異世界に居る夫に会いたいのですが!?

由紀

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道中

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「ニコラ…スコット?」

聞き間違いかと相手の口から出た音を繰り返すが、此方の反応に首を傾げて話を続ける。

「知らないのかい?あんた、どれだけ辺境から連れて来られたって…「その人、青っぽくて長い髪をしてる?」…何だ、知ってるんじゃないか。」

ユウカの反応に安堵した様に頷き、止まない話に興じる相手には悪いが、相槌を打ちながらも思考は別の方向へ向いていった。やはり、この世界は夢の世界なのか、ならば何故現実になってしまったのか…実は、自分が目を覚ましていないだけなのか。
だが、吐いた息の白さと手で触れた頬の冷たさは現実としか思えない。でも、もしかしたらニコラ=スコットという同姓同名なのかも。それと怖いのは、仮に彼らが存在していたとして、自分だけが見ていた夢だったとしたら?会えても知りませんだと絶望的だ。

まあ、まず自分が何処にいるかも分からないけど。

「あの、ライラさん…聞いても良いですか?」

自分よりも若いだろう相手だが、社会人である礼儀としての口調だったが、ライラにとってその態度が勘違いさせる。化粧の取れていたユウカの顔は、アジア人特有の柔らかい顔立ちで幼く見えたのだ。

「勿論だよ、何が知りたいんだい?あたしが知ってる事で良いならさ。」
「ありがとうございます。あの、今って何処に向かっているか分かりますか?」

そうだねえ…と言いながら、少し思案し思い出す様に指先を米神に当てゆっくり口を開く。

「あたしが捕まったのが、ディン帝国に向かうエリュンガ山道だったけど、そっから12回夜が明けて…」

ディン帝国…!聞き覚えのある単語に鼓動を早めるが、決して相手の話を遮らず黙って見つめるのみ。

「一度子どもを何人か中央国家の領地に売ってから、今はシュユン・ア王国に行って、何人か売るんじゃないかねえ。」

シュユン・ア王国…と呟くユウカに、何故か「全く冗談じゃ無いさね」と頭を抱えて大仰に溜息を吐き出す。

「あんたもなるべく元気な振りをしなよ!弱ってる子から降ろしてくらしいけど、獣人なんかに買われたら何をされるか…うう。考えただけで気が狂いそうだ。」
「えっと、どうなるんですか?」
「アンタね、どうなるもこうなるも…玩具やペットどころじゃないよ!1日生きてられたら運の良い方さ。」

ライラに肩を叩かれて「良いかい、元気そうに振る舞うんだよ」と念を押される。シュユン・ア王国が獣人の国って事か。もし、夢の通りなら金色の獅子クロードが居る筈。夢の通りなら、会えたら大分有難いけれど、最悪のパターンも考えないといけない。
獣人が人間を粗末に扱うなら、彼女の言う様にしないと。
外気の冷たさ以上に、自分の先行きを思い悪寒が止まらない。

ライラとの会話からこの世界の国名や地名を頭に叩き込み、不安を振り払う様に無用に話しかける。運が良かったのは、言葉が通じていた事、だが文字は全く文化に無かった物で読み解けそうには無かった。

ただただ、不安な夜が10日程続く。
薄汚れていく身体と衣服、凍える夜風、毎日同じ固いパン。心身共に擦り減っていく中、何より異世界に居る実感が日に日に増していく。

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