逆転!? 大奥喪女びっち

みく

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【京都・昇叙編】

104 祝いの宴

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(っ、頭痛くなって来た……。何か違うこと考えよ……)


 目を閉じた家光の頭の中は混乱を極めていた。
 心臓の音が痛いくらいに高鳴り、どっどっどと、のどの奥が唸っている感覚に襲われる。
 そして眩暈に似た感覚まで。

 勾玉が体外から出ただけでこうなるとは思わなかったな、と、家光は何とか心を落ち着けようと試みる。


 私は喪女、私は喪女。
 これは勘違いなの。

 私に熱い視線を送る人なんているわけない。
 私が権力者だから慕ってる風に見えてるだけよ。


 みんな権力に目が眩んでいるだけ……。


(じゃなきゃイケメンとまともに話なんて出来ないっつーの!!)


 私は喪女、私は喪女。
 これは勘違いなの。

 権力に群がる男達にドキドキさせられてたまるか。
 ていうか、そもそもイケメンは観賞用なんだってば……。

 自分が彼等に相応しくないってことくらいわかってるのよ。
 だから別に私に好意が向いてなくてもいいのっ。


 そう、だからこれは勘違いなんだからねっ!!



(調子乗んなよ、家光っ!!)



 家光は自分で活を入れるのだった。



「…………っ、……くそぉ……(せっかくイケメンが私を見てくれたというのに、何で尻込みしてんの私っ!)」



 家光は目を閉じたまま眉を顰めて呟いた。
 今まで数々の好意を様々な男達から向けられてはいたが、ここに来て臆病風に吹かれてしまう。


 まぁ、どうせ、醜女だし?
 今更よね?

 千代の頃はイケメンとまともに話せなかったのよ……?
 それは転生して克服したと思ってたのに……、呪のお陰でイケメンに対する興味が若干薄れてただけとか!


 ウケル! はっはっは!!


 ……って、泣いちゃう……。


 せっかく生まれ変わったのに、恥ずかしさが先に来てまともに話せなくなってない!?

 これじゃ千代の時と一緒じゃん!


 権力者たるもの堂々とするべし! よね……。


「ぅぅ…………、ぅぅむ……」


 家光は眉間に皺を寄せ、唸る。


「…………?(何唸ってんだ……? 難しい顔も可愛いよな……)」


 家光の様子を風鳥は優しい眼差しで見下ろしていたのだが、彼女が気付くことは無かった。


 …………――。


 ……そんなことが実際に起こったことだったのだが、風鳥も家光も春日局に言うことは無く……。
 ついでに月花もだが、一部しか把握していないが、脅されたことはわかっているために黙っていた。







 さて、あれから家光は政宗によって所謂、お姫様抱っこで二の丸御殿へと戻り、その日は早々に身体を休めていたのだが、大名達も集まったということで急遽宴が開かれることになり、家光も参加することになったのだった。


(まだ体力回復してないんだけどー……、だるぅ……)


 家光は一刻程休んだ後、うんざり顔で宴に駆り出される。


 何かっていやぁ、飲み会を開くんだから……。
 お祝いしたい気持ちはわかるけども、正直今日は勘弁して欲しいよ。

 と、気だるい身体を何とか奮い立たせ、宴の席に着いて酒をちびちび飲んでいた。


(あ、おいしっ、……えへへ、飲んだら飲んだで結構いけるもんだな、こりゃ)


 家光はよく冷えた冷酒に、枝豆を摘む。
 枝豆以外の皿は手を付けられていなかった。
 他の料理は食べたい気分じゃないのか、箸が進まない。


「ぁ、えへへ……、おじ様~……」


 席は離れていたが、政宗と目が合うと、家光は照れたように微笑みながら小さく手を振る。
 呪が解けた今、感情が溢れてしょうがない家光だったが、政宗に対しては緊張しながらも、昔から何度も顔を合せている仲だからなのか、何故か会話は出来ていた。


(おじ様なら何とか…………。はぁ……、テライケメン……)


 家光はうっとりと政宗を眺める。


「家光様……、ふっ……」


 家光の視線に政宗が気付き、御猪口を軽く掲げると、優しく微笑み返してくれる。


(きゃぁあああっ! 微笑み返してくれたぁああああっ!!)


 政宗の所作に、家光の脳内アドレナリンがドバドバと出て来た気がした。


「…………ぁぅ(ああ、もう素敵過ぎるっ、奥様とラブラブだし、そこがまたいいのよねっ!)」


 妻帯者である政宗は家光にとっては、憧れそのもの。
 決して過ちを犯さないであろう安心感に……、余裕……?

 他の男達の視線と違う気がするから、緊張はするが、話せる……のかもしれない。


「家光様、そろそろお休みになられては?」

「福……」


 家光が酒の入った御猪口を取ろうとすると、春日局の手が伸びて止める。


「明日、早々にこちらを発ちます。持ち越されても寄り道は出来ませんよ?」

「…………、……うーん…………福は平気なんだよなぁ……」


 春日局の手が家光の手に触れているものの、然程ときめくことはなく、家光はじーっと春日局の手を見下ろしていた。


「はい? 酔ってしまわれましたか?」

「ううん、そんなに飲んでないし平気……(風鳥は見つめられると恥ずかしかったんだよね……、久脩さんも……)」


 私、この人とキスしてんだけど……?


 と家光は春日局を見上げる。


「…………家光様? まだお辛いですか?」

「あ、うん……、少しだるさは残ってはいるけども……」


 あの時はすっごく感じたんだよねぇ……。
 めっちゃ気持ち良くて……。

 あれって……、一時的に呪の効果が薄れてた状態だったのかな……。

 じゃあ……、またちゅーしたら…………。



 家光は目の前の春日局の薄い唇をつい、見つめてしまうのだった。


「っ!(いやいやいやっ、ないないっ!)」


 血は繋がってないけど、お父さんですよっ!?


 あらぬ想像に家光の頬が真っ赤に燃える。
 戸塚宿での一件を思い出すと胸が逸る気がした。

 そんな家光の様子を、春日局は訝し気に見ていて、


「…………、…………失礼致します」

「は? えっ!!?」


 春日局は家光の膝裏と脇から背中に掛けて腕を差し入れると、抱き上げたのだった。
 不意に家光が抱え上げられたものだから、「家光様っ?」「家光様!」「どうかされたか!?」と、周りが多少ざわついている。


「っ、ちょ、福っ! どうしたのっ!?」

「顔色がよくありません。もう充分です。御部屋に戻りましょう」


 春日局はそれ以上何も言わず、そそくさと家光を連れて歩き始める。


「えぇ? まだ始まったばっ……、っ、じゃあ皆に説明しなきゃ!(急に居なくなったら何事かと思うじゃん!)」

「宜しいのです。家光様、御無理なさらぬよう、御安静に」

「えぇ……。だ、だって大名達もいるし、おじ様もいるし、お母様だっているのに……」

「構いません。家光様が大事です」

「えぇ……?」


 春日局の行動に家光は目を瞬かせていた。
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