちはその理由を述べることはできるのか?」

真剣な顔でウォールさんは代表者を見た。

その顔は威圧したり蔑んだりせず、穏やかな表情でありながら、真剣な目をしていた。

代表者はその表情や目に勇気をもらったのか、1つ頷くと答えた。

「はい、理由はあります。昨日の街中での魔法使用の件ですが、そこにいる彼らが証人として出頭しています。その他にも、ヘイス様たちが過去にやっていた事を証言できるものも、この場にはいますので……」

「そんなのは嘘っぱちだ!嘘をついているのは貴様らだっ!兄さん、彼らに騙されないでください!」

ヘイスさんは代表者さんの言葉を途中で遮り、ウォールさんに自分のほうが正しいから信じるなと訴えかけた。

それを見て街の人々は不安そうな顔をしている。

しかしウォールさんはしっかりとした目でヘイスさんを見た。

「ヘイス、私は街の人達の証言もお前の話もきちんと聞いた上で判断する。……お前は知らないだろうが、お前が隠していると思っている悪事も一部は私の耳に入っているんだ。私が全てお前の言い分を信じると思ったら間違いだからな。そこだけは覚えておきなさい。」

ウォールさんのその言葉により、ヘイスさんは自分達の悪事がバレていたことを知ったようだ。
ヘイスさんなんかは顔色が真っ青になってしまった。

逆に街の人達は、自分達の領主は公平な考え方を持っている人だと喜んだ。

そしてさっそくその場で昨日の件を詳しく証言していく。

さらに過去のことも、包み隠さず全て証言していった。

ウォールさんとヘイスさんの表情を見れば、それが正しいことが一目瞭然のようだった。

ウォールさんは徐々にホッとしたような、それでいて泣きそうな……そんな顔をしていった。

逆にヘイスさんは徐々に顔色が悪くなっていった。


全ての話を聞き終わった後、ウォールさんは宣言した。

「君たちの証言は聞き届けた。私が知っていることと相違ない。この場にて、私の名のもとに、その証言、訴えは受理された。よって……ヘイス一家の3人はこのスノービークからの追放の処分とする。数日間の猶予を与えるので、その間に準備をするように。私からは以上だ。」

「まっ、待ってください兄さん!それはあんまりです!それに兄さんには跡継ぎが……」

「跡継ぎならリッキーがいる。逆に問いたい。何故リッキーが次期領主になれないと勘違いした?私は最初からお前たちを領主の地位に就ける予定などない。」

それを聞いたヘイスさんは、今度は怒り出した。

「……今まで下手に出ていればつけあがりやがって!お前なんかに領主が務まるはずがない!父上はお前なんかより私を領主にしたかったはずだ!自惚れるな!」

ヘイスさんのひどい言い分に、ウォールさんは落胆の色を隠せなかった。

「……お前を甘やかしてしまったのが悪かったのだろうか。お前は勘違いをしている。お前の能力が低すぎたので、父上はなんとかやる気を出してもらいたくて持ち上げていたのだ。お前も薄々気づいてはいたのではないか?」

「……。」

「あと、私達の前で弁護士が父上の遺言書を開封して読んだのは覚えているか?次期領主には私を指名する、と。そう書いてあったことを覚えているだろうか?本来であれば私が領主になった時点でお前をこの街から出さなければならなかったのだ。だが、お前の性格や能力ではやっていけないと、そう思って今まで一緒に過ごしてきた。だが、それももう……限界だ。」

「……。」

「あとで道中の旅費等の資金を持って行く。それを使って、彼の国へ向かうと良いだろう。」

「……。」

どうやらもうヘイスさん達には反論する元気がないようだった。
項垂れたまま、顔を上げることができない様子だった。


俺はこのまま何もなく、無事に事が進むことを願った。
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