46 / 124
二章~親交会・対立~
中等部親交会?
しおりを挟む親睦会の数日後、Sクラス担任田中は、ホームルーム後にある三人へ声を掛けた。
「春宮君、冬宮君、月宮君…昼休みに理事長室へ行って頂けますか?」
「はい。分かりました。」
特に深く内容は聞かず、軽く頷いておく。周囲は、三大家の全員が呼ばれたからか、俄にさざめいている。
さてと、何だろうな?理事長の用事か。
「せーんり?もし理事長が変な事言ったら教えてね。」
元気良くそう言うのは、勿論恵だ。桜川家は莫大な寄付をしているので、理事長に顔が利くのだろう。
*
昼食前に直久と共に理事長室に向かう。月宮も呼ぼうと思ったが、既に姿は無かったのだ。豪奢で頑丈な扉の前に居た秘書らしき人物に声を掛け、促され室内に足を踏み入れる。
「やあ、忙しい中すまないね。来てくれて嬉しいよ。」
40代中頃の男性が、ソファーに座り笑顔を向けてくる。向かいのソファーには、既に月宮が座っていた。千里達と別段親しくないからか、二人に気付いても横目で見ただけである。
「…では、春宮君と冬宮君も座ってくれ。」
理事長の隣のソファーを薦められ、腰を下ろすと直久も千里と同じソファーに座った。
この人が理事長か…。想像していたより、ずっと若いな。
然り気無く理事長を観察していると、秘書が三人へお茶を持ってきた。三人がお茶に口をつけたのを見計らい、理事長が口を開く。
「…さて、君達を呼んだ理由なのだが?」
その言葉に三人の視線が集まる。
「実は君達にやって欲しい事があってね。」
「やって欲しい事、ですか?」
不思議そうな千里に、理事長は機嫌良く「ああ」と頷く。
「夏に行われる、中等部との親交会を主宰して欲しいのだが。」
中等部との親交会?確か、毎年のイベントで高等部1年と中等部2年との関わりを持たせる行事だっけ?
学校のパンフレットを思い返し考えていると、直久が溜め息混じりにある事を指摘する。
「…理事長。俺は中等部から、春宮は高等部から編入しました。中等部との親交会は、初等部から居る者が中心となるのでは?」
へえ?
直久は中等部から入ったらしいが、やはり代々の中等部との親交会は、幼い頃から学校に通う者が主宰する事が多いらしい。
「…いやいや、それがだね…」
理事長は、高等部と中等部との親交についてを最もらしく語り、話しの方向をずらしていく。
つまる所、たぶん言いたい事は単純だろう。理事長には中等部2年に息子がいる。彼が高等部に入るまでに、三大家の若君と親しくさせたい。…という事か。
おおっぴらには言わないが、聞いていた千里にはそう聞こえた。相手の目論みに気付きつつ、そういえばとある事を思い出す。
「そういえば、親交会を主宰した者は…確か?」
含みを持たせて問い掛ければ、理事長も直ぐに察し「ああ」と頷く。
「そう、親交会を主宰して貰う事と、君達に頼みたい事がもう一つ…来年度の生徒会をやって欲しいんだ。」
…やっぱりか。
予想は付いていたので、驚かずに続きを待つ。
「新入生の親睦会も大成功だった様だ。是非とも、春宮君か冬宮君に生徒会長をして貰い、月宮君は支えて貰う形になれば良いと思うが?」
まあ、将来の為にも名門校の生徒会長も良いかもね?
一人頷く千里の傍ら、今まで黙っていた月宮の口が開かれた。
「…理事長。」
「おや?何かね。」
月宮の声を聞くのも珍しいな。普段は、教室の隅で静かに過ごしているのに…。生徒会をしたくないのかもしれないね?大人しそうだし。
そう思っていた千里だが、次の言葉に今までの考えが覆されるのだった。月宮の長い前髪が揺れ、隙間から覗いた眼光が鋭く光る。
「生徒会ですが、冬宮君の下なら100歩譲ってやっても良いでしょう。ですが…春宮君の下につくなど死んでも御免ですね。」
あまりにも淡々と、しかし嘲笑混じりの物言いに室内の空気は一瞬で凍り付く。理事長は困惑し口を閉ざし、直久は意味が分からず眉を寄せている。
……は?
思わず月宮の顔を見るが、千里の方を見ようともしない。
「…ええと、それは一体?」
理事長は混乱しながら聞く。春宮千里については、好感触な噂しか登らない。月宮の態度は、理事長の想像とはかけ離れていた。
「はい?言った通りですが…私は月宮家長子ですが、春宮君は春宮の本妻腹では無いのでしょう?」
嫡男では無い者に従う気は無い、という言い方である。その瞬間、直久の表情が変わる。
「ああ?!くっだらねえ事言ってんじゃねえぞ!」
所謂ぶちギレた状態の直久にも、月宮の端前とした態度は変わらない。
「…それに。」
月宮はまだ続ける。理事長の秘書が直久を慌てて宥めに来た。
「私は既に風紀委員会の委員長を務めておりますので、結構です。」
何だと?1年生が?
ふと、一度風紀室に行った時を思い出す。黒鎖なる怪しい生徒が、委員長は居ないと言っていた事。この月宮が、何処からか委員長になっていたんだ。
それを聞いた理事長は、この事態を収集させようと何とか笑みを取り繕う。
「…そうか、なら仕方ないな?親交会は春宮君と冬宮君にして貰おうか。」
「ええ。そうして下さい。」
そう言い、月宮は立ち上がり理事長に頭を下げると、部屋を出て行った。三大家の均衡が僅かに崩れかけているのは、誰も知らないだろう。
月宮は…何処まで知ってるんだろう?
千里の眠れない日々が始まるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる