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二章~親交会・対立~
都丸弟のお願い
しおりを挟む学園の医務室。それはまるで病棟の様で、専属の医師が二十四時間体制で応対している。Bクラス以下は、大部屋での入院及び治療だが、A、Sクラスになれば個室での治療が受けられる。
智は、庭に面した景色の良い個室で入院をしている。本来は、入院する程の怪我では無かったが、親衛隊の心配が尋常では無かっただかららしい。
受付に一言挨拶をし、智の部屋に向かう。必ず守山親衛隊の誰かしらが居るそうだから、きっと一人では無いだろう。
向かう途中、見知った人物に気づく。千里が足を止めると、相手も気付いた様で駆け寄って来た。
「春宮様!来て下さったんですね。」
嬉しそうな人物は、制服をキッチリ身に付けていて花束を持っている。
「やあ、都丸。その花束はお見舞い用かい?」
きっと都丸兄弟の兄に、軽く手を振り微笑む。千里もお見舞い品を持ってきたが、甘い果物の詰め合わせだ。
「凄い花束だね」と感心して目を向ければ、都丸兄も少し照れて頷く。
「はい。1日に2回は花を替える様にしていますので。」
流石、と言って置こう。決して気持ちが重いとは言わないが。
「ああ、病室は此方で良かったかい?都丸兄。」
幾つかの個室がある為、相手に尋ねる。防犯の為、個室には名前はついていないのだ。
「…………え。」
しかし千里の質問に相手の返事は無く、驚きに見開かれる瞳が映った。
ん?何か変な事を言ったかな?ああ、つい都丸兄と呼んだからか?少し気安かっただろうか。
そう思い謝罪をしとこうかと口を開くと同時に、都丸兄の微かに震える唇が動く。
「…何故、俺だと分かったんですか?」
目に見える動揺は、千里も少し不味かったのかと思った。
都丸もAクラスという事もあり、大企業だっただろうか。跡取りが双子の男子なら、どんな葛藤が
あったのか想像はつく。
そういえば、公の場でもあくまで〈都丸兄・弟〉と呼ばせているのだ…名前を覚えられて見分けて欲しくないのだろう。
彼らを分けて対応する生徒も、見たことが無い。
僕が見分けられたのは、都丸兄の方が腕を組む事が多く、都丸弟が無邪気な笑顔で居る事に気付いていたからだが。余計な事は言わない方が良いね。
強張る表情の都丸兄に、自然に首を傾げてあくまで不思議そうに尋ねる。
「え?何となくそう思っただけだったけど、合っていたのかい?」
「…っいえ。はい、流石です。勘も素晴らしいですね!」
安堵する都丸兄は、直ぐに智の個室の扉を叩き、入室した。
「…失礼致します。」
室内には、室内着で長椅子に凭れて読書をする智と、側で紅茶?を淹れる都丸弟が見られる。都丸兄の声に反応を示さない智だが、それには特に気にせずに千里に入室を促し智に声を掛けた。
「守山様、春宮様がいらっしゃいました。」
「…!」
千里の名前に片眉を上げ、勢い良く扉に顔を向ける智に、にこっと笑みを浮かべる。
「急に来てすまないね?良かった、元気そうで。」
「…千里。」
ぱあっと背後に花が咲くような笑みを作る智に、都丸弟が口を開けたまま固まり紅茶を床に溢していた。
「おい」と都丸兄に突っ込まれ、慌てて片付けて来ると走る都丸弟に、花を差し替えて来ると退出する都丸兄。
さてと。
静かになった室内で、お見舞いの果物を渡せば喜ばれる。千里と一緒に居る事事態が嬉しいらしく、ご機嫌な智が座り直した長椅子に共に座り微笑む。
「今日来たのは、お見舞いもそうだけど…親交会実行委員会について聞いて置こうと思ってね。」
都丸兄弟にある程度聞いていたのか、戸惑わず智は穏やかに頷いた。
「…俺、は…千里の、味方。実行…委員会に、入れて?」
真っ直ぐに見つめてくる瞳に、千里の心が揺らぐ。
ずっと側で笑っていた恵を喪失した千里の心を、暖かく癒やしてくれる。
この子には勝てないな。
それは、対等に歩む直久や、ただ尽くしてくれる美景とも違うもの。そっと、智の手を取り両手で包む。
「…千里?」
はあ。何だろう?思ったよりも疲れているんだろうね。
僕は、自身の心労に気づいていた。美景には、弱味を見せられないし、直久には対等な三大家として頼りたくない。明日霞は、言ったら暴走されそうだな。
そんな千里をじっと見つめていた智は、何も言わず抱き締めてくれた。
「…疲れた?大丈、夫。大丈夫…だよ。」
頭をただ優しく撫でてくる智に、気付かず泣きそうになる千里。
「ありがとう。君は、本当に優しいね。」
「…千里、だけ。」
そう答える純粋な心に、またもや胸が痛んでしまう。言葉だけでも送って置きたいと思う。
「智の優しい所、僕は好きだよ。」
そう言えば、智は体をバッと離して顔を真っ赤にして狼狽えている。普段の守山智を知る者なら、信じられない事だろう。
その後、穏やかな時間を過ごし、明日になった退院にはまた顔を出す事を約束したのである。
そうして個室を出た千里に、都丸弟が緊張混じりに話し掛けて来た。
「…どうしたんだい?」
都丸弟も、見分けられる事を知ったのか?
「あの、これを!」
予想に反し、相手が取り出したのは1枚のカードだった。
これは、もしや。
「お願い券を、使ってもよろしいですか?!」
何故、僕に?智に使えば良いのに。
「良いけれど。お願いは?」
心の突っ込みは口に出さず、都丸弟にお願いの内容を聞いてみた。
「…はい!明日の守山様の退院日、守山様の部屋に泊まって頂けませんか?」
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