王子様が居ないので、私が王子様になりました。

由紀

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一章~新入生親睦会~

風紀委員黒鎖

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現在、僕は秋道寺と風紀委員会に向かっている。というのは、B、C、Dの自治について話し合う為である。秋道寺は家柄的に、相手に威圧を与えるだろうと連れて来た。

うーん。風紀委員長って…どんな人物だろう。

図書館棟を抜け、更に奥の東棟の一室に着く。

「ねえ、秋道寺?」

それより、今気になる事はただ一つ。

「なに~?千里ちゃん。」

にこにことご機嫌な秋道寺の手は、千里の手を握ったままだ。正直恥ずかしいんだけどな。

「そろそろ、風紀室に入るから離すよ。」

内心溜め息を吐き、自然に手をほどく。

「いーよ~。」

秋道寺が言うには、普段恵や直久と居る事の多い千里と二人きりになれ、凄く嬉しいそうだ。確かに、恵とは意識して一緒に居るけどね。

コンコン

「はい、どうぞ。」

扉を叩き、了解を得て中に入る。出迎えてくれたのは、学ランの下にパーカーを着て、そのフードを目深に被る人物である。

顔がよく分からないな。

秋道寺は、あからさまに眉を寄せるが千里が前に出ると場所を譲った。フードの人物は黙って、二人を見つめる。結構大きいな?185センチくらいありそう。

「やあ、こんにちは。風紀委員長は居るかな?」

にこやかに笑みを向けた千里に、フードの人物は口元だけ見えるそれに馬鹿にした様に笑う。

「おやおや?王子様じゃないですか。残念ながら、委員長は居ませんね。」

…こんな態度を取られるのは初めてだな。

「そっか。君は?」
「俺ですか?俺は、黒鎖こくじょう…風紀委員会の副委員長ですが。」

鼻につく相手の態度は変わらず、秋道寺から苛立ちが見られる。これは、まずいな。

「じゃあ、風紀委員長が居る時にまた来るよ。風紀委員長の名前だけ、教えてくれるかい?」
「…何で教えないといけないんですか?無知な人に教える義理はないでしょ。」

………うわ。
千里は引き吊りそうな頬をなんとか堪えたが、流石に秋道寺は我慢出来なかった。

「…ああ?誰に向かって言ってんだ、てめえ。……ぶち殺すぞ?」

わーお。秋道寺のドスの利いた声に、千里は背に冷や汗を浮かべる。初めて聞いたよ。そんな声。流石、やのつく業種って事か。

フードの人物は全く気にせず、不思議そうに秋道寺を見下ろす。

「…おや?俺は本当の事を言っただけですが。キャンキャンとうるさいワンちゃんですねえ?」

少しは…と言いながら、フードの人物は秋道寺の額を人差し指で突いた。

「少しは…静かに出来ないんですか?」

ブチッ。秋道寺の血管の切れる音が確かに聞こえた気がした。

「…殺す!」

拳がフードの人物へ飛ぶ。しかし、それは千里の掌で受け止められた。

「…おや?」
「千里、ちゃん…!」

拳を下ろす秋道寺には何も言わず、千里は感情の無い視線だけ黒鎖に送る。

「それじゃあ、失礼するよ。今度は、君と、委員長を調べてからね。」

どんな理由があるにせよ、手を出したら負けだ。
もしかしたら、僕(春宮)を潰したい誰かがいるのだろうか?春宮を潰せる誰か?

相手の返事を待たず、千里は秋道寺を引いて出て行った。

はあ、困ったな。

感情を出さない様にしている千里だが、困惑はしている。3年間無事に過ごすには、敵を作りたくは無いけど。

「……………。」

秋道寺、喋らないな?無言で俯く秋道寺に、千里は少し不安になってしまう。

「…秋道寺?どうしたの。」

千里の声かけに、壁に背を預け片手で顔を覆う秋道寺。

「俺、最低だあ。千里ちゃんの足、引っ張ったよね。」

いつもヘラヘラと笑みを浮かべる顔は、辛そうに目を細めていた。真剣な顔すると、秋道寺ってもっとモテそうだな。一歩他者と距離を置く千里はそんな事を思うが、これだけは分かっている。秋道寺は、傍に置いておく必要がある。敵にしてはいけない一人。此処で、離してはならない。

秋道寺の手を取り、顔を覗き微笑む。

「どうして?君は僕への侮辱を怒ってくれた…凄く嬉しかったよ。」

千里の笑みに、秋道寺の眉が寄る。

「…駄目だよ。俺に、優しくしたら。」

うん?秋道寺って…結構何か抱えているのかな。なら、尚更…今が大事だな。

「どうして?」

俺は…と相手の声が震えた。

「俺は、好きな子を傷つけたくなっちゃうんだよ。…相手が、泣いてもすがっても、その衝動は止められない。今まではそれで良かったけど…。」

秋道寺は唇を噛み締め、顔を歪める。

「…千里ちゃんを、傷つけたくない。だから、離れないと、さ。」

秋道寺の体が震え、視線が下がっていく。
そう。だから、何だと言うのか。僕は、逃がしてあげない。

「秋道寺……明日霞?」

初めて相手の名を口にし、相手は驚き顔を上げた。
千里は座り込んでいた明日霞を、その腕に抱く。

「…っ千里ちゃん?」
「ねえ、明日霞。言ったよね…君は、僕を傷つけないって。だって君は、僕の騎士なんだから。」

明日霞の頬に、触れるだけの口付けを落とす。
最低なのは、僕わたしだけ。人の気持ちを弄んで、利用しているのだから。
明日霞の顔が、熱を出した様に赤く染まる。

「…好きだよ、千里ちゃん。愛してる。」
「ありがとう。…僕を、守ってくれる?」

相手の瞳が情欲を孕んだ。

「…一生。俺は、春宮 千里だけの物だよ。」




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