異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

文字の大きさ
121 / 128

sideセリアル国

しおりを挟む







セリアルの遥か上空、一陣の光が駆け抜けて行った。
残った場所に掛かった虹は、各国にとって景色を飾る一部となった事だろう。




セリアルでは災害が起こった際、警報の役割である大鳥が一斉に鳴いて知らせる。
それは、第17王子である、ユミル・パパドプロスが連れ去られた直後であった。

突風が国内に吹き荒れ、人間種よりも身体の丈夫な亜人や獣人ですらその場に立っていられない程。
首都の異変は顕著だった。
王宮の真上で巻き起こる竜巻が、城内の全てを巻き込んで物量を増していく。

「陛下ーーーーーーー!お鎮まり下さいーーーーーーーlーー!」

白で統一された僧衣を身に付けた一団が、空に向かって一斉に声を張り上げる。
城のバルコニーから顔を出す様々な役職の者達は、皆が右往左往と動揺を露わにしていた。

風を集めた様な巨大な人型が、一歩足を踏み出した。
首都の一角を薙ぎ払い、人々が塵の様に宙を舞う。
建物が崩落し、至る場所が地割れを起こし民を呑み込んでいく。

さながら大災害。生物では無く、現象と云って差し支えない。それこそが、セリアル国の創生より国に在る『ユミル』王であった。

…わあーーーー!!
助けてーー!!
いやあーーー!坊やーーーっ!

民の悲鳴も叫びも飲み込み、ただ進み行く。
何処に向かうのか、国が滅びるのが先か、民を滅ぼすのがさきか。

ふと、その歩みが止まる。
同時に四つの力がユミル王の動きを封じるに当たった。

第2王子アーサソウル。
光り輝く金色の髪をたなびかせ、振り上げた手から雷鳴を呼び起こす。雄々しい声は、彼自身が雷の化身の様だ。
ユミル王の側近くで雷を操り、四方を封鎖してしまう。

第3王子ローズル。
漆黒の黒い髪を軽く払い、手にした杖を気のない風に揺らす。すると、ユミル王の周囲に透明な壁が出来上がる。

第4王子ユングビ。
人型の身体に、猛禽類を思わせる顔。広がる優美な羽は誰もが見惚れるだろう。音を置き去りにし、宙を舞った人々を掬い上げる。

第5王子ヘイムダル。
5メートルに及ぶ体は大木が歩いている様だ。地面に置いた手の部分が、国中の木々を呼び覚ます。町中から生えた植物が、ユミル王の身体に巻き付こうとする。

その刹那、四つの努力は全て霧散する。
大地を震わせる音が、国の頭上から轟いた。

『許さん…許さんぞ…』

怯える神官達が動きを止め、人々を誘導する騎士達が恐れ慄く。

「父上ーーーーーーーーーー!止まって頂きたい!!」

その場をつん裂く絶声。雷を纏う第2王子がユミル王へ雷の雨を降らせる。
直ぐに止まっていた時が進み出す。第2王子の繰り出す雷にユミル王の歩みが遅まり、首都の混乱が僅かに和らぐ。王宮の精鋭騎士達が民の安全を優先させる。

第4王子は、遥か彼方に吹っ飛ばされ塵となる。
驚くべき事に、残った僅かの灰からみるみる姿を取り戻し再び美しい羽根を舞い突風を纏う。

第5王子は木の根を剥がされようとも、身体が引きちぎられようとも、前進を止めず力を振るい続ける。
ちぎられた手足は、再生を繰り返し続けていた。

見ていた者に方法は不明だが、第3王子は空を優雅に駆け回っていた。

「…殿下方ーーーーーーーー!!
オーディソン殿下が救援に向かわれました!!
どうか今暫く陛下の足止めをーーーーーーー!!」

遥か地上から張り上げる声に耳を傾け、何度か頷く。

「あーあ、国から出たら確実に戦争だなぁ。」
「言っている場合か!ローズル!!」
「はいはい。分かってるって。」

ユミル王の背後へ近付きながら独りごちる第3王子に、第2王子の怒声が降り掛かる。
杖を振り上げ、障壁を至る所へ展開し続ける。終えたら、戦闘を続ける他王子に透明な膜の様な物を纏わせる。

「はい、これで良いか。おっしまーい。」

堂々と欠伸をしながら眺めるが、その眼前を轟音と閃光が降り落とされた。

「…わーお。」
「この馬鹿者がーーーーーー!休んでいる暇があるか!!ユングビとヘイムダルを見習え!」
「うるっさ、わかった分かった。愛する兄上の仰せのままに。」

態とらしく礼を取る第3王子だが、ユミル王が巻き起こす竜巻を目にし大仰に肩を竦める。

セリアルが誇る上位5人の王子。
現在、4人で超常的な王の相手をせねばならない。
セリアル以外の国々は、一部を除いてユミル王の姿を知らないのだ。知る必要も無かったからだが。

もしも此処で止められ無ければ、4大国の均衡が崩れるに足るだろう。








しおりを挟む
感想 65

あなたにおすすめの小説

α主人公の友人モブαのはずが、なぜか俺が迫られている。

宵のうさぎ
BL
 異世界に転生したと思ったら、オメガバースの世界でした。  しかも、どうやらここは前世の姉ちゃんが読んでいたBL漫画の世界らしい。  漫画の主人公であるハイスぺアルファ・レオンの友人モブアルファ・カイルとして過ごしていたはずなのに、なぜか俺が迫られている。 「カイル、君の為なら僕は全てを捨てられる」  え、後天的Ω?ビッチング!? 「カイル、僕を君のオメガにしてくれ」  この小説は主人公攻め、受けのビッチング(後天的Ω)の要素が含まれていますのでご注意を!  騎士団長子息モブアルファ×原作主人公アルファ(後天的Ωになる)

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

聞いてた話と何か違う!

きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。 生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!? 聞いてた話と何か違うんですけど! ※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。 他のサイトにも投稿しています。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル

諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします! 6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします! 間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。 グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。 グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。 書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。 一例 チーム『スペクター』       ↓    チーム『マサムネ』 ※イラスト頂きました。夕凪様より。 http://15452.mitemin.net/i192768/

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...