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婚約破棄を求められましたわ
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「・・・婚約破棄、ですの?」
「ええそうよ!私と彼は愛し合っているの!!義務的な関係のあんたとは違ってね!そんな愛のない関係で彼を縛ってないで早く解放してしてあげて!」
ものすごい勢いで捲し立てられて、リリアーヌは驚きに茫然としてしまう。
何しろ今まで公爵令嬢であるリリアーヌの周りには、きちんと教育が施された人しかいなかった、こんなはしたなく大きな口を開けて喚き散らすような人間は使用人ですらいなかったのだ。
それなのになぜこのような無作法な人間がリリアーヌの目の前にいるかと言えば、まあ、当たり前のことだがリリアーヌが招き入れたからだ。
普段から忙しくしているリリアーヌだが、今日は珍しく外出の予定も来客の予定もなかった。だから、近々やってくることになっている東方の国からの使節団を迎える準備の一環として、家にある書物で作法や風習、簡単な挨拶などをおさらいしておこうと思っていた。
事実、午前中はいつもより遅い時間に起きつつも、自分の記憶と書物に書かれている作法に相違がないか確認していた。
そして、昼食は料理人に特別に作らせた東方の料理に舌鼓を打ちつつ、作法の確認や後日行われる王妃や王女たちとの使節団歓迎のためのもてなし方法の話し合いのためにいい提案ができないか頭をひねりながらすごしていた。
そして、気づけばティータイムになっていたため気分転換をかねて庭にあるガゼボでお茶にしようかと思ったところで、執事が困った様子でリリアーヌの元を訪ねてきた。
「お客様?」
「ええ、左様でございます。」
執事の答えに首を傾げる。
「何か急用かしら?」
今日は来客はないはずであるし、貴族の家に前触れもなく訪れるものがあるというのであれば文字通り急を要する用事が発生したとしか思い当たらなかった。
でも、それであれば執事が気まずげに、言葉を選びあぐねている様子が腑に落ちなかった。
「そうではないかと。」
急用ではないと執事は否定するが、どこか歯切れの悪さを感じる。
そして、いくばくかの逡巡ののちようやく重い口をひらいたのだった。
「・・・それが、いらっしゃっているのはご令嬢なのですが、自分はウィレネル男爵令嬢だ、リリアーヌ様に会わせろ、としつこく食い下がって来られるのです。」
その言葉を聞いてやっとリリアーヌは合点がいった。
前触れも約束もなく訪れる無作法ものなど、通常であればリリアーヌの耳に入れることなく処理するはずなのに、ここまで話を持ってきたことも。その上やけに歯切れが悪かったのも。
相手がウィレネル男爵令嬢だったからなのだ。
ウィレネル男爵令嬢はリリアーヌの婚約者エリックと最近懇意にしていると噂されているご令嬢だった。
いや、噂どころではなく、むしろ隠す気があるのかと問いたくなるくらいに堂々と社交の場に顔を出している。
もともと政略による婚約で、愛などないとはいえ最低限の礼節くらいは守ってほしいと最近では思うようになっていたのだ。
「そうですのね、では、応接室にお通しして。わたくしがお相手をするわ。」
リリアーヌがそういうと、執事も侍女もギョッとしたような顔をした。
「えっと、よろしいので?」
「ええ、一度ゆっくりお話してみたかったんですの。」
おずおずと問いかけてくる執事に、にっこりと微笑みながら返した。
それを見て執事は、今までのためらいがなかったかのようにしっかりとしたいつもの振る舞いに戻って退室して行った。
「ではお客様をお迎えする準備を始めましょうか。」
「ええそうよ!私と彼は愛し合っているの!!義務的な関係のあんたとは違ってね!そんな愛のない関係で彼を縛ってないで早く解放してしてあげて!」
ものすごい勢いで捲し立てられて、リリアーヌは驚きに茫然としてしまう。
何しろ今まで公爵令嬢であるリリアーヌの周りには、きちんと教育が施された人しかいなかった、こんなはしたなく大きな口を開けて喚き散らすような人間は使用人ですらいなかったのだ。
それなのになぜこのような無作法な人間がリリアーヌの目の前にいるかと言えば、まあ、当たり前のことだがリリアーヌが招き入れたからだ。
普段から忙しくしているリリアーヌだが、今日は珍しく外出の予定も来客の予定もなかった。だから、近々やってくることになっている東方の国からの使節団を迎える準備の一環として、家にある書物で作法や風習、簡単な挨拶などをおさらいしておこうと思っていた。
事実、午前中はいつもより遅い時間に起きつつも、自分の記憶と書物に書かれている作法に相違がないか確認していた。
そして、昼食は料理人に特別に作らせた東方の料理に舌鼓を打ちつつ、作法の確認や後日行われる王妃や王女たちとの使節団歓迎のためのもてなし方法の話し合いのためにいい提案ができないか頭をひねりながらすごしていた。
そして、気づけばティータイムになっていたため気分転換をかねて庭にあるガゼボでお茶にしようかと思ったところで、執事が困った様子でリリアーヌの元を訪ねてきた。
「お客様?」
「ええ、左様でございます。」
執事の答えに首を傾げる。
「何か急用かしら?」
今日は来客はないはずであるし、貴族の家に前触れもなく訪れるものがあるというのであれば文字通り急を要する用事が発生したとしか思い当たらなかった。
でも、それであれば執事が気まずげに、言葉を選びあぐねている様子が腑に落ちなかった。
「そうではないかと。」
急用ではないと執事は否定するが、どこか歯切れの悪さを感じる。
そして、いくばくかの逡巡ののちようやく重い口をひらいたのだった。
「・・・それが、いらっしゃっているのはご令嬢なのですが、自分はウィレネル男爵令嬢だ、リリアーヌ様に会わせろ、としつこく食い下がって来られるのです。」
その言葉を聞いてやっとリリアーヌは合点がいった。
前触れも約束もなく訪れる無作法ものなど、通常であればリリアーヌの耳に入れることなく処理するはずなのに、ここまで話を持ってきたことも。その上やけに歯切れが悪かったのも。
相手がウィレネル男爵令嬢だったからなのだ。
ウィレネル男爵令嬢はリリアーヌの婚約者エリックと最近懇意にしていると噂されているご令嬢だった。
いや、噂どころではなく、むしろ隠す気があるのかと問いたくなるくらいに堂々と社交の場に顔を出している。
もともと政略による婚約で、愛などないとはいえ最低限の礼節くらいは守ってほしいと最近では思うようになっていたのだ。
「そうですのね、では、応接室にお通しして。わたくしがお相手をするわ。」
リリアーヌがそういうと、執事も侍女もギョッとしたような顔をした。
「えっと、よろしいので?」
「ええ、一度ゆっくりお話してみたかったんですの。」
おずおずと問いかけてくる執事に、にっこりと微笑みながら返した。
それを見て執事は、今までのためらいがなかったかのようにしっかりとしたいつもの振る舞いに戻って退室して行った。
「ではお客様をお迎えする準備を始めましょうか。」
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