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【新妻編】
130 マッサージ?
しおりを挟む孝を酔い潰す為、酒を勧める家光だったのだが、そう上手く事が運ぶはずもなく……
「ああ……もう俺はいいよ。役に立たなくなったら困るだろ……?」
「役に立たないって……」
「……今夜はお前を喜ばせてやるために待ってたんだ。お前も忘れてもらったら困るからこれ以上飲むのは止めろ」
ひょい。と孝は家光の手から徳利と猪口を取り上げ、お盆に戻してしまう。
「っ……!?」
「…………お前、俺が怖くないのか……?」
「え」
孝が家光の手首を握り、自らの胸に引き寄せる。
家光は孝の胸に顔を埋める格好で抱き寄せられた。
「……家光……」
「っ……! 放し……(うわっ、身体勝手に震える~~!?)」
家光の頭上から孝の低音が降り、その腕は意外にも優しく ただ抱きしめるだけ。
彼の胸に手を当て抵抗すればすぐ逃れられるのだが、家光はそれをしなかった。
というか出来ずにいた。
孝に抱きしめられた途端、家光の身体は強張り勝手に震え出す。
一度襲われた相手だから無理もないだろう。
ただ、震えているのは家光だけではなかった。
――孝の奴……手、震えてる……?
家光を抱きしめる孝の手が震えている気がする。
「……あの時はごめん……」
孝が小さく囁く。
「っ……孝……?」
「……俺は、家の奴等にまんまと乗せられた。それでお前にあんなことを……お前を傷付けるつもりはなかったんだ……、許してもらえるかはわからないけど……」
孝の言葉に家光が恐る恐る顔を上げると、薄ぼんやりとだが赤い顔をし、眉を下げた孝と目が合った。
「…………反省……、してる……っていうの……?」
「はぁ……反省してる。もうあんなことはしない……こんなに震えて……。怖かったよな……?」
家光がたどたどしく訊ねると孝は静かに首を縦に下ろす。
そして、家光の頬に手を添えじっと見つめた。
「っ……あっ、あのねぇっ!! あんたの所為で私は……っ!」
家光の息が詰まる。
あの日は独りで泣いて何とか忘れることに努め、どうにかここまでやって来たのに。
――すっごい怖かったんだぞっ!!
正勝や風鳥にも迷惑掛けたし、京都に行く途中だってのにメンタルゴリゴリ削りやがって……!
あっさり謝るとか何なんだ!
それで許してもらえるとでも思っているのか!?
お前は私にトラウマばかり植え付ける嫌な奴でしかない。というかずっとそういう存在で居て無視してればいいじゃないか!
家光の心の中で色んな感情が渦巻く。
突然殊勝な態度で謝られた所で私が絆されるとでも思っているのか、と問いたくなる。
孝は口を開けば家光の神経を逆撫ですることばかり云う割りに、今はなんだ、捨てられた子犬のような顔をしているではないか。
「すまない家光……。どう償えばいいか俺なりに色々考えた。俺に出来ることはそう多くない。だから今日は俺に委ねて気持ち良くなってくれればと……」
家光が黙り込み孝を見上げていると、孝の手がするりと寝間着の袖から入り込んで来た。
「は……? ちょい待ちっ! ちょ、待っ」
「……大丈夫、俺、こっちはちょっと自信あるんだ」
「はっ!? いやっ、あのっ、この流れおかしくない!?」
すすす。と孝の手が家光の腕をなぞっていく。
「ンッ……!(何この触れ方~!!)」
手首から入り込んだ孝の指先は、触れたか触れないかくらいの絶妙な触れ方で、家光の腕を優しく往復した。
擽ったさに家光の唇から堪らず声が漏れ出る。
「……家光って……、感じやすい……?」
「っ!? いやっ、そんなん知らんけどっ!?」
孝の唇が にやりと歪んで、今度は家光の二の腕を揉み出した。
「……はぁー……、お前の肌すげーもち肌なのな……。気持ちいいわ……(触り心地が最高だ……)」
「っ……??」
ぷにぷにぷにぷに。
孝の瞳が優しく細められ、二の腕から前腕へと手が移動する。
「ぁ……、気持ちいい……」
程よい力加減で腕が揉み解され、家光はつい素直な気持ちを吐露してしまった。
「ふ。だろ……? ……肩揉んでやるよ」
「は……?(まさかこっちってマッサージが上手いってこと……?)」
「…………いいから後ろ向け」
孝に促されるものの、家光はまだ少し警戒中の為に動かず。
「……………………、わかった。俺が後ろに回る」
「っ……」
――背後を取られたくないんだけど……!?
家光の気持ちを察して、孝は彼女の背後へと移ると肩に手を置いた。
そして、優しく揉み解していく。
「……肩、凝ってるなぁ……」
「っ……ン……くっ……」
――何でこいつ、肩揉んでんの……!? 初夜だよ!?
やはりこっちとはマッサージのことなのだろうか。
孝の手の力加減は絶妙で、強くも弱くもなく丁度良い。
按摩でも食べていけるのでは……と思う程だ。
嫌な奴のいい所を見つけてしまい、複雑な気持ちになる家光だった。
「……俺はさ……、お前と仲良くしていきたいと思ってるんだ」
「んっ、ンン……。ぁぁ……(めっちゃ気持ちいい~)」
湯殿でやられたデトックス的強制マッサージとは違い、リラックスを目的とした孝の手腕に緊張していた身体が解れていく。
――このままだと溶けそう……。
「……可愛い声……。気持ちいい……?」
「ンン……、っ……ぁ……、そこ……(何、今なんて言ったの……?)」
「ここ……? わかった、ここな……」
孝が顔を近付け家光の耳元に囁くと、低音が耳奥、そして脳内に沁み渡っていく。
ただの肩揉みだというのに、身体全体が弛緩していく感じがした。
「……んっ、んっ、ンッ……」
「…………はぁ……、家光、お前可愛いな……」
不意に肩を揉んでいた手が止まる。
「ン……、…………え?」
「……お前は俺のものだよ……」
ぼぅっと目を細めていた家光は強引に身体を反転させられたかと思うと、顎を取られ顔を上げさせられた。
「ぁ……っ……ゃ…………(マズイ……!)」
ンンッ!
家光が不味いと思った時には既に唇は塞がれ、直ぐに孝の舌が唇を割って入り込んで来る。
大きな手で頭の後ろと顎を固定され、逃げられなかった。
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