異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

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3日目夜会

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ふう…。何とか丸く収まったっぽいな。

周囲でどよめく本当の理由など知らず、ホッと胸を撫で下ろしていた。にこやかな会話を交わし皇帝から離れると、待ってたとばかりに皇帝から夜会開始の合図を出される。

楽団の演奏が始まり、中央には宮廷舞人達が進み出て色とりどりの衣装で場を華やかに彩る。

ルークとルキウスが何処かへ去って行く間際、何か言いたげに此方を何度も振り向くのに気付く。
ん?何だ。礼でも言ってんのか?いやいや、気にしなくて良いって。うんうん…うん?
遠くに見える二人からの、感謝のみではない表情を察してしまう。

あれ。
ハレムの元に踵を返してみると、参加客達の視線が何故だか痛い。何かが違う。

俺…うまく切り抜けたんだよ、な?

誰にでも無い問い掛けだが、ファビアンと目が合った事で思考が止まる。
誰もが見惚れる凄絶な微笑み。浮気がバレた男の様に何故だが縮こまりながら、第1正室の唇の動きを追う。美しさになお磨きがかかった出立ちは、同じネコですら嘆息物だろう。

「どなたになさるのですか?」

自然な物言いでただ一言。
それだけで、アルフレッドの脳裏は稲妻に打たれた。
バルディオス皇帝の問い掛け、ルークとルキウスの反応、観衆達の騒めき…。
やっと、自らの過ちに気が付いたのだ。

然りげなく振り返れば、年頃の皇子達の反応は分かりやすかった。はにかんだり頬を赤く染めたり、恥じらいに目を伏せてみたり…。機械仕掛けのごとくぎこちない会釈を返し、そっと視線を戻した。

………………っっっっやっちまった!!!!!!

夜会では無かったら、確実に地面に両手両膝を付いていた筈だ。
間違えました。ごめんなさい。
そんな言い訳を脳内で巡らせても、今は衆目のある状況なのだ。ハレムへ説明出来る時間は無い。

「…後で話そう。」
「そうなのですね。」
「…ああ。」

第1正室からの曇りなき眼を受け止めきれず、後悔と気まずさに苛まれる。エドウィンが何か言い掛けるのを覚悟を決め待ってみるが、それは叶わない。

舞人達の踊り、宮廷楽団の演奏…その最中に、バルディオスの上位貴族達が動き出した。
狙いは勿論アルフレッドである。特にルキウス皇子と懇意にしていた者は焦りすらあった。突然の継承順位破棄と夫君との出国の決定。第1皇子を盛り立てていた者にとって、今後の身の振り方は急務となる。

「いやー、シュタルト様。フェルナンド様への友情に胸が熱くなりました!」
「舞踏会での作法も完璧でしたが、先ほどの陛下と親密なやり取りは流石でございますね。」
「キャベンディッシュ団長のご子息を室に入れられておりましたな!そう思えば、元々バルディオスとの関係も深くなるべき御方…」

「…恐れ入ります。」

何とか口角を上げる事に成功する。此方の焦る胸中など知らず、アルフレッドを囲む貴族達の熱量は高まるばかり。
さっさと逃げ出そうと頃合いを見て話しを切り上げたいのだが、我も我もと周囲からの言葉は途切れない。

ハレムの者達も同様でクラスの低く身分の無いチコですら、ひっきりなしにバルディオス貴族から話しかけられている。そんなチコを然りげ無くフォローするのはアンリの役目となっていた。

駄目だ、逃げられない!

笑顔で対応を続けている最中、ホール中央から舞人達が離れて行くのを目にする。
楽団の演奏が切り替わり、参加客が踊りやすいテンポのメヌエットになる。第2夜のダンスとは異なり、踊りたい者がまばらに移動して行く。勿論参加者の多い今夜は人数が段違いだったが。

よし。
中央へと目を移し、自分と同じくバルディオス貴族の相手をするファビアンの片手を素早く取る。

「美しい方、私と踊って頂けませんか?」
「はい、喜んで。」

完璧な笑みを返され、中央へと優雅に向かう。
ダンスへと向かう者の邪魔は出来ないようで、残念そうだったり羨ましげに見送りながらも、進む道は自然と譲られていた。
アルフレッドが理解していたのは、ファビアンの笑顔が外向けのままである事。なんとなくだが、機嫌を損ねているらしい事。

初めて共に踊るというのに、甘い雰囲気は無く足を踏み出す。

バルディオスの皇族をハレムに迎えざるを得なくなった。
公的な場での発言、相手が皇帝だという点でも断る選択肢は無くなった。

「…その、ごめん。」
「?何がでしょうか。」
「いや、話しの流れで、ハレムに人を入れないとならなくなって。」

優雅な曲に合わせたステップは、他者から見れば溜息が出るほど見事に息が合っていた。

「謝る必要はございません。ですが皇子殿下ならば、正室として迎える事になりそうですね。」

ファビアンの微笑は崩れない。
その時が来るまで、準備を進めておきます…と淡々と話すファビアンと目が合わない。

初めてのつまで、正室で、何でも出来るから頼ってばかりの愛する人。
怒っているのか、悲しんでいるのか…感情は読み取れないが、深く傷付けたのは確かだった。






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