109 / 128
誤認の3日目
しおりを挟む「皇帝陛下にご挨拶申し上げます。」
「…シュタルト殿か。うむ、今宵も楽しんでいかれよ。」
進み出たアルフレッドに対し、皇帝は威厳も崩さず挨拶を受ける。
一か八か。相手は老齢で経験豊富な国の主。自分の優っているのは、タチとしてのクラスだけ。どこまで通用するか分からない、だけど…。
ルークとルキウスが一生後ろ指差されて暮らすより、ぜんっぜんマシだわ。
「一つ、お話を聞いて頂けませんか?」
外向けの笑顔を顔に貼り付ける。
背筋を正し、緊張など微塵も無いといった雰囲気を纏うよう意識する。皇帝が此方を見定めているのを感じるが、全身全霊で威儀を保ち続けた。
「ふむ。申してみよ。」
こんな場面で口をつくのは二人に関してだと理解出来るだろう、アルフレッドで無ければ一蹴されて終わった事だ。
ありがとうございます、と礼を取り頭を上げる。
「…私とルーク・フェルナンドは親しい友人です。ルキウス殿下とも、正室を通して良く話を伺っています。ですから、この様にルークが嘘を付いて皆様に勘違いされているのが忍びないのです。」
「…続けよ。」
少しだけ、皇帝の興味を引けたらしい。
自身の鼓動が早まり、周囲の視線が痛い。ルークが困惑気味に此方を見つめ、ルキウスの戸惑いを感じる。
「昨夜も、二人と話していたのです。」
勿論、話などする時間は無かった。
「…内容は、常日頃話すものでした。」
皇帝の眉根が僅かに動く。アルフレッドの穏やかだが良く通る声に、今では会場中が聞き耳を立てていた。
静まり返る会場内で、一人のタチの声のみが反響する。
「遠き彼の地に、とある秘宝が眠る。」
「秘宝?というと?」
皇室の表情に好奇心が生まれたのに気付いた。
「学園都市ケラフの禁書に隠されし暗号を解き、私とルークだけが共有する秘密です。…とある地にある秘宝を見つけし者、祖国の繁栄を約束されたし。」
「………。」
相手からの探る視線を真っ直ぐ受け止め、ふと視線を落とす。まるで泣くのを堪える様に片手で顔を覆い、悲しげに頭を振っておく。
「ルークは、それをルキウス殿下に伝えたのでしょう。そして、何も告げずに国を出て行くつもりだったのかと。何故ならあまりに遠い場所だ、一生戻れないかもしれない!
ですが、ルキウス殿下はルークに付いて行くと選んだのです。」
皇室からの無言の視線が痛い。
作り話にとしてはあまりに稚拙かもしれない。最悪皇族冒涜罪になる危険もある。
それでも、引いたら負けだ。
下げていた顔を上げて緊張も恐れも全て押し隠し、ただ皇帝を見上げる。
「彼らは、ひとえにバルディオス帝国の御為に国を出る決断を下しました。どうか、二人の出国をお許し頂けますと幸いでございます。」
心臓が痛いほど動きを速める。皇帝の視線が、バルディオスの皇族の視線が突き刺さる。
「…分かった。」
少しの静寂の後、重々しい声が紡がれた。
「他でも無いお主がそこまで言うのだ。二人の門出を祝うとしよう。」
よっしy「だが…」あ?
深く頷く相手に内心小躍りしていると、それを遮る同じ声。浮かれかけた心に、冷や水が浴びせられる。
一筋縄ではいかぬ老練の皇帝が、含みのある笑みを向けてくる。
「バルディオスにとって、ルキウスとルークは重要な存在であった。二人の力を失ってしまうのは、我が国の大いなる損失。良ければだが…シュタルト殿に手助けをして貰えるだろうか?」
うん?
まあ、A級タチのルーク、A級ネコのルキウス、次世代である二人の不在で他国からの見方も変わるよな。
手助けか…いや、でも政治とか領地経営とかあまり学んでないぞ?
アルフレッドは、二人の抜けた穴を埋める=担当の仕事を引き継ぐだと思った。
社交会での経験値不足が招いた勘違いである。
ルキウスとルークが高速で首を振るのも、背後でファビアンとエドウィンがポーカーフェイスを崩していたのも、ラティーフの顔が青褪めていたのも、チコが首を傾げ、ジレスが頭を抱えていたのも知らなかった。
「私で出来る事ならば、喜んでお手伝い致します。」
「!そうか、それならば有難い。ルキウスとルークの旅路を祝うとしよう。」
言質を取られたと思ってもおらず、皇帝の妙に嬉しげな声音に安堵する。
あー、良かった。
いやあ、一世一代の演技力も捨てたもんじゃないな。昨夜と言い、結構頑張ったんじゃ無いか俺。
バルディオス帝国にとって、クラスの高いタチを失うのだ。ならば、クラスの高い新たなタチが必要。
皇帝は言葉の外で問いかけたのだ。
『お前が皇子の誰かの夫になるのか?』と。
106
あなたにおすすめの小説
α主人公の友人モブαのはずが、なぜか俺が迫られている。
宵のうさぎ
BL
異世界に転生したと思ったら、オメガバースの世界でした。
しかも、どうやらここは前世の姉ちゃんが読んでいたBL漫画の世界らしい。
漫画の主人公であるハイスぺアルファ・レオンの友人モブアルファ・カイルとして過ごしていたはずなのに、なぜか俺が迫られている。
「カイル、君の為なら僕は全てを捨てられる」
え、後天的Ω?ビッチング!?
「カイル、僕を君のオメガにしてくれ」
この小説は主人公攻め、受けのビッチング(後天的Ω)の要素が含まれていますのでご注意を!
騎士団長子息モブアルファ×原作主人公アルファ(後天的Ωになる)
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
聞いてた話と何か違う!
きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。
生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!?
聞いてた話と何か違うんですけど!
※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。
他のサイトにも投稿しています。
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル
諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします!
6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします!
間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。
グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。
グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。
書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。
一例 チーム『スペクター』
↓
チーム『マサムネ』
※イラスト頂きました。夕凪様より。
http://15452.mitemin.net/i192768/
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる