異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

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誤認の3日目

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「皇帝陛下にご挨拶申し上げます。」
「…シュタルト殿か。うむ、今宵も楽しんでいかれよ。」

進み出たアルフレッドに対し、皇帝は威厳も崩さず挨拶を受ける。
一か八か。相手は老齢で経験豊富な国の主。自分の優っているのは、タチとしてのクラスだけ。どこまで通用するか分からない、だけど…。

ルークとルキウスが一生後ろ指差されて暮らすより、ぜんっぜんマシだわ。

「一つ、お話を聞いて頂けませんか?」

外向けの笑顔を顔に貼り付ける。
背筋を正し、緊張など微塵も無いといった雰囲気を纏うよう意識する。皇帝が此方を見定めているのを感じるが、全身全霊で威儀を保ち続けた。

「ふむ。申してみよ。」

こんな場面で口をつくのは二人に関してだと理解出来るだろう、アルフレッドで無ければ一蹴されて終わった事だ。
ありがとうございます、と礼を取り頭を上げる。

「…私とルーク・フェルナンドは親しい友人です。ルキウス殿下とも、正室つまを通して良く話を伺っています。ですから、この様にルークが嘘を付いて皆様に勘違いされているのが忍びないのです。」

「…続けよ。」

少しだけ、皇帝の興味を引けたらしい。
自身の鼓動が早まり、周囲の視線が痛い。ルークが困惑気味に此方を見つめ、ルキウスの戸惑いを感じる。

「昨夜も、二人と話していたのです。」
勿論、話などする時間は無かった。

「…内容は、常日頃話すものでした。」

皇帝の眉根が僅かに動く。アルフレッドの穏やかだが良く通る声に、今では会場中が聞き耳を立てていた。
静まり返る会場内で、一人のタチの声のみが反響する。

「遠き彼の地に、とある秘宝が眠る。」
「秘宝?というと?」

皇室の表情に好奇心が生まれたのに気付いた。

「学園都市ケラフの禁書に隠されし暗号を解き、私とルークだけが共有する秘密です。…とある地にある秘宝を見つけし者、祖国の繁栄を約束されたし。」
「………。」

相手からの探る視線を真っ直ぐ受け止め、ふと視線を落とす。まるで泣くのを堪える様に片手で顔を覆い、悲しげに頭を振っておく。

「ルークは、それをルキウス殿下に伝えたのでしょう。そして、何も告げずに国を出て行くつもりだったのかと。何故ならあまりに遠い場所だ、一生戻れないかもしれない!
ですが、ルキウス殿下はルークに付いて行くと選んだのです。」

皇室からの無言の視線が痛い。
作り話にとしてはあまりに稚拙かもしれない。最悪皇族冒涜罪になる危険もある。
それでも、引いたら負けだ。
下げていた顔を上げて緊張も恐れも全て押し隠し、ただ皇帝を見上げる。

「彼らは、ひとえにバルディオス帝国の御為に国を出る決断を下しました。どうか、二人の出国をお許し頂けますと幸いでございます。」

心臓が痛いほど動きを速める。皇帝の視線が、バルディオスの皇族の視線が突き刺さる。

「…分かった。」

少しの静寂の後、重々しい声が紡がれた。

「他でも無いお主がそこまで言うのだ。二人の門出を祝うとしよう。」

よっしy「だが…」あ?

深く頷く相手に内心小躍りしていると、それを遮る同じ声。浮かれかけた心に、冷や水が浴びせられる。
一筋縄ではいかぬ老練の皇帝が、含みのある笑みを向けてくる。

「バルディオスにとって、ルキウスとルークは重要な存在であった。二人の力を失ってしまうのは、我が国の大いなる損失。良ければだが…シュタルト殿に手助けをして貰えるだろうか?」

うん?
まあ、A級タチのルーク、A級ネコのルキウス、次世代である二人の不在で他国からの見方も変わるよな。
手助けか…いや、でも政治とか領地経営とかあまり学んでないぞ?

アルフレッドは、二人の抜けた穴を埋める=担当の仕事を引き継ぐだと思った。
社交会での経験値不足が招いた勘違いである。
ルキウスとルークが高速で首を振るのも、背後でファビアンとエドウィンがポーカーフェイスを崩していたのも、ラティーフの顔が青褪めていたのも、チコが首を傾げ、ジレスが頭を抱えていたのも知らなかった。

「私で出来る事ならば、喜んでお手伝い致します。」
「!そうか、それならば有難い。ルキウスとルークの旅路を祝うとしよう。」

言質を取られたと思ってもおらず、皇帝の妙に嬉しげな声音に安堵する。

あー、良かった。
いやあ、一世一代の演技力も捨てたもんじゃないな。昨夜と言い、結構頑張ったんじゃ無いか俺。

バルディオス帝国にとって、クラスの高いタチを失うのだ。ならば、クラスの高い新たなタチが必要。
皇帝は言葉の外で問いかけたのだ。

『お前が皇子の誰かの夫になるのか?』と。





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