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第4章 ネシア国〜
大会3日目 3
しおりを挟むそれから俺たちは出口の先の通路を観客席まで歩いていく。
リッキーはまだ目を覚まさないが、そのまま座席に座らせながら寝られるだろうか?
そう思いなから向かっていると、通路の向こうから闘技場のスタッフが走ってきた。
「すみません、リッキー選手の関係者ですか?」
「はい、リッキーは彼が背負ってます。」
俺はグリーさんの背中にリッキーがいることを告げる。
スタッフによると、リッキーを寝かせるベッドを用意したから一緒に来てくれとの事だった。
その部屋に着くとベッドにリッキーを寝かせ、グリーさんはみんなを呼びに行った。
リッキーの身体は完璧に元に戻しておいたので、あとは体力の回復だけだから、俺の試合までには目が覚めるかな?
暫くしてグリーさんは皆と一緒にこの部屋に戻ってきた。
総勢11人(寝ているリッキーを抜かせば10人)なので、部屋がかなり手狭に感じる。
「さっきの試合、あれはどういうことなんだろうな。」
開口一番、スコットさんはそんな事を言う。
……あれ?
皆は俺と違って試合を見ていたんじゃないのか?
俺はその疑問を皆に聞いてみると、人族組は見ていたがよくわからなかったらしく、ドラゴン組は何があったのか理解しているようだ。
「いったい何があったんですか?」
「傍目にはただのパンチの応酬に見えたんだろうが、リッキーのパンチは普通のもので、クーガーとかいう相手のパンチは『対戦相手の体に当たった瞬間に自分の魔力を相手の体の内側に向かって打ち出す』ものだったんだ。だからリッキーは拳をぶつけ合ったら腕が使えなくなり、腹を殴られたら内臓が破損したんだ。あの状態になるのに3発しか食らってないんだよ。」
ドラゴン組を代表してアースさんが答えてくれた。
なるほど……リオンさんの剣技の応用なのかな?
アレのこぶし版な気がする
とりあえず俺たちはリッキーが目覚めるまでここにいることにし、席を引き払ってきたらしい。
そうだよね、あんな事があっては試合なんておちおち見てられないよね。
それから俺たちはお昼の買い出しや、トイレなどに交代で行くようにし、リッキーのそばには必ず誰かがいる状態を作った。
そして俺は自分の出場する試合の時間が近くなったので、1人、控室へと向かった。
途中すれ違うスタッフには、何故か俺を見てビクッと一瞬されるんだけど……何でだろう?
やっぱりさっきのクーガーとのやり取りが原因だろうか?
俺が控室に行くと室内には3人の獣人がいた。
この中の誰かが俺の対戦相手なんだろう。
とりあえず俺は呼ばれるまで目を瞑って、精神統一をすることにした。
だってリッキーのことがあったから今は相当怒りで心が染まっているから、それを鎮めないと対戦相手が大変なことになってしまう。
そうしているとどうやら案内係が来たらしく、次の試合に出る人たちが部屋を出ていった。
これで残った人が俺の対戦相手、というわけだ。
俺はゆっくりと目を開けて部屋の中を見渡す。
確かに1人の獣人が壁際に並んでいる椅子に座っていた。
彼はどうやら豹の獣人らしく、顔が豹そのものだ。
体つきもしなやかな筋肉がついている感じで、スピード重視なタイプかもしれない。
彼は俺と目が合うと、とてもすまなそうな顔をした。
……彼とは初対面なのに、何でだ?
それからちょっとして、俺たちも呼ばれた。
部屋の外に出ると、案内係の人に「リッキーさんは大丈夫ですか?」と聞かれた。
「はい、身体は完璧に治っているので、あとは体力が戻って目覚めるのを待っているところですかね。」
「それなら良かったです。今回、何でクーガー選手があんな凶行に及んだのか分かりませんが、あれはやり過ぎです。普段はあそこまでやる選手じゃないんですが……。」
「まぁ、もう過ぎたことですし。」
それを聞いていた対戦相手の獣人は俺の目を見て、真摯な表情で「この頃のあいつは少しおかしかった。どうかあいつの目を覚ましてやってくれないか?」と言われた。……もう自分の負け決定なのか?
それから3人で舞台入口まで歩いて行った。
到着する頃、アナウンスが聞こえる。
「それではそろそろ本日の最終試合が始まりますので、お席についていない方はお早めにお座りくださ~い!」
通路の天井では人が急いで移動しているのか、かなり足音が響いている。
入り口の扉の前に着くと案内係の人は中を覗き込み、客席の埋まり具合を確認した。
「かなり席が埋まっているので、もうすぐアナウンスがあるはずです!そしたら2人一緒に中に入ってください。頑張ってくださいね、お2人とも!」
係の人はそう言って俺たちを励ましてくれた。
その直後、アナウンスが流れる。
「そ~れ~で~は!本日、大会3日目の最終試合を始めたいと思いま~す!この試合には本日第1試合でリッキー選手を回復したシエル選手が出場いたします!彼には驚かされましたねぇ~!まさかあんなにすごい回復魔法の使い手だったとは!それにわが国の『巫女』様の知り合いらしいとの情報もあります!一体どんなつながりがあるのか気にはなりますが……あっ、そろそろ準備ができたようですので、選手、入~場~!!」
アナウンスの途中で案内係の人が扉から顔を出して何かしたらしく、すぐに入場することになった。
「じゃあ、2人とも頑張ってね!」
「「はい!」」
そう答えると2人で扉を開き、舞台の中央に向かって歩き出す。
前回とは違い、今回は2人での入場なので少し気が楽だ。
舞台中央に着くと適度に距離を取って立つと、またアナウンスが。
「位置についたようですね!では武器を構えてください!」
俺と相手は片手剣を構える。
今日は刀じゃないから、魔力コーティングはしないよ!
するとアナウンスで「それでは……始め!」と開始の合図があった。
その言葉と同時に俺は動き出したんだが……相手は一歩も動かず、剣を構えているだけだ。
俺の間合いに相手が入ると、1度軽く切りつけてみる。
それに対しては反応があるので、戦う意思がないわけじゃないんだな?
でも結局俺とは力負けをしたのか、数度武器を打ち合った後に力を込めて武器を振り抜くと相手の武器を弾き飛ばしてしまった。
「はいっ、そこまで!勝者、シエル選手!」
そう審判が大きな声を出す。
俺は武器を下ろして鞄にしまい、相手は武器を拾いに歩いて行った。
……もしかするとわざと負けた?
思わずそう思わずにはいられないほどの呆気ないほどの勝敗だった。
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