異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

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sideセリアル国

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セリアルの遥か上空、一陣の光が駆け抜けて行った。
残った場所に掛かった虹は、各国にとって景色を飾る一部となった事だろう。




セリアルでは災害が起こった際、警報の役割である大鳥が一斉に鳴いて知らせる。
それは、第17王子である、ユミル・パパドプロスが連れ去られた直後であった。

突風が国内に吹き荒れ、人間種よりも身体の丈夫な亜人や獣人ですらその場に立っていられない程。
首都の異変は顕著だった。
王宮の真上で巻き起こる竜巻が、城内の全てを巻き込んで物量を増していく。

「陛下ーーーーーーー!お鎮まり下さいーーーーーーーlーー!」

白で統一された僧衣を身に付けた一団が、空に向かって一斉に声を張り上げる。
城のバルコニーから顔を出す様々な役職の者達は、皆が右往左往と動揺を露わにしていた。

風を集めた様な巨大な人型が、一歩足を踏み出した。
首都の一角を薙ぎ払い、人々が塵の様に宙を舞う。
建物が崩落し、至る場所が地割れを起こし民を呑み込んでいく。

さながら大災害。生物では無く、現象と云って差し支えない。それこそが、セリアル国の創生より国に在る『ユミル』王であった。

…わあーーーー!!
助けてーー!!
いやあーーー!坊やーーーっ!

民の悲鳴も叫びも飲み込み、ただ進み行く。
何処に向かうのか、国が滅びるのが先か、民を滅ぼすのがさきか。

ふと、その歩みが止まる。
同時に四つの力がユミル王の動きを封じるに当たった。

第2王子アーサソウル。
光り輝く金色の髪をたなびかせ、振り上げた手から雷鳴を呼び起こす。雄々しい声は、彼自身が雷の化身の様だ。
ユミル王の側近くで雷を操り、四方を封鎖してしまう。

第3王子ローズル。
漆黒の黒い髪を軽く払い、手にした杖を気のない風に揺らす。すると、ユミル王の周囲に透明な壁が出来上がる。

第4王子ユングビ。
人型の身体に、猛禽類を思わせる顔。広がる優美な羽は誰もが見惚れるだろう。音を置き去りにし、宙を舞った人々を掬い上げる。

第5王子ヘイムダル。
5メートルに及ぶ体は大木が歩いている様だ。地面に置いた手の部分が、国中の木々を呼び覚ます。町中から生えた植物が、ユミル王の身体に巻き付こうとする。

その刹那、四つの努力は全て霧散する。
大地を震わせる音が、国の頭上から轟いた。

『許さん…許さんぞ…』

怯える神官達が動きを止め、人々を誘導する騎士達が恐れ慄く。

「父上ーーーーーーーーーー!止まって頂きたい!!」

その場をつん裂く絶声。雷を纏う第2王子がユミル王へ雷の雨を降らせる。
直ぐに止まっていた時が進み出す。第2王子の繰り出す雷にユミル王の歩みが遅まり、首都の混乱が僅かに和らぐ。王宮の精鋭騎士達が民の安全を優先させる。

第4王子は、遥か彼方に吹っ飛ばされ塵となる。
驚くべき事に、残った僅かの灰からみるみる姿を取り戻し再び美しい羽根を舞い突風を纏う。

第5王子は木の根を剥がされようとも、身体が引きちぎられようとも、前進を止めず力を振るい続ける。
ちぎられた手足は、再生を繰り返し続けていた。

見ていた者に方法は不明だが、第3王子は空を優雅に駆け回っていた。

「…殿下方ーーーーーーーー!!
オーディソン殿下が救援に向かわれました!!
どうか今暫く陛下の足止めをーーーーーーー!!」

遥か地上から張り上げる声に耳を傾け、何度か頷く。

「あーあ、国から出たら確実に戦争だなぁ。」
「言っている場合か!ローズル!!」
「はいはい。分かってるって。」

ユミル王の背後へ近付きながら独りごちる第3王子に、第2王子の怒声が降り掛かる。
杖を振り上げ、障壁を至る所へ展開し続ける。終えたら、戦闘を続ける他王子に透明な膜の様な物を纏わせる。

「はい、これで良いか。おっしまーい。」

堂々と欠伸をしながら眺めるが、その眼前を轟音と閃光が降り落とされた。

「…わーお。」
「この馬鹿者がーーーーーー!休んでいる暇があるか!!ユングビとヘイムダルを見習え!」
「うるっさ、わかった分かった。愛する兄上の仰せのままに。」

態とらしく礼を取る第3王子だが、ユミル王が巻き起こす竜巻を目にし大仰に肩を竦める。

セリアルが誇る上位5人の王子。
現在、4人で超常的な王の相手をせねばならない。
セリアル以外の国々は、一部を除いてユミル王の姿を知らないのだ。知る必要も無かったからだが。

もしも此処で止められ無ければ、4大国の均衡が崩れるに足るだろう。








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