異世界に居る夫に会いたいのですが!?

由紀

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はじまり

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「……………………は?」


土曜日の朝、いつもの日常への訪れ。ベッドの上でゴロゴロしながらテレビでもつけようか…なんて思うのが常だった。
最初に感じた違和感は、肌を差す冷たい空気と口から吐かれる白い息。一気に覚醒した頭で飛び起きれば、目の前に広がる大自然に目を奪われた。

「…………………………」

「…おい!まだ商品が残っていやがるぞ!」
「あっすいません…!おい、女こっちに来い!」

「……………………はあ?」

ふと知らぬ男の声に振り返れば、乱暴に掴まれる腕は痛みを訴える。振り払おうともがく身体へは配慮なく、抵抗出来ぬまま馬車の荷台へと放り込まれてしまう。

「…っちょっと!?なんなの!」
「うるせえ!おとなしくしてろ。」

無慈悲に閉められた錠は女の力だけでは開かなそうだ。
…一体何がどうなってるの?昨日はいつも通り、ミコトの夢を見ながら眠った筈で。間違ってもこんな異国じみた場所に居る訳ない。ん?異国………………………………………いやいや、まさかね。一瞬過る可能性は直ぐ様捨てる。夢が現実なんて、夢の世界に入るなんて…ないない。

「……ままあ。」
「!」

ふいに背後から聞こえる小さな声に気付く。ぐずぐずと泣きじゃくる声音は、小さな少女の物だった。揺れる荷台の中には、自分の他にも20代~40代程の女性が6人。6歳~15歳程の少女が5人が居た。一様に暗く澱んだ表情で、薄汚れた身なりであった。
聞こえた声の主は最も幼い少女で、似た容姿で姉妹らしい子と寄り添っている。

誘拐?人身売買?

込み上げる不安と恐怖心からか僅かな震えに気付き、その場に腰を下ろす。荷台の中には、啜り泣きと絶望と静寂しか無い。





暫く走っていた馬車が一度止まり、1人ずつ固いパンとカップに注がれた水が手渡される。拒否した1人の少女が鞭で打たれたのを見て、残す事は出来ないと理解する。濁った水に浮かぶ虫を見ないようにし、込み上げる吐き気を堪えて何とか流し込んだ。

でもご飯を貰えるって事は、死なせる気はないのかも…。

食事後にまた走り出した馬車の中で、ただ時間が過ぎるのを待つばかり。 
少しずつ暗くなる景色を見つめていると、次第に荷台の中の少女達が横になっていく。こんな状況で寝られず戸惑っていると、此方を見つめる女が側に寄ってくる。

「…えっと?」

黙って隣に腰掛ける女は、薄汚れた身なりに関わらず美しく長い金髪に整った容姿をしていた。

「…あんたも寝た方が良いよ。どうせ明日には売られるんだ。」
「え?…売られるって…。」
「?ああ、あんた今日捕まったんだったね。…この馬車は各地を回って女を集めては、でかい国に売りつけてるみたいだよ。良くて召使い、悪けりゃ奴隷だろうね。」

そんな…と息を呑む。よく分からない世界で、一生を過酷な生活を強いられるかもしれない。そんな想像をして、思わず涙ぐむ。

「…まあ、あんたは若くて健康そうだし結構可愛いんだから、上手くやれば何処かの妾とかにはなれそうじゃないか。」

…嬉しくない。

落ち込むユウカを慰める女の言葉には、何の希望も見いだせない。
暇なのか諦めなのか、女は話を続けていく。女の名前はライラ。元々商人だった彼女だが、商売をしていた場所で災害に見舞われ商売を続けるのが難しくなった。近くの商業連合に話をしに行く道中に山賊に襲われ仲間は殺され、財産は奪われ…命からがら逃げた先で人身売買の一味に捕まったと。

ライラの身の上話に言葉を失うが、当の本人は至って深刻な様子は無い。

「運の悪い人生だったねえ。仕方ないからさ、もうどうする事も出来ない。でも、ちょっと残念なのは見られなかったことだね。」
「うん?何を?」
「…商業連合を纏める一番偉い人。もの凄くお金を持ってて、その上それは良い男らしくてね。一回でも見てみたかったんだけど。」

ふーんと相槌を打つ。
その薄い反応に焦れたのか、ライラの口調が少し大仰で早口になる。その人物がどれ程の功績があるのか、人脈と地位を築いているか。

「…本当に知らないのかい?」
「うーん…。」
「名前ぐらいは知ってるんじゃないかい?あの、ニコラ=スコットだよ。」

は?










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