異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

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いざバルディオス帝国XIII

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エドウィンに呼び止められた側室達…主にラティーフがこってり絞られているだろう頃…。
アルフレッドは軽くシャワーを浴びてから、寝室前のテラスに出て風にあたる。

エドウィンは休んでてくれって言ってたけどな。
流石に、ファビが城に戻ってくるまで起きてるかー。

身体よりも精神的な疲労は大きかったらしく、今眠ってしまえば朝まで起きない自信はあった。だが、夜会最終日を目前にした現在、多くの不安が残る。

ハレムの事はまだ良い、今後たっぷり話す時間はあるのだ。
それよりも、暗殺者の事とルークのハレムの事。比重として、重要なのは暗殺者の件だが…。
ルークが正室と離縁すると言い逃げしてしまい、それどころでは無くなってしまった。

…うーん。あの子めっちゃエロかったな。
昨夜を思い返すと高まる熱は、頭を振って忘れようと努力する。

おいおい。行為よりも、会話を思い出せ。よく思い出してみると、殺すのでは無く『バルディオス城内の隠し通路』を知りたがっていたようだ。つまり、目的は情報収集。
ルーク・フェルナンドの、バルディオス皇子の夫として知り得る物が欲しかったのだと思う。

何か、このタイミングで事を起こすとか?いやいや、こんな世界の貴賓が集まる場所で…?
背筋が凍る様だ。思わず腕を摩っていた。誰にも伝えられぬというのに、何も出来る筈が無い。

ふと、背後の違和感に反射的に振り返る。

「!君、は。」
『…オマエ、イッコ言イ二キタ。』

目に入る黒いフードと覆われた口元。まだ灯りを付けていた室内では、昨夜と異なり異様な光景だった。
隠された姿をハッキリ覚えている相手は、此方が続けようとする言葉を遮って話し始めた。

『キョウジュウ二、国二カエレ。キノウ、アタ話ワスレエロ。カンケイナイイロ。』
『…国に帰れ?何で今日中に?もしかして、明日何かあるのか?』
『…………』

言いたい事を終えたのか、口を閉ざした相手へ焦りが生まれる。相変わらず拙いバルディオス帝国語は聞き取りづらかったが、意味はしっかり理解出来た。

『何をするつもりだ?いや、誰に頼まれている?』
『…………』
『それは、バルディオス帝国相手?それとも、4大国全て?』
『…………』

言わないか。

『…何で、俺を帰らせようとする?目的が俺じゃないなら、放って置けば良いんじゃないか?』

一瞬相手の口元の布が動いた気がしたが、直ぐに動きが止まる。相手の目的は分からないのと、背後の上司?雇い主?が何処かで見ている可能性も拭えない。

仮に、今回俺に会いに来たのが独断だったら不味く無いか?
口封じもせずに、バルディオスから出て行かせる方が危険だと思うけどな。…帰った所で殺すとか?あー、態々そんな面倒な事しないか。

『身体は大丈夫?』
『…っ……』

隠れた目元を探る様に、見つめてみる。抱き潰したネコに対し、何気無い労り。この様な状況で無ければ、出会わず交わる事の無い関係だっただろう。

『俺は帰らないよ。ルークの友人として、バルディオスに関わった者としても。殺されるのは嫌だから、誰にも言わないけど。…自分に出来る限りは努力したい。』
『………』

此方への視線が外れた気がした。胸中を伝えてみても、彼からの返答は期待出来そうに無い。何も答えないつもりなのは、本当に単純に帰国を促しに来ただけなのだろうか。

『ハナセナイ、何モデキナイ。何モスルナ。』

お、やっと喋ったな。
無感情に発せられた内容は初対面だったなら、伝えられないのだから大人しく引っ込んでろと聞こえる。しかしアルフレッドは「危険だから首を突っ込むな」と受け取っていた。

『そうだね…。ありがとう、でも帰らないよ。』
『オマエ…ヘン。カワテル。』

小さな溜め息が耳に入った。頭に被ったフードを後ろにずらし、美しい漆黒が此方を射抜いた。

『時間ナイ、モウモドル。ヤクソクハ続テル。オマエガ、話サナイ、コロスナイ。』
『え?ああ、うん分かった。それだけは気を付ける。』

知らぬ者が見れば、意味不明なやり取りだった。
命を取られかねない相手と何と気の抜けた会話だろう。
此方の反応を待ち、納得したのか足元の影へと沈んでいく暗殺者。下半身がすっかり見えなくなった時、ふと疑問が口をついた。

『君を何て呼べば良い?』

思ってもいない質問だったのか、無機質な表情に戸惑いを浮かべていた。影に溶けて行く身体は、既に顔を残すのみとなる。

『……………ナンバーナインだ。』

え?

影に消えて行った彼が残した名前。ナンバーナイン?共通語に直せば「9番」になるが…。
名前?じゃないよな。彼の仕事用の呼び名なのかな。

テラスの柵に手を掛け、深く息を吐く。色々考える時間は必要なのに、悩んでいる暇は無かった。

テラスから踵を返し、寝室に続く扉を開けた。

「…?!」

だが開けた扉を慌てて後ろ手に閉めて、寝台の上に座る人物に目を丸くする。
緩く纏めた水色の髪に、ネコ用のネグリジェ姿。泣き腫らした後の様な目元で此方を認めると、立ち上がりふらふらと歩いて来るとアルフレッドの足元に座り込む。

「…シュタルト様。どうか、抱いて下さいませんか。」

見上げる瞳は、絶望に染まっていた。









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