王子様が居ないので、私が王子様になりました。

由紀

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二章~親交会・対立~

※月と桜

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「…可愛いよ、恵君。」

午前の穏やかな時間、少し暗くされた風紀室でソファーに寄り添う二人。まるで恋人同士の様に、甘い雰囲気で見つめ合う。月宮の手が、恵の頬を撫でてその桜色の唇に自身の唇を重ねる。

今は、星河の持つ薬で記憶を混同させている桜川恵だ。いつ、記憶を戻すとも限らない。だから、本当に心も体も奪ってしまおう。桜川を奪っても大したダメージは与えられなそうだが、本人の能力は高く良い駒となるだろう。

自身の華やかな容姿を利用し、瞳を優しく見つめて囁き掛ける。

「愛しているよ、恵君。君の、柔らかな髪、鈴の様な声、この愛らしい唇も…全てが欲しい。」

熱を籠めて耳元で言えば、簡単に頬を真っ赤にして抱きついてきた。

「僕も、僕も月宮くんが好きだよ?だって君は、僕にとって…。」

王子様、というつもりが何故か恵の口が結ばれている。本人も不思議に思ったらしく、首を傾ける。

(月宮くんは、王子様だよね?どうして今、言えなかった?あれ…王子様って、本当に…)

ふと、恵の瞳が暗く沈んでいく。それを振り払う様に、月宮が素早く相手を押し倒しじっと顔を見下ろす。

「…月宮くん?」
「何も、考えるな。君の愛する者は?」

淡々とした口調に疑問も持たず、恵はニコッと笑みを浮かべていた。

「勿論、君だよ?」

それで良い。深く深く…堕ちていけ。
月宮の唇が、恵の首筋、顎、瞼、唇に落とされる。

「…あっ…つ、き宮くん…。」

小さな息が洩れる口中に舌を捩じ込み、歯列をなぞり口内を堪能していく。何の感情も沸かない相手だが、今だけは好意を向ける様に意識して置こうか。

可愛い、と微笑み。愛している、と囁いて。

瞳を潤ませ、呼吸を浅くする相手の制服のホックを焦らす様に外していく。期待と不安に満ちた瞳の相手は、月宮の会ってきた中で一二を争う美しさだろう。しかし、月宮の中での最上の人はただ一人だけ。

「…月宮くん…あ、ん…。」

舌で相手の上半身をなぞり、胸の頂の回りを丹念にゆっくりと指で撫でる。

「…やっ…ちゃんと、触って?」

プライドが高く、春宮以外には懐かぬ子猫の様だった恵が、快感に身を震わせた。月宮の口元に、笑みが生まれる。胸の頂を口に含み、舌で転がしたり、甘がみしてやると、相手は甘い声で鳴く。 

さてと、そろそろか。
桜川のスラックスに手をかけ下ろそうとした時、その思いが打ち消される事となった。

「…っやだ!やめて!」

今まで蕩けていた瞳は、恐怖に怯えて拒む様に両手で体を隠す。舌打ちを堪えた月宮は、ゆっくり抱き起こすと頭を撫でてやる。

「…ごめん、嫌だったかな?怖かった?」

涙を溢れさせる恵の唇が震えて無理に笑顔を向けた。

「…だ、大丈夫。びっくり、しただけだから…だって、僕は、月宮くんが、好き…好き?…れ、んで…僕?…あれ」

壊れた様にぶつぶつと言い始める相手に溜め息を吐くと、唇を重ねて一粒の薬を相手の口内に移す。ごくりと飲み込んだ事が確認されると、次第に瞼を落としていく相手。

もう少しだったが仕方ない。まだ様子を見るか。
桜川をソファーに横にすると、いつのまにか現れた人物に気付いた。

「何かあったのかな?黒鎖。」

普段通りに、フードで顔を隠した男は飄々とした笑顔のまま、ソファーに横になる桜川に目を向ける。

「いいえ~?ただ、末っ子君の隊長さんが来てますよ~。」

末っ子…桜川の親衛隊隊長か。厄介だな。

「…そうなのか。軽く、追い払って来てくれ。」
「はいはーい…ふふ。」

元気に返事をした黒鎖の含み笑いに気付き、月宮はスッと目を細める。

「何か、言いたい事があるみたいだね。」

月宮に戒めを受けてからは、多少大人しくなった黒鎖だが「そうですね~」と茶化す様な口調で続けた。

「王子様の真似をする月宮さんですけど~。俺には、帝王とか、皇帝って感じに見えるなあって。」

まるで悪の親玉?とニヤニヤと笑う黒鎖に、月宮はあしらう様に手を振る。

「…どうでも良い。良いから瀬良への対処を。」

短く告げられれば、黒鎖も軽い返事で扉から出て行った。

悪…か。善悪など、私にとって既に興味の範疇に無い。私は、ただ目的を果たすだけだ。


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