王子様が居ないので、私が王子様になりました。

由紀

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三章~新風紀委員会・親交会~

軋みsideB

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Bクラスと言えば、SやAの様な華やかさも、CやDの様な個性も無い。
所謂“平凡”なクラスと言われている。だが、この学園に本当の平凡な生徒など皆無だろう。

影の薄い担任教師と供に、Bクラスへの編入生が入室した。

「わあ、格好いい!」
「…うっそ、タイプなんだけど。」

途端に色めき立つ教室内。Bクラスには珍しい華やかな容姿に、皆興味津々である。

「…えー、今日から編入生が入ります。皆さん、色々教えてあげて下さい。」
音無おとなし雨夜あやです。よろしくお願いしま~す。」

にこりと笑う音無に、大きな拍手が返される。
焦げ茶の髪は先が少し跳ね、軽く着崩した制服は気安さを感じさせた。

「…では、音無君は木村君の隣に座って下さい。」

はーい、と緩い返事が返され、緊張気味の極々平凡な生徒の隣に座る。

「よろしくね~?木村君。」
「…ああっ、えっと!?よろしくお願いします、音無さん。えっと、どうかしたんですか?」

木村の庶民根性が、どう見積もってもお坊っちゃまオーラ全開のゆるふわ男子にビビっていた。
挨拶をしながらも周囲を見渡す音無に、緊張しながらも木村は不思議そうに問い掛ける。

「…うーんとね、星河君て今日居ないのかな~って。」

ああ、と何故か納得する。星河 陽菜と言えば、Bクラスの一輪の花である。Sクラスの生徒の従者だと知られ、その庇護欲をそそる容姿はBクラスには不釣り合いだ。

(友達かな?やっぱイケメンはイケメン同士でつるむんだよな。)

うんうんと内心頷きながら、木村の胸中はふと揺らいでいた。木村の兄が最近不安定であり、星河の名前に見るからに怯える事…何か悪い事でも…。いや、まさか。そこで思考を打ち切り、音無に事実のみを伝えておく。

「星河さんは、最近体調を崩して休んでるんですよ。」
「…ふうん?そっかあ~、残念だな。」

音無の少し垂れ気味の目が僅かに細められた。勿論そんな些細な変化など普通の生徒には気づかないだろう。

微笑みに留め、木村と他愛の無い談笑に終始する。
音無の然り気無い視界には、此方に頭を下げる生徒が半数程と頬を赤く染めて囁き合う生徒が映る。
前者は、月宮側である事に他ならない。 そんな視線には特に反応せず、表面だけの会話に終始した。

今回月宮側の人間が、別々のクラスに編入した理由…勿論、各クラスのを支配下に置く事だが、個人的にも目的は異なる。
月宮に付く理由も、星河の様に忠誠心からの者は少ない。

(本当はSクラスが良かったんだけどな~)

この音無は、残念ながら極々個人的な理由からだった。

授業の合間の休み時間、あくまでも情報収集として問い掛けてみた。勿論、こんな平凡な生徒が知り得ないだろうとたかをくくって。

「…そーいえば、秋道寺明日霞って知ってる?」

その名前に、突然だったが直ぐに頷く。秋道寺 明日霞と言えば、秋道寺組の跡取りでありSクラスの親衛隊持ち…この学園での有名人の一人だ。
木村は一通り、学園内で知られている情報を口にする。

「…あ、あと…」
「ん?なあに~?」

音無の緩い雰囲気に、木村は釣られる様に少ない情報を捻り出す。
純粋に編入生と親しくなろうという気持ちもあったが、自然に音無から発せられる無言の圧プレッシャーに充てられたのかもしれない。

“秋道寺さんの不興を買って、親衛隊隊長が代わったみたいです”

へえ~、と音無の笑みが深まる。

「一時期、秋道寺さんも元気が無くなってるって、噂もあっ「そうなんだ」…え?」

既に途中から木村の声など、音無の耳には入っていなかった。音無は、ただ一人の世界に陶酔していた。

て事はあ、明日霞はひとりぽっちで泣いてるんだね?ああ、可哀想な明日霞。直ぐに僕がいってあげるからね?

一緒に何して遊ぼうかなあ?此処には侍女おもちゃも無いしなあ…あ、親衛隊だっけ?使えばいいじゃん!どうせ、明日霞を裏切る悪い子も居たんだし丁度良いよね。

ふふ…明日霞、どんなにかっこよく綺麗になってるかなあ。エロくて可愛い僕の大事な従兄弟。ちゃーんと慰めてあげるからね!

狂気に微笑む音無の思考など気付かず、木村は律儀に説明を続けていた。
もしその内容を聞いていれば何か変わっていたのか、それは知るよしも無い。

「…秋道寺さんは、春宮さんの取り巻きで側に居ることも多くてですね…あの、音無さん?」
「…え?なあに~?」
「………いや。」

聞いてなかったか、とくどいと思い繰り返しはせず、そこで話題を切り替える事としたのである。



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