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三章~新風紀委員会・親交会~
続.王子様と仮王子様
しおりを挟む残りは…
忠誠心、優しさ、カリスマ性の3つの対決だね。
残りがまだ3つあるので、銀条は何とか持ち直して着替えを行った様だ。千里も着替えを終えたのだが、少々気になる事があった。 先ほどまで室内に居た執事2名が、知らず居なくなって居たのだ。急遽千里と銀条の親衛隊の中から、護衛を選出したのだが。
「…次の、忠誠心対決ですが。」
「ああ。どうするんだい?」
忠誠心か…?何だろう。まさか、自分の配下の誰かを戦わせるとかではないよね?
妙な不安に襲われるが、千里の思いは杞憂に終わる。銀条の提案は、やはり面白い物であった。モニター室に音声を繋いだまま、銀条は声を張り上げる。
「まず、僕と春宮さんの親衛隊隊長と副隊長を呼びます!」
そう彼が言った数分後には、銀条の側に二人の人物が控える。どうやら銀条の親衛隊隊長と副隊長らしい。察して来てくれた美景と歩は、銀条を少々面倒そうに見ていた。
心が強いのか、単に気づいていないのか銀条は説明を始める。
「忠誠心がある…イコール相手の事をどれだけ想い、分かっているかですよね?ですので、この忠誠心対決は、2つ項目を設定します。」
そこで引き継いだ進行役の宇津井は、ボードを見ながらモニター室に向けて読み上げて行く。
【えー。今回は2つ項目を設定しています。まずは、副隊長が隊長の事をどれだけ知っているか?と、隊長が主人の事をどれだけ知っているか?…です。】
なるほど。副隊長が…という点が工夫してあるね。
当然出してきた訳だから、あちらは自信があるみたいだね、既に勝ち誇った顔をしているし。
【…先攻はどちらにしますか?】
「ど「どうぞ。」 …。」
宇津井の問い掛けに、自信満々の銀条が此方にさせようとしたのを止め、先攻を譲っておく。訝しげな銀条には悪いが、後からだとやりずらいだろうし。……そう、相手が。
そっと歩を振り向くと、妙に穏やかな微笑みを返される。美景は興味なさげに千里に寄り添っていたが…うん。
【では、銀条彼方さんの親衛隊副隊長からどうぞ!】
「はい。ええと、銀条様の親衛隊隊長は、あの○○会社の専務の長男で………~~で、~~…………でして、~~~……。」
時間内としては、15分ぐらいだろうか?基本的なプロフィールや家族構成などもよく知っている様である。
「ふふん。うちの親衛隊は仲が良いですからね!これぐらい当然です。」
「…なるほど。中々凄いね。」
「?何ですか?その余裕は?」
それでも落ち着いている千里に、漸く違和感があったのか畏れを抱く銀条。宇津井はとにかく早く終わらせたいらしく、淡々と進めて行く。
【それでは、春宮千里さんの親衛隊副隊長どうぞ!】
うん。初めに言って置けば良かったな、銀条…悪いね。歩は、元々は美景の親衛隊隊長だったんだよ?つまり…最初から勝負になってない。
試験で学年5位以内を誇る超頭脳派でもある伊井歩は、ゆっくり深呼吸して口を開いた。
「美景様の事をお話し致しますのはまず今日だけの時間では足りませんが、千里様の為に少々省略させて頂きたいと思います。まず、基本的な情報からですね…美景様は、外資系グループ園原家のご長男であり、弟君に大翔様がいらっしゃいますね。身長は160㎝と2㎜。体重は秘密です。髪の長さは肩に掛かる程を、中等部2年の6月3日よりキープしていらっしゃいます。瞳は茶色ですが、少し濃い目の色ですね。お好きな色はスカイブルー、お好きな食べ物は主に洋食、スイーツは全般的にお好きです。ああ、特に好きなスイーツはパンプキンパイでして…」
…うわ。一呼吸で言う歩が怖いな。止まりそうも無い。宇津井の顔も無の境地といった所だし。
余裕綽々で見ていた銀条と隊長達は、今や開いた口が塞がらない状態である。早口で噛みも淀みせず、スラスラと言い終えたのは自ら時計を確認したきっかり10分後だった。
【…えー。それでは、つ、次の項目に移りたいと思います。】
宇津井の顔色が悪いな。
言い終えた歩など、普段と変わらぬ様子だが何やら恥ずかしそうに頬を赤らめている。
「…えへへ。大翔様の事は誰でも知っている事でしたね、恥ずかしい。」
照れる歩だが、ずっと聞こえていたモニター室からの声が聞こえないのは、気のせいだろうと信じたい。
「…歩は、美景の事をよく知っているんだね。」
「へっ?!わ、そんな~。こんな初歩の初歩を…お恥ずかしいです。」
手を振って恥じらう歩と、それを気にせずむしろ当然だと言わんばかりの美景に、何とも言えない千里であった。親衛隊の常識は、他者には非常識と言えるだろう。
何だろう。実は普通の事なのかな?
【…次は、親衛隊隊長が銀条さんや春宮さんの事を知っているか?です。今度も銀条さんからで良いですか?…では、どうぞ。】
「…は、はい!えっと、彼方様はかっこよくて可愛くて、運動神経も良くて、優秀で……。」
高等部の親衛隊の本気を見てびくつく銀条の親衛隊隊長だが、何とか話し始める。ただプロフィールを言うだけでは負けると思ったのか、銀条を褒める作戦で来るらしい。
最後には「本当に素晴らしい方です!」と締めくくり、満足そうだ。モニター室からは「いや、褒めすぎだろ」と突っ込みが入ったりもした。
【…では、次に春宮千里さん側です。お願いします。】
ああ、もう順番みたいだね。さてと…美景は何を言うんだろう?
千里の隣で控えていた美景の表情が、モニター室に写し出されている。中等部の方は、園原大翔の麗しい兄の姿に見入る者も多い。
「…千里君の事ですね。申し訳ありませんが、何も言う事は出来ません。」
おや?
不思議そうに視線を向けると、美景は少し固い表情で軽く頭を下げている。
【それは、春宮さんの情報を持っていない…という事ですか?】
宇津井の戸惑いが浮かぶ。あの銀条すら混乱している様だ。まさか、誰よりも春宮千里に近しいだろう美景が言う台詞に思えないのだ。全ての視線を受けて、美景は密やかな溜め息を溢す。
「…言える筈がありません。だってそうでしょう?この場で千里君の魅力を語ってしまえば、皆千里君の虜となってしまいますので。」
ですね!と歩が勢い良く頷く。
あー…うん。
「…美景。」
「はい、千里君。」
その向けられる笑顔は眩しい位である。
「いや。何でも無いよ。」
しかし、勝負の内容に沿っていない美景の答えは、採点にどの様に反映されるかは分からない。突っ込むのすら疲れたらしい宇津井の進行が進む。
【それでは、この間にも採点が終了致しましたので、同時に発表します!】
銀条は両手を胸の前で組み、ぎゅっと目を瞑る。反対に千里はむしろ負けたかな?と思い気にせずに待っていた。
【得点は…銀条彼方さん138点、春宮千里さん198点です!】
「……え?え?ええええええええ!?」
「あれ?思ったより良かったな。」
双方が正反対の反応を顕にする。銀条は正に、天国から地獄に叩き落とされた如くであった。
…思ったけど、此処までモチベーションが低くても良いのだろうか、僕は。
と思う千里だが、残り2つも一風変わった対決が待っているのは未だ知らない。
・魅力対決
春宮千里win
・忠誠心対決
春宮千里win
次で千里が勝利すれば、自動的に対決は終了となるであろう。
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