王子様が居ないので、私が王子様になりました。

由紀

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二章~親交会・対立~

※星河の策略

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星河という人間は、月宮自身すら理解出来ていなかっただろう。

Bクラスの儚げでどちらかと言えば目立たない存在。
そんな人物が、守山智を捕らえさせ、月宮派を増やし、桜川恵の精神操作を行い、瀬良を惑わせた。

…きっと誰も気付いていないだろう。





「どうしましたか?春宮さん。」

まるで邪気の無い顔で笑う相手に、千里は思わず1歩後ずさる。月宮に対しては感じた事の無い恐怖が、千里を知らず知らず襲う。

こいつは危険だ。今日に限って携帯を持って居なかった…。
一瞬の隙で扉を蹴破ろうと身構えた…筈だった。

「……っ?!」
「あれ?どうなさったのですか?もしかして。」

ふふ、と可愛らしい笑みを浮かべる。

(もう、動けないでしょ?)

クラクラと回る視界の中、千里は膝を着いたまま強靭な精神で手の甲に爪を立てた。それでも痛みで薄まる意識を誤魔化せず、ゆっくりと思考は途切れて行く。

…な…一体、なにを…する気……………

「…待っていて下さい。月宮様。」

星河は穏やかに笑うだけ。




…………っ?

次に千里が気付いたのは、薄暗い簡素な部屋。窓も、扉も見当たらず、固い床に転がされ両手首は背中で纏められていた。

「…此処は?」
「あれ?やっと起きましたか?…ご気分はどうですか?」
「とっても良いよ。」

淡々と返すと、床に転がされた背中の痛み以外の変化は無くほっとする。着衣の乱れも無いし、暴力を振るわれた様子も無い。

どのぐらい経っているんだ?此処は何処だ?
けれど、戸惑いを出してしまうのも、あちらの思う壺だろう。
学園外を出ていた場合、春宮家が総動員で探しに来るだろう。だから…まだ学園内の筈だ。

Dクラスの夏雪も、裏稼業の黒鎖も知らない場所?

そこで、星河の隣に居る人間に気づく。学園の生徒だろう。学ランの下に着けるYシャツとスラックス姿の生徒は、俯いて震えている。

「…ほ、星河さん…俺、無理です!許して下さい!」

その場で額を床に付けて涙ながらに謝る生徒に、星河はただにっこりと笑い視線を合わせた。

「どうしたんですか?木村先輩、卒業後の就職を斡旋するという約束で引き受けてくれたのに。」
「…だって、だって…相手が春宮様なんて、こ、殺される!」

星河は恐れおののく相手など、心底どうでも良さそうだ。ただ愛らしく小首を傾げる。

「ええー?でも、もう此処まで来たら一緒ですよ?今逃げたら月宮家の援助は無くなって…春宮派から潰されちゃいますね。」

既に生徒は逃げ出せない所まで来ていた。

「木村先輩、何の役職も無く、何処の派閥でも無い貴方だから良いんですよ。それに、性病も持ってるらしいし、最高ですよ。」
「…それが何だ?」

星河の視線が、無表情を貫く千里を見下ろす。

「今から、とおっても大切な事をするんですから。」
(だから月宮様にまだ言ってない。その前に、僕が春宮を壊しちゃえば…月宮様の憂いは無くなる)

千里の体中の産毛はゾクリと粟立つ。凄く嫌な予感がする。鳥肌が収まらない。

「…星河さん、やっぱり俺…。」
「ああ、木村先輩って…一年に弟が居ますよね?」
「っおい、それは!」

星河の心には情けなど無い。全ては月宮の為なのだ。

「逃げても良いですよ。貴方の弟が、一生病院で過ごす事になるでしょうけど。」

生徒は悲痛な叫び声を上げた。

「…っうう!…分かった、分かったよ…。」

瞳を充血させて、流れる涙と鼻水を乱暴に拭う生徒は、心を殺す。「家族」を盾にされた人間は、どんな事だって躊躇わないだろう。
星河はそんな生徒を見て微笑み、千里へ軽やかに足を向けた。

「ねえ、春宮さん。」
「…………何だい?」

千里の鋭い視線が、星河の瞳を射抜く。この状況でも、千里の態度は畏れも怯えも無い。
パンッ

「気に入らない…。」

室内に響くのは、人が頬を打たれた音。星河は、表情を変えない相手に苛立つ。

「…痛く無いんですか?結構強く打ったんですけど。」

この様な卑怯な人間になど絶対に屈してやらない。

「うん?ああ、痛いと泣けば満足かい?なら嘆こうか?」
「……………ふーん。」

そこで星河の顔から笑みが止んだ。その瞳の奥は狂気に溢れている。

「もう良いや。飽きました。…木村先輩、最初のお願いです。」

生徒の返事を待たずに、星河は無機質に千里の耳元で囁き直ぐに離れる。

「ねえ、女性って本当ですか?」
「…?!」

僅かに瞳を揺らす千里の反応など待たず、星河は千里の側に腰を落とす。

「じゃあ、木村先輩…春宮さんを孕むまで犯して下さい。きっと、まだ処女ですよね?楽しみだなあ。」

生徒の手が、千里の学ランのホックに掛かった。



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