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~ 覚醒 ~
7話
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「あっ、あの……!」
「はい、なんでしょう?」
「くりすちーぬさまが、きてくれて。すごく、うれしいですっ!」
「……え?」
身を乗り出してそう告げると、クリスティーヌが虚を突かれたように目を見開いた。
「わたし、おかあしゃま、いないです。だから、あたらしい、おかあしゃま……すごく、すーっごく、うれしい!」
これは紛れもないセレスティアの本心だった。
確かに平穏な生活を送るため継母と良好な関係を築いておきたい、そんな打算的な考えがないと言えば嘘になる。
けれど、決してそれだけではない。
せっかく縁あって家族になったのだから、叶うのなら本当の親子みたいになりたい──そう強く願うセレスティアの気持ちは本物だった。
「クリスティーヌ様がいらしてから、お嬢様は毎日のように『ご挨拶に行きたい』とおっしゃっておりました。こうしてお会いできる日を、本当に心待ちにしていたのですよ」
そばに控えるポーラが、クリスティーヌにそっと告げた。
(ありがとう、ポーラ……!)
仲を取り持とうとしてくれる乳母に、セレスティアはパチパチとまばたきをし、精一杯の感謝を伝えようとした。
その仕草から心の内を察してくれたのだろう。ポーラは目元をなごませ、穏やかな微笑みを返してくれる。
正面に向き直ったセレスティアは、にこっと満面の笑顔を浮かべた。
「わたし、くりすちーぬさまと、なかよくなりたい、ですっ!」
心からの想いを口にした、その瞬間。
クリスティーヌの翡翠色の瞳が、波立つ水面のように大きく揺れた。
次いで見開かれた両目から、はらはらと涙の雫がこぼれ落ちる。
これにはセレスティアも息を呑み、それまで静かに事の成り行きを見守っていた妖精たちも『なんだ?』『どうしたのかしら?』と一気にざわめき出す。
(わたし、なにかいけないこと言っちゃった……⁉ どっ、どうしよう……!)
狼狽えていると、クリスティーヌがハッとした様子で目尻を拭った。
「驚かせてしまって、ごめんなさい。すごく嬉しくて……思わず涙が出てしまいました」
クリスティーヌは瞳を潤ませながらも、口元には柔らかな微笑みを湛えて、セレスティアを優しく見つめた。
「ありがとうございます。私も、セレスティアさんと仲良くなりたいです」
「……ほ、ほんとう?」
「ええ、本当です」
「わぁ……! やったーっ!」
セレスティアは湧き上がる喜びのまま両手を挙げ、足をパタパタとさせた。
十二年間分の前世の知識を持つとはいえ、身体はまだ三歳。
気持ちが昂ぶると理性が感情に負けてしまうのか、嬉しさが抑えきれなかった。
「お嬢様、おしとやかに」
「あう。……ごめんなしゃい」
ポーラにすかさず窘められ、セレスティアは手を下ろして淑女らしい澄まし顔をつくる。
そのおませな様子にクリスティーヌはくすくすと朗らかな笑みをこぼした。
「継母として至らないところもあるかもしれませんが、これからどうぞよろしくお願いしますね、セレスティアさん」
丁寧にお辞儀をしたクリスティーヌに、セレスティアも慌ててペコリと頭を下げる。
「あっ、こちらこしょ! ふちゅ、ふつつかな、むすめですが、よろしく、おねがいしますっ!」
とっさに頭に浮かんだフレーズを口にすると、クリスティーヌとポーラが揃って顔をほころばせた。
「まぁ、難しい言葉をご存知なのですね」
「どこで覚えてくるのか分からないのですが、最近はこうして時折、大人びたことを仰るようになりまして」
「ふふっ、おませさんなのですね。可愛らしい」
なごやかに言葉を交わす乳母と継母を、セレスティアはニコニコと眺めていた。すると膝の上から『よかったわね』とマリアベルがそっと声をかけてくる。
シルフたちはもう見守らなくても大丈夫だと思ったのだろう、ヒラヒラと手を振って窓の外へと飛び立っていった。そしてブラウニーたちもいつものように、日の当たる場所でうたた寝を始める。
お茶会はその後も穏やかな雰囲気のまま、幸せな余韻を残して幕を閉じたのであった。
「はい、なんでしょう?」
「くりすちーぬさまが、きてくれて。すごく、うれしいですっ!」
「……え?」
身を乗り出してそう告げると、クリスティーヌが虚を突かれたように目を見開いた。
「わたし、おかあしゃま、いないです。だから、あたらしい、おかあしゃま……すごく、すーっごく、うれしい!」
これは紛れもないセレスティアの本心だった。
確かに平穏な生活を送るため継母と良好な関係を築いておきたい、そんな打算的な考えがないと言えば嘘になる。
けれど、決してそれだけではない。
せっかく縁あって家族になったのだから、叶うのなら本当の親子みたいになりたい──そう強く願うセレスティアの気持ちは本物だった。
「クリスティーヌ様がいらしてから、お嬢様は毎日のように『ご挨拶に行きたい』とおっしゃっておりました。こうしてお会いできる日を、本当に心待ちにしていたのですよ」
そばに控えるポーラが、クリスティーヌにそっと告げた。
(ありがとう、ポーラ……!)
仲を取り持とうとしてくれる乳母に、セレスティアはパチパチとまばたきをし、精一杯の感謝を伝えようとした。
その仕草から心の内を察してくれたのだろう。ポーラは目元をなごませ、穏やかな微笑みを返してくれる。
正面に向き直ったセレスティアは、にこっと満面の笑顔を浮かべた。
「わたし、くりすちーぬさまと、なかよくなりたい、ですっ!」
心からの想いを口にした、その瞬間。
クリスティーヌの翡翠色の瞳が、波立つ水面のように大きく揺れた。
次いで見開かれた両目から、はらはらと涙の雫がこぼれ落ちる。
これにはセレスティアも息を呑み、それまで静かに事の成り行きを見守っていた妖精たちも『なんだ?』『どうしたのかしら?』と一気にざわめき出す。
(わたし、なにかいけないこと言っちゃった……⁉ どっ、どうしよう……!)
狼狽えていると、クリスティーヌがハッとした様子で目尻を拭った。
「驚かせてしまって、ごめんなさい。すごく嬉しくて……思わず涙が出てしまいました」
クリスティーヌは瞳を潤ませながらも、口元には柔らかな微笑みを湛えて、セレスティアを優しく見つめた。
「ありがとうございます。私も、セレスティアさんと仲良くなりたいです」
「……ほ、ほんとう?」
「ええ、本当です」
「わぁ……! やったーっ!」
セレスティアは湧き上がる喜びのまま両手を挙げ、足をパタパタとさせた。
十二年間分の前世の知識を持つとはいえ、身体はまだ三歳。
気持ちが昂ぶると理性が感情に負けてしまうのか、嬉しさが抑えきれなかった。
「お嬢様、おしとやかに」
「あう。……ごめんなしゃい」
ポーラにすかさず窘められ、セレスティアは手を下ろして淑女らしい澄まし顔をつくる。
そのおませな様子にクリスティーヌはくすくすと朗らかな笑みをこぼした。
「継母として至らないところもあるかもしれませんが、これからどうぞよろしくお願いしますね、セレスティアさん」
丁寧にお辞儀をしたクリスティーヌに、セレスティアも慌ててペコリと頭を下げる。
「あっ、こちらこしょ! ふちゅ、ふつつかな、むすめですが、よろしく、おねがいしますっ!」
とっさに頭に浮かんだフレーズを口にすると、クリスティーヌとポーラが揃って顔をほころばせた。
「まぁ、難しい言葉をご存知なのですね」
「どこで覚えてくるのか分からないのですが、最近はこうして時折、大人びたことを仰るようになりまして」
「ふふっ、おませさんなのですね。可愛らしい」
なごやかに言葉を交わす乳母と継母を、セレスティアはニコニコと眺めていた。すると膝の上から『よかったわね』とマリアベルがそっと声をかけてくる。
シルフたちはもう見守らなくても大丈夫だと思ったのだろう、ヒラヒラと手を振って窓の外へと飛び立っていった。そしてブラウニーたちもいつものように、日の当たる場所でうたた寝を始める。
お茶会はその後も穏やかな雰囲気のまま、幸せな余韻を残して幕を閉じたのであった。
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