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【転生・元服編】
010 いつぞやの……
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竹千代達はというと――。
湯煙立ち昇る湯殿にて、湯浴みをしていたのだった。
「あー、いーお湯~! ほら、正勝もそんな端っこに居ないで、こっちおいでよ!」
「いっ、いえっ、私はここでっ!」
「えー、せっかく一緒に入ってるんだから、お話しよーよー」
時間短縮のために、結局正勝も一緒に入ることになってしまったのだが、竹千代は中身が三十七歳(中身は成長していない)おばさんなので、若い男の裸が見たくてしょうがなくて、正勝を側に寄せようというのである。
だが、正勝は正真正銘の若者。
まして、竹千代は好きで好きでたまらない女。その女の裸をまともに見たら我慢が出来なくなるかもしれないのだ。
いつもなら、目隠しをしながら竹千代を洗うのだが、今日に至っては、客人が入るからと、時間短縮のために一緒に入ることに(弓道と剣術稽古で汗掻いてたから、なら一緒に入っちゃえばいいじゃんとなったらしい)。
「大丈夫、私手ぬぐい巻いてるし、正勝はいつも私洗ってるし!」
ずずいっと、竹千代は正勝に近づいていき、正勝の肩に手を置いて、振り返らせた。
「いやっ、あのっ、そういうことじゃなくてですねっ!!」
「いいからいいからこっち向いてよぅ! (こんな間近で若人の裸見れるなんて機会滅多にないんだから見せろ~!)」
前世の姿ならば、完全に犯罪です。
……ばりに、にやにやしながら正勝の裸をまじまじと見つめる。
(うっひょ~! やっぱいい身体してる~!!)
竹千代の真っ直ぐな視線が正勝に刺さる。
「あっ、あのっ、竹千代様っ……ちょっ、あ、あんまり触らないで下さい……あ……」
ぺたぺたと正勝の引き締まった大胸筋に楽しげに触れる竹千代であったが、そのうちに自分の纏っている手ぬぐいが取れていることに気がつかず、それに気付いた正勝は竹千代の胸の果実に釘付けになってしまう。
「すごーい! 筋肉あるね~、正勝。私なんて最近おっぱいが重くなってきたけど全然筋肉がつかなくなっちゃっ……あっ!?」
と、竹千代は自分の胸に視線を落とすと、やっと気付いて、湯に浮かぶ手ぬぐいを手繰り寄せた。
「ああ、ごめんね、粗末なものを見せてしまって……」
竹千代は、転生前に持つことの出来なかった大きく育った果実は嬉しいものの、前世拗らせ病のために、自分の姿は醜いと思っており、それを見せて申し訳ないと詫びるのである。
「いっ、いえっ……結構なものでし……あっ、いえっ、すみませんっ!」
正勝は偶然とはいえ、見てしまった豊満な胸にさっきから疼く下半身の痛みに耐え続けていた。
「……そろそろ上がろっか。客人が来ちゃうと困るし」
ざばぁっと、纏わりつく湯が剥がれていく。
竹千代は正勝の前で立ち上がり、湯船から上がる。ちなみに前は隠しているが、尻が隠れていない。
頭隠して尻隠さずってね。
「っ! あっ、私はもう少ししてからでっ! す、すぐ参りますっ!」
白桃のような滑らかなお尻をまともに見てしまった正勝の鼻からつぅーっと一筋、鼻血が垂れたのだった。
もしかしたら秘境も見えてしまったかもしれない。
……男の子は大変なのです。
「? あ、そう? うん、わかったー」
湯煙で正勝の鼻血に気付かない竹千代は手ぬぐい片手に脱衣所へと向かう。
一方、孝は湯殿の前に辿り着いていた。
「では、私はこの先の部屋に控えておりますのでごゆるりと」
「ああ、ありがとな」
脱衣所の入口で孝と男性が言葉を交わし、孝だけが脱衣所に入って、着物を脱ぐ。
全て脱ぎ去って、下着(褌)も取り払って、手ぬぐい片手に、浴室へと向かう。
「っ……さっきの! (やばっ、やっぱ被った!)」
「なっ……!? (何で、女中がここに……つうか、何だこの美人!?)」
とまぁ、鉢合わせするのは仕方ないよね。
竹千代は濡れた手ぬぐいで前を隠してはいるものの、それは薄く、スケスケである。
一方、孝は全裸に肩に手ぬぐい。丸見えである。
「……っ、あのっ、ごめんなさいっ、私、今上がったとこなんで、すぐ、退きますからっ」
竹千代はそのまんまの格好で頭を深く下げると、近くにあった浴衣に慌てて袖を通す。
「いやっ、俺、誰かが入ってるなんて知らなくて、悪ぃ!」
孝は慌てて持っていた手ぬぐいを腰に巻いて、竹千代の着替えについ、見入ってしまった。
「…………(うわー、間近で見たら超イケメン君じゃん!!! あっちも大きそうだし、やばい、これは惚れちゃいそー! なんちゃって)」
竹千代は孝の容貌にドキドキと胸躍らせながら、浴衣が水分を吸うのを待つ。
大きそうというのは幼い頃に春日局のナニを見て知っているので何となくの予想である。
平常時と情事の際で大きさは違うものだが、竹千代はその辺りのことは詳しく知らない。
千代時代の数々の恋人達(大人の玩具)とどうかと比べたいが、あれは平常時ではないので。
「……お前、名前は?」
孝は竹千代の白い肌と、その美しい顔に見入られたように見つめたまま告げた。
「……え? あ、私は竹……」
竹千代が名乗ろうとした瞬刻、
ガラガラガッシャーンンッ!!
『うわっ!!』
と、竹千代の背後の戸の方から木の桶がいくつも崩れる大きな音と共に、僅かに正勝の声が浴室から聞こえてきた。
「正勝っ!?」
竹千代は慌てて浴室へと戻る。
「え?」
取り残された孝も、続いて浴室へと向かった。
すると洗い場に全身真っ赤に茹だった正勝が熱い息を苦しそうに吐きながら倒れている。
「正勝、大丈夫かっ!? 真っ赤じゃないかっ!! あ、あなた、そこから水を汲んで、掛けてあげてくれない!?」
竹千代が手桶を孝に渡し、冷たい水を溜めた大きな瓶を指差す。
「あ、ああ、わかった。お前はどうするんだ?」
孝は早速冷水の入った瓶から水を掬うと、温度を確かめてから正勝に掛けた。
「こうするっ!」
「えっ!?」
がばっと、やにわに着ていた浴衣を脱いで丸め、それを冷水の入った瓶に入れ濡らすと、広げて正勝に掛ける。
それが終わると、脱衣所に一度戻り、先程使っていた手ぬぐいを持って来て、同じように瓶に入れて冷やし、正勝のおでこに宛てたのだった。
「ふーっ……これで、なんとか冷えるかな?」
「…………ぷっ、はははっ、お前、変な奴だなぁ」
腰に手を宛て、額に浮いた汗を拭うものの、その姿は全裸。
だが、何だか男らしいその様に、孝は吹き出してしまう。
「なっ、何がっ!? ……くっしゅんっ!」
突然笑われてむっと口を尖らせる竹千代だったが、くしゃみで相殺されてしまう。
「ちょっと待ってろ」
孝はそう断ると、脱衣所に戻り、浴衣を一枚手に取って、浴室に戻り竹千代の肩に掛けた。
「風邪引くなよ」
「あ。そうか、私裸だった。ありがと……さーせん、しょーもないもの見せてしまって」
前世拗らせ病を発病させつつ、イケメンに優しくされて嬉しいのか竹千代は愛想笑いを浮かべるのだった。
「ああ、くしゃみなんかしたら、せっかくの美人が醜女に見えるぞ」
にこやかにあくまでソフトに、冗談で孝は言ったつもりだったのだが、
「ぶおんな……っ!? ま、まさか、あなた……つか、あんたは……いつぞやの寺院の……!!?」
竹千代は一歩ずつ後退り、孝を見つめたままわなわなと震えだした。
竹千代の脳裏には幼少の頃に出会った暴言美少年の姿が浮かぶ。
「? 何だ? 俺を知って……まさか……!?」
孝は竹千代をまじまじと見つめ、思い出す。
そうだ、こんな顔してた。
こんな可愛い顔してたよな、あの女の子。
やっぱり、美人になってた。
しかも、何とも言えない妖艶な色香を身に纏っているじゃないか。
大奥に埋もれているなんて、勿体無い。
しかし、女中かそれとも、年寄りか何かなのか?
……輿入れしてからも会えるかな?
などと孝は考える。
なんということでしょう。
二人は幼少の頃出会っていたのです。
しかも、孝は良い思い出として、竹千代を心に残しているのだが、竹千代の中に残る孝はトラウマの原因でしかなく。
こいつの所為で生まれ変わっても喪女を引き摺ったままなんじゃオラァとまで思っている程。
「……っ……私は行くので、正勝が起きたら先に戻っていると伝えてくれ」
竹千代は努めて冷静に告げて、浴室から出ようとする。
「えっ、あ、おいっ、お前の名前はっ!?」
孝が立ち去ろうとする竹千代の背に声を掛けるが、
「あんたになんか名前を教えるもんかっ!!」
竹千代は怒って、脱衣所に続く木の戸をぴしゃりと閉め、その場から居なくなってしまった。
「な、何だって言うんだよ? ……俺、何かしたか?」
竹千代の行動にわけがわからない孝は、訝しげに眉を顰めて首を傾げ、彼女の去った方を見る。
すると、洗い場の床に寝そべっていた正勝が目を覚ました。
「……ん……私は……はっ! あっ、あなたは先程のっ!」
正勝が身体を起こすと、額に置かれていた手ぬぐいが落ちる。
「あ、起きた。大丈夫か? あいつ……えっと、女中か? わからんけど、ここにいた女なら、先に戻ると言っていた」
孝はそう告げながら正勝に背を向け、湯船から手桶に湯を汲むと、肩から身体にかけていった。
季節はもうすぐ夏がやってくる頃だが、裸のままだとさすがに寒い。
「御女中などではありませんよ。あの方は竹千代様です。あのっ、私、急ぐので失礼致します」
正勝が告げるものの、ざばぁーっと孝の流す湯の音で、それはよく聞き取れなかった。
「あ? なんつった? ……ってもういねぇし。まぁ、また会えるかも知んねーし、いっか」
孝が振り返ると、正勝の姿は既になく、孝は一人、竹千代との再会に珍しく心弾ませ、鼻歌まで歌いながら湯に浸かるのだった。
湯煙立ち昇る湯殿にて、湯浴みをしていたのだった。
「あー、いーお湯~! ほら、正勝もそんな端っこに居ないで、こっちおいでよ!」
「いっ、いえっ、私はここでっ!」
「えー、せっかく一緒に入ってるんだから、お話しよーよー」
時間短縮のために、結局正勝も一緒に入ることになってしまったのだが、竹千代は中身が三十七歳(中身は成長していない)おばさんなので、若い男の裸が見たくてしょうがなくて、正勝を側に寄せようというのである。
だが、正勝は正真正銘の若者。
まして、竹千代は好きで好きでたまらない女。その女の裸をまともに見たら我慢が出来なくなるかもしれないのだ。
いつもなら、目隠しをしながら竹千代を洗うのだが、今日に至っては、客人が入るからと、時間短縮のために一緒に入ることに(弓道と剣術稽古で汗掻いてたから、なら一緒に入っちゃえばいいじゃんとなったらしい)。
「大丈夫、私手ぬぐい巻いてるし、正勝はいつも私洗ってるし!」
ずずいっと、竹千代は正勝に近づいていき、正勝の肩に手を置いて、振り返らせた。
「いやっ、あのっ、そういうことじゃなくてですねっ!!」
「いいからいいからこっち向いてよぅ! (こんな間近で若人の裸見れるなんて機会滅多にないんだから見せろ~!)」
前世の姿ならば、完全に犯罪です。
……ばりに、にやにやしながら正勝の裸をまじまじと見つめる。
(うっひょ~! やっぱいい身体してる~!!)
竹千代の真っ直ぐな視線が正勝に刺さる。
「あっ、あのっ、竹千代様っ……ちょっ、あ、あんまり触らないで下さい……あ……」
ぺたぺたと正勝の引き締まった大胸筋に楽しげに触れる竹千代であったが、そのうちに自分の纏っている手ぬぐいが取れていることに気がつかず、それに気付いた正勝は竹千代の胸の果実に釘付けになってしまう。
「すごーい! 筋肉あるね~、正勝。私なんて最近おっぱいが重くなってきたけど全然筋肉がつかなくなっちゃっ……あっ!?」
と、竹千代は自分の胸に視線を落とすと、やっと気付いて、湯に浮かぶ手ぬぐいを手繰り寄せた。
「ああ、ごめんね、粗末なものを見せてしまって……」
竹千代は、転生前に持つことの出来なかった大きく育った果実は嬉しいものの、前世拗らせ病のために、自分の姿は醜いと思っており、それを見せて申し訳ないと詫びるのである。
「いっ、いえっ……結構なものでし……あっ、いえっ、すみませんっ!」
正勝は偶然とはいえ、見てしまった豊満な胸にさっきから疼く下半身の痛みに耐え続けていた。
「……そろそろ上がろっか。客人が来ちゃうと困るし」
ざばぁっと、纏わりつく湯が剥がれていく。
竹千代は正勝の前で立ち上がり、湯船から上がる。ちなみに前は隠しているが、尻が隠れていない。
頭隠して尻隠さずってね。
「っ! あっ、私はもう少ししてからでっ! す、すぐ参りますっ!」
白桃のような滑らかなお尻をまともに見てしまった正勝の鼻からつぅーっと一筋、鼻血が垂れたのだった。
もしかしたら秘境も見えてしまったかもしれない。
……男の子は大変なのです。
「? あ、そう? うん、わかったー」
湯煙で正勝の鼻血に気付かない竹千代は手ぬぐい片手に脱衣所へと向かう。
一方、孝は湯殿の前に辿り着いていた。
「では、私はこの先の部屋に控えておりますのでごゆるりと」
「ああ、ありがとな」
脱衣所の入口で孝と男性が言葉を交わし、孝だけが脱衣所に入って、着物を脱ぐ。
全て脱ぎ去って、下着(褌)も取り払って、手ぬぐい片手に、浴室へと向かう。
「っ……さっきの! (やばっ、やっぱ被った!)」
「なっ……!? (何で、女中がここに……つうか、何だこの美人!?)」
とまぁ、鉢合わせするのは仕方ないよね。
竹千代は濡れた手ぬぐいで前を隠してはいるものの、それは薄く、スケスケである。
一方、孝は全裸に肩に手ぬぐい。丸見えである。
「……っ、あのっ、ごめんなさいっ、私、今上がったとこなんで、すぐ、退きますからっ」
竹千代はそのまんまの格好で頭を深く下げると、近くにあった浴衣に慌てて袖を通す。
「いやっ、俺、誰かが入ってるなんて知らなくて、悪ぃ!」
孝は慌てて持っていた手ぬぐいを腰に巻いて、竹千代の着替えについ、見入ってしまった。
「…………(うわー、間近で見たら超イケメン君じゃん!!! あっちも大きそうだし、やばい、これは惚れちゃいそー! なんちゃって)」
竹千代は孝の容貌にドキドキと胸躍らせながら、浴衣が水分を吸うのを待つ。
大きそうというのは幼い頃に春日局のナニを見て知っているので何となくの予想である。
平常時と情事の際で大きさは違うものだが、竹千代はその辺りのことは詳しく知らない。
千代時代の数々の恋人達(大人の玩具)とどうかと比べたいが、あれは平常時ではないので。
「……お前、名前は?」
孝は竹千代の白い肌と、その美しい顔に見入られたように見つめたまま告げた。
「……え? あ、私は竹……」
竹千代が名乗ろうとした瞬刻、
ガラガラガッシャーンンッ!!
『うわっ!!』
と、竹千代の背後の戸の方から木の桶がいくつも崩れる大きな音と共に、僅かに正勝の声が浴室から聞こえてきた。
「正勝っ!?」
竹千代は慌てて浴室へと戻る。
「え?」
取り残された孝も、続いて浴室へと向かった。
すると洗い場に全身真っ赤に茹だった正勝が熱い息を苦しそうに吐きながら倒れている。
「正勝、大丈夫かっ!? 真っ赤じゃないかっ!! あ、あなた、そこから水を汲んで、掛けてあげてくれない!?」
竹千代が手桶を孝に渡し、冷たい水を溜めた大きな瓶を指差す。
「あ、ああ、わかった。お前はどうするんだ?」
孝は早速冷水の入った瓶から水を掬うと、温度を確かめてから正勝に掛けた。
「こうするっ!」
「えっ!?」
がばっと、やにわに着ていた浴衣を脱いで丸め、それを冷水の入った瓶に入れ濡らすと、広げて正勝に掛ける。
それが終わると、脱衣所に一度戻り、先程使っていた手ぬぐいを持って来て、同じように瓶に入れて冷やし、正勝のおでこに宛てたのだった。
「ふーっ……これで、なんとか冷えるかな?」
「…………ぷっ、はははっ、お前、変な奴だなぁ」
腰に手を宛て、額に浮いた汗を拭うものの、その姿は全裸。
だが、何だか男らしいその様に、孝は吹き出してしまう。
「なっ、何がっ!? ……くっしゅんっ!」
突然笑われてむっと口を尖らせる竹千代だったが、くしゃみで相殺されてしまう。
「ちょっと待ってろ」
孝はそう断ると、脱衣所に戻り、浴衣を一枚手に取って、浴室に戻り竹千代の肩に掛けた。
「風邪引くなよ」
「あ。そうか、私裸だった。ありがと……さーせん、しょーもないもの見せてしまって」
前世拗らせ病を発病させつつ、イケメンに優しくされて嬉しいのか竹千代は愛想笑いを浮かべるのだった。
「ああ、くしゃみなんかしたら、せっかくの美人が醜女に見えるぞ」
にこやかにあくまでソフトに、冗談で孝は言ったつもりだったのだが、
「ぶおんな……っ!? ま、まさか、あなた……つか、あんたは……いつぞやの寺院の……!!?」
竹千代は一歩ずつ後退り、孝を見つめたままわなわなと震えだした。
竹千代の脳裏には幼少の頃に出会った暴言美少年の姿が浮かぶ。
「? 何だ? 俺を知って……まさか……!?」
孝は竹千代をまじまじと見つめ、思い出す。
そうだ、こんな顔してた。
こんな可愛い顔してたよな、あの女の子。
やっぱり、美人になってた。
しかも、何とも言えない妖艶な色香を身に纏っているじゃないか。
大奥に埋もれているなんて、勿体無い。
しかし、女中かそれとも、年寄りか何かなのか?
……輿入れしてからも会えるかな?
などと孝は考える。
なんということでしょう。
二人は幼少の頃出会っていたのです。
しかも、孝は良い思い出として、竹千代を心に残しているのだが、竹千代の中に残る孝はトラウマの原因でしかなく。
こいつの所為で生まれ変わっても喪女を引き摺ったままなんじゃオラァとまで思っている程。
「……っ……私は行くので、正勝が起きたら先に戻っていると伝えてくれ」
竹千代は努めて冷静に告げて、浴室から出ようとする。
「えっ、あ、おいっ、お前の名前はっ!?」
孝が立ち去ろうとする竹千代の背に声を掛けるが、
「あんたになんか名前を教えるもんかっ!!」
竹千代は怒って、脱衣所に続く木の戸をぴしゃりと閉め、その場から居なくなってしまった。
「な、何だって言うんだよ? ……俺、何かしたか?」
竹千代の行動にわけがわからない孝は、訝しげに眉を顰めて首を傾げ、彼女の去った方を見る。
すると、洗い場の床に寝そべっていた正勝が目を覚ました。
「……ん……私は……はっ! あっ、あなたは先程のっ!」
正勝が身体を起こすと、額に置かれていた手ぬぐいが落ちる。
「あ、起きた。大丈夫か? あいつ……えっと、女中か? わからんけど、ここにいた女なら、先に戻ると言っていた」
孝はそう告げながら正勝に背を向け、湯船から手桶に湯を汲むと、肩から身体にかけていった。
季節はもうすぐ夏がやってくる頃だが、裸のままだとさすがに寒い。
「御女中などではありませんよ。あの方は竹千代様です。あのっ、私、急ぐので失礼致します」
正勝が告げるものの、ざばぁーっと孝の流す湯の音で、それはよく聞き取れなかった。
「あ? なんつった? ……ってもういねぇし。まぁ、また会えるかも知んねーし、いっか」
孝が振り返ると、正勝の姿は既になく、孝は一人、竹千代との再会に珍しく心弾ませ、鼻歌まで歌いながら湯に浸かるのだった。
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