異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

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混迷な3日目

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…夜会が、始まってしまった。
夜会最終日は最も絢爛な3日目。参加者は最多となろう。クラスによって会場が分かれる事は無く、全員が同じ会場に集う様は壮観だ。

午前中には、起床したファビアンと顔を合わせた途端に大いに心配され説明に終始した。
エドウィンの足腰は気掛かりだったが流石は騎士科筆頭、歩くのには問題無さそうだ。目と目が合って、恥じらいに伏せた表情は何とも色っぽかった。

夜会前の準備では、ラティーフの衣装が彼の雰囲気に似合って何とも麗しい物だった。
「綺麗だね、よく似合ってるよ」など声を掛けると、汗を滲ませ真っ赤にしながら「っそうですか!」と顔を背けられた。…やべえ失敗したな。

会場に入り通りすがるバルディオスの貴族達と挨拶を交わし、何となく顔も覚えてきていた。名前は出てこないが、正室二人の華麗なフォローで切り抜けていく。
ユミル王子と談笑し、
此方に気付いたフレデリク王子が逃げて行き、
騒がしい新興貴族達に辟易し、
4大国以外の国の出身者とも言葉を交わし、
それなりに順調であった。

「…バルディオス帝国皇族方が入場されます。」

よし、此処だ。
皇族の通る入り口付近に待機し、痣の目立つ顔をしっかりと晒していた。出会う者皆が傷を気にしていたようだが、やはりS級のアルフレッドに、面と向かって不躾に問いかける者は居なかった。
ユミル王子だけは普通に聞いてきたので「寝ぼけてぶつけたようです。」とだけ返して置いた。

よし、いつでも何処でも声を掛けてくれ皇帝陛下!

会場の前方に皇族達が居並ぶ。一つを残し締められた出入り口と共に静寂が訪れる。

「皆、面を上げられよ。」

皇帝の声に一斉に顔を上げ、前方へと視線が集中する。
客人を見渡す皇帝が、此方に目を留めたのも見逃さなかった。
これで、後ほど声を掛けられる下地はバッチリだと思う。

続けて言葉を続けようとする皇帝が、ふいに口を閉ざした。どよめく会場内、皇帝の目の前に進み出たルークとルキウス皇子が恭しく跪く。
想定外なのか皇族の中でも戸惑い眉を寄せたり、目配せし合う姿があった。

アルフレッドにとっては昨夜以来の二人の姿。ハレムの者達には簡単な経緯は伝えたが、実際最終的にどう落ち着いたかは知らないのだ。

何だ?やっぱり離縁するとかか?その割にスッキリした雰囲気だしな…。円満離婚なのか?
仮にそうだとしても、皇帝の前で…夜会の場で言うべき事かは疑問ではある。

昨夜とは異なる衣装の麗しい二組。楽団の音楽も、新興貴族のお喋りすら無い静寂の中、皇帝の視線での促しで口火を切ったのはルキウスだ。

「…この場を借りて、陛下に申し上げたき事がございます。本日昼過ぎにご相談した件ですが、重ねてお願いしたく思います。」

会場の後方の者達はよく聞こえていないのか、戸惑う空気を感じる。ルキウスとルークの真剣な様子に対し、変わらぬ皇帝の表情に剣が含む。

「ならぬ。夜会後に時間を取れば良かろう。」

ピシャリと言い切る声音は冷たく、並の者ならそれ以上続けられない程だ。だが、ルキウスの態度は変わらない。

「いいえ。陛下のご予定を確認致しましたが、今後私的に時間を取れる日程は45日後…到底待てません。ですので、どうかお願い致します…!」

続けようとするルキウスを制しようとする皇帝に、黙っていたルークが引き継いだ。

「申し上げます。第1皇子であるルキウスの〈継承権〉を破棄して頂きたく存じます。」

静まり返る周囲と、凍り付く皇族達。
皇族主催の夜会での最終日が幕を開けたばかり、それでも皇帝の外向けの顔を崩さないのは流石と言うべきか。
新興貴族達が離れた場所で騒ぎ立てる。他国からの参加客は様子を伺うばかり。

隣で動揺を隠せないエドウィン。思わずファビアンに目を向ければ見事なポーカーフェイス。
継承権を破棄?えーっと?離婚じゃなくて良かったのか?何でそんな話になったんだ…。

バルディオスの唯一のタチ皇子は満1歳。まだ幼く、今後成長の中で何か起こるとも限らない。ルキウス第1皇子はネコとはいえ、クラスの高い夫を持ち眉目秀麗。幼い皇子と老齢の皇帝にとって、必要不可欠な存在であった。

「…すまぬな皆の者、第1皇子は体調が良くないようだ。本日は下がって良いぞ。」
「っ父上!」

話しを強制的に終えようと、近くの侍従達に目配せする。焦るルキウスと、ルークが膝を付いたまま声を上げる。

「皇帝陛下!これは一時の気の迷いではございません。私達2人は、バルディオスの庇護を離れ、今後2人の力だけで生きて行きたいのです。」
「どうか、お許し下さい父上!」

爵位も立場も持たぬアルフレッドにとって、それは美しい光景にも思えた。それでも、皇族達の苦い顔に他国の王族の白けた雰囲気が目に入る。
愛に生きたい若い2人は、全ての役割を放棄するのだ。それでも、選んだのだろう。生涯国を捨てることになろうとも、家族から誹りを受けることになろうとも。

アルフレッドは静かに足を一歩踏み出す。袖を引いてくるファビアンの手を優しく外した。





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