王子様が居ないので、私が王子様になりました。

由紀

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二章~親交会・対立~

黒い秘密

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月宮の声は教室内によく通り、聞こえていた恵と明日霞が立ち上がる。

「…へえ?根暗くんが随分と粋がってんだね?」
「千里が落胤?本気で信じてるわけ?」

Sクラスにもいる千里の親衛隊も不穏な様子を見せた。元々初等部から居る月宮も、大人しく地味にしていた為親しいものも少ない。そんな状況だが、月宮は嘲笑を浮かべるだけだ。

「…味方も多く、優しく麗しい王子様気取り…君のそういう所もとても嫌いだ。」

チリッと危険な雰囲気が室内に満たされる。此処まで言われれば千里も無視する事は出来ないが、新たな声にそれはかき消される事となった。

「おんや~?喧嘩ですか?!わーお、じゃあちゃんと広い所でやりましょーよ?観客席も作って。」

黒鎖、と月宮が溜め息を洩らす。あまりに突飛な言動と出現に、一同は脱力した。

「…授業も始まる時間だ。話しはまた後でにしようか。」

千里の言葉に一度落ち着き、いきり立っていた面々は席に戻っていく。恵には頭を撫で、明日霞には肩を叩いて礼を言って置く。

「…所で。」

席に戻った千里の後ろに、含み笑いをする人物が立つ。

「何か用なのかい?黒鎖。」

何だろう?彼はCクラスなのだから、早く戻れば良いのに。

表情の見えない男は、嬉しそうな雰囲気のままある一枚の便箋を差し出した。

「黒鎖より、下の暫時ざんじって呼んで下さいよ~?あ、ざんちゃんでも可。あーっと、忘れる所でした!これをどーぞ。」

凄く嫌な予感がする。 
とりあえず微笑を返し受け取り、黒鎖が去った瞬間に現れた夏雪に毒や凶器の有無を確認され、やっと手にした。

不幸の手紙だろうか?

そう思っていると、予鈴が鳴り教師が入ってきて授業が始まる。教科書を開く動きで便箋を静かに開き目を通すと、千里の瞳がスッと細まった。 

『俺はあなたの秘密を知ってますよ。二人でお話ししませんか?』

最後には、第3会議室…と書かれている。これは、黒鎖の虚言だろう?月宮に指示されて何か罠に嵌める気か?困惑し考える事1分。

「…先生。用事を思い出しましたので、少し離れてもよろしいですか?」

教師より生徒の力が強い学校である。教師は、春宮の若君に言われ戸惑いながらも頷いた。

「…あ、ええ。」
「では、失礼致します。」 

便箋を懐にしまい、心配そうな恵に「大丈夫」と言い残し、指定された場所へと向かう。足早に会議室への廊下を急ぐ最中、複数の足音が近付いてくる。

ダダダダダ

「ッはあはあ!…春宮様?!丁度良い!」
「お聞きしたい事が!」

息を荒げ額に汗を滲ませる二人は、ただただ必死である。

えっと。都丸兄弟か。守山の親衛隊隊長だよね?

「どうしたんだい? 聞きたい事って?」

都丸兄は眉を寄せてぎゅうっと目を瞑る。

「昨夜から、守山様と連絡がとれなくて…。」
「…確かに学校内だとは思うんですが。」

守山が無断欠席?珍しいな。それに、夜から連絡が取れないのか…何かあったんだろうか?
心配はあるが、黒鎖からの呼び出しを思い出して思考を打ち切る。

「…そう。僕も見掛けたら直ぐに連絡するよ。」

親衛隊にも言っておくと言うと、二人は頭を下げてまた走って行った。




…………。

第3会議室、と書かれたプレートを視界に入れて、ドアを開け後ろ手に閉める。夏雪には話しによっては聞かれては困る物と思い、廊下で待機させた。

「お待ちしてましたよー。王子様?」
「…最初に確認して置きたいんだけれど。」

入ると、机に腰かけて足をぶらつかせる黒鎖がニヤニヤと笑う。特に反応を返さずにそれだけを問うと「おや~?」と首を傾げられる。

「…何ですか?あ、好きなタイプですか~?そうですね…」
「これは月宮の差し金かい?」

勝手に何やら語り出す相手の話しには乗らず、簡潔に問い掛け本題へと入る。

「んっふっふっ~。」

机から下りた黒鎖は、千里と靴幅三歩程の距離で返す。

「違いますよ。」

その声は今までと違いふざけた雰囲気は無いが、また違った怪しさを纏っていた。

「…じゃあ、君の独断か。」
「はい。じゃあ、聞いていいですか~?」

今度は相手からか。秘密を知ってるって…まさか。
黒鎖の口元の笑みが止み、千里へ一気に近付くと耳元に囁く。

「…貴女、女ですよね?それも、春宮の直系だ。」

!!
スッと全身の血の気が引いて、歪みかける表情を引き締めて微笑を保つ。

「…僕を脅すつもりか?」
「まさか。誰も知りませんよ~?まだ、つまらないですし。」

女だとバレたら、退学だが…こいつが公にしなければ。

分からぬ瞳が千里を観察している気配がするが、千里の動揺が見えないからか何も言わない。
こいつを篭落出来ないだろうか?絶対に、時期が来れば一番嫌な方法でバラされるだろう。

「君って何か好きなものはあるかい?」

腕を組んで何気なく聞いても、答えは欲しいものでは無い。

「…そうですね~。人の怒った顔とか困った顔は良いと思うかな~。」

こういった場合、物質を答えない者は操りにくい。
どうするか。

ふいに、黒鎖が「あー」と何か思い出した様にわざとらしく手を叩く。

「そーいえば、良いんですか?」
「…何がかな?」

まだ何か言う気か?

「えー?こんなはなしをしている間に、誰かが大ピーンチなのに~!」

『守山様が、昨夜から連絡が取れない』

まさか?!
千里の脳裏に警報が鳴り響く。

「…どこだ?」

勿論場所を教えてくれる筈は無いと思ったが、黒鎖は此方が拍子抜けする程簡単に口にしたのだ。

「2階の更衣室でーす。」

聞いた瞬間室内を飛び出した千里を見送り、黒鎖は一人ほくそ笑む。

「これは、月宮さんに怒られちゃいそうですね~。」

走る千里は守山の親衛隊隊長に連絡をし、それに追う夏雪は千里の僅かに見える不安に眉を寄せるのであった。


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