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第4章 ネシア国〜
大会3日目 2
しおりを挟む出口に着くと、開いている扉から舞台上を見る。
舞台上には片腕をだらりと垂らして肩で息をしているリッキーと、冷たい目をしたクーガーがいた。
一目見て、怪我で腕が動かない状態なんだろうというのは分かったが、なんでとても苦しそうな呼吸をしているんだ?
どうも体力の限界って感じじゃなさそうだ……と思った時、リッキーが激しい咳をして口から血を吐き出した。
えっ、この短時間で何があった!?
俺がそう思った時、立っているのもやっとといった感じで満身創痍のリッキーにクーガーが追撃をしに肉薄する。
そしてリッキーの鳩尾付近に強烈なパンチを打ち込んだが……あれは普通のパンチじゃないな?
……なんか、違う。
その違和感を感じつつ試合の行方を見ていたが、そのクーガーのパンチが決め手だったのか、リッキーは再度血を吐くと前から倒れた。
クーガーは全く支えようとも考えていないらしく、冷たい目で見たまま微動だにしない。
俺は危険だと思い、つい本気のスピードでリッキーの元に向かい、なんとか頭を打ち付ける前に彼を支えてゆっくりと床に下ろした。
すると、俺のいきなりの登場に驚いていた審判が急いでやってきて、リッキーの状態を確認。
リッキーは目を瞑って、苦しそうな顔で浅い呼吸を繰り返している。
「この試合、リッキー選手の戦闘不能により、クーガー選手の勝利!」
審判はそう大声で宣言する。
会場は歓声が上がらずにザワザワと動揺の雰囲気が広がっていたが、俺はすぐさま審判に確認した。
「もう回復していいですか!?」
「ああ、もう試合は終わったから、回復できるならして良いよ。とても苦しそうだから、早くしてやると良い。」
そう審判に言ってもらったので回復しようと屈んだのだが、その前にクーガーが近寄ってきていて、あろうことか倒れているリッキーの頭を踏みつけようとした。
俺は素早く踏みつける直前でクーガーの足首を掴み、クーガーを睨みつける。
審判も訝しげな顔でクーガーを見やったが、クーガーは全然気にもしてない様子だ。
俺はそれを見て、思わずクーガーに向かって怒鳴ってしまった。
「何を考えているんだ!もう試合は終了しているんだぞ!?もし試合中だとしても、こんな状態の彼に追撃する必要性がない!何考えているんだ!?」
「……。負け犬はうるせぇなぁ。」
「はぁ!?」
クーガーはそう言うと踏みつけようとする力を強めたが、俺の方が力があるのか全く微動だにしなかった。
たがそれを感じた俺は、とうとう何かがプツンと切れたような音を感じた気がした。
次の瞬間、俺の周りに銀色の魔力が吹き荒れる。
そして俺はあまりの怒りに、思わずクーガーの足首の骨を握りつぶしてしまった。
するとクーガーは、痛みよりも驚きの方が勝ったらしく、驚愕の顔で俺を見る。
「……貴様、覚えていろよ?お前だけは許さない。お前は正々堂々と戦っている他の選手とは違う。……絶対、許さない。」
俺はそう呟くと、まずはリッキーに片手をかざし、神聖魔法で全身を全力で回復させていく。
見る間に治っていくリッキーを見たクーガーは、目を見開いて俺を見た。
リッキーが回復して眠っているのを確認すると、ずっと握ったままにしていたクーガーの握りつぶした足首を元に戻した。
このAグループの優勝決定戦で俺たちは当たるから、その為には元に戻さないといけないからな。
「……お前たち、やっぱり神聖法国の回し者なんじゃないのか?」
「まだそんな事言ってるのか。違うって言ってるだろう。何でそんなに人の話を聞かないんだ?」
「……ふんっ!人族なんて獣人を騙して捕らえる奴ばかりだからな!信じられるか!」
クーガーはそんな事を言って俺から距離を取り、そのまま退場してしまった。
一体、こいつは何でこんなに人族に対して偏見があるんだ?……パニアさんに聞いたら分かるかな?
俺はとりあえずリッキーを背負おうとしたら、一陣の風が吹いたと思うと傍にグリーさんがいた。
「リッキーさんは私が背負いまっせ!シエルさんじゃ潰れますがな。」
そんな事を言って背負ってくれたけど、俺が背負っても潰れないから!
俺が拗ねていると、いつの間にか傍に知らない女性が立っていた。
その人はこの世のものとは思えないような美貌で、まるで聖女のような神聖的な服装をしている。
「すみません、遅れたようですわね。ごめんなさいね。」
「……。」
誰だ、この人?知り合いじゃないんだけど?
俺がそんな事を思っていると、彼女は「そうね、知り合いではないわね。」と言ってきた。
もしかしてリッキーみたいに人の心の声が聞けるのかな?
「そうよ、聞けるわよ?それはそうと、あなたの事は上彼から聞いているから、私の方は知っているわね。」
……誰だ、その「彼」って?
俺がそう思った時、すく近くにいた審判が「巫女様だ。」と、呆然と呟いた。
なるほど、それで分かった。
この人、創造神の知り合いなわけか。
確かユーリが「巫女に回復を頼んでおくから大丈夫」って言ってたけど、今のところ全く活躍してないよね?
「酷いわね!こちらにも色々とやることあるのよ。」
ホントは今日なんて、試合後すぐに回復して欲しかったくらいだ。
まぁ俺が治したから良いけどね。
「ところで『巫女』さんはこれからは毎試合近くにいてくれるんですかね?」
今後俺とクーガーの試合は間違いなく激しいものとなるだろう。俺がボコボコにする予定だからな。
他にも大怪我をする試合もあるだろうし、常にいてもらいたいところなんだが……。
「それは無理だわ。今回みたいに本当に危険な時しかこないわよ。」
「それって、どうやって知るんですか?」
「ん?ん~~……勘?」
やばいな、この人に任せていたらリッキー、死んでたかもな。
とりあえず俺はその『巫女』と別れてみんなと合流することにした。
「すみませんが、俺たちはとりあえず観客席へ向かいます。」
「そうなの?じゃあ、またいつかね~。」
『巫女』はそう言うと、手をひらひらと振りながらその場から消えた。
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