異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

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さて囚われ日和5

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あめ。」
「め…目玉。」
「ま、枕。」

ら、ら…「ラッパ。」

「らっぱとは何ですか?」
「あー、セリアルには無いんでしたっけ?楽器の一種ですよ。」
「へえー。ぱ…ぱ…」

目が覚めたユミルは、妙に冷静だった。
たぶん家族が助けに来る…と、自信たっぷりに言い切る程に。
まあ、王族なので救助隊は来るのだろう。
肝の座ったユミルと、現在先ほど教えた「しりとり」を楽しむ事にした。少しルールは此方の文化に合わせているが。

様子見の為、フレデリクは口枷を外されている。
大声を上げる事は無くなったが、ギー公爵と馬が合わず何度も口論に発展していた。
それでも流石に精神的に参っているようで、大人しくなっている気がする。

それはそれとして。
アルフレッドにとって、フレデリクの体調など二の次だ。
ネコ側の人質に誰が居るか、それを知る必要があった。

火傷痕のネコが来る度、色々と話しかけてみるものの…。
あまり良い成果は得られない。
フェムとは違い事務的な雰囲気で、人質に関しては頑なに口を閉ざしているのだ。会話の内容が筒抜けらしいので、世話係?の彼らも制約があるのかもしれない。

「…えーっと。」

しりとりの続きを口にしようとするが、それは叶わない。
室内の世話係達が一斉に端へ移動し、土下座の態勢で頭を下げる。

何だ一体?

ユミルと目配せする間も無く、たった一つの出入口である扉が開かれた。
入って来たのは、フードのついた真っ黒なローブを身に付けた人物。それに追従する数名の側近達。
端に待機する世話係達が目に見えて震えている。

何か騒ぎ立てそうなフレデリクが黙りこくり、怪訝そうなギー公爵が様子を伺う。温厚なユミルの瞳が細まった。

異様な雰囲気である。
室内が、では無い。その人物が、なのだ。
不安を煽り、気分の悪さが込み上げる。全身で、相手を警戒する信号が発せられていた。
何故だか喉が渇いた。

フードの人物は、迷いなくアルフレッドの目の前まで歩いて来た。側近がアルフレッドの両隣に一人ずつ立ち、その場から動けないよう見張っている。

「さて、初めましてタチの客人よ。私は此処の長とでもいうのか、それなりに上の立場をやらせて貰っている。
何か必要な物は?ああ、世話係達は役立っているか?」

…共通語か。
じっと視線を向けていると、離れた場所から声が上がる。

「こいつらの長だと!一体、何が目的なんだ!
やはり身代金なのか?!だろうな、人質ならばもっと丁重に扱え無礼者!」

うん、元気だな相変わらず。
待ってましたとばかりに騒ぐフレデリク。その気概だけは尊敬しても良い。
だが、それに目も向けないフードの人物。

「さてと、挨拶はもう済んだ。
一つ尋ねたい事があるんだが、シュタルト殿?」
「…尋ねたい事?」

言われたままおうむ返しに繰り返す。
フードで隠れた相手の表情は読めない。

「ヴィム・ザッハーから教えて貰ったのだが、ノアベルトレ・ライヒテントリットは君のつまになるのかい?」

は?
何言ってんだコイツ。

相手の表情は分からないが、視線が此方に向いているのは嫌でも分かる。フレデリクがぎゃあぎゃあと喧しいのが、むしろ助かっていた程だ。
相手の質問の意図が読めなかった。ただ、冗談や何かの揶揄とも思えない。張り詰めた空気に唾を飲み込む。

言い方的に、ライヒテントリットとザッハーが人質の中にいるのだろう。
ザッハーが言った?何故?俺の事を嫌っていたのに?
ライヒテントリットが否定しなかった?
いや、喋れない状況なのか?
…人質は他に誰がいる?

質問自体が嘘かもしれない。
肯定すべきか、否定すべきか。
結果など、想定出来る筈が無い。仮に人質が自分だけだったら、騒いで喚いて暴れていた自信があった。

自分でも、迷いに迷った末出ていた言葉。

「…そうだ、ハレムに入れる予定だ。」

此方の返答に、相手の雰囲気が見るからに変わる。

『(それはそれは、真に残念だ。…ファイブ)?』
『(っは)。』

独り言の様な呼び掛けに、足元の影から姿を現す黒いローブ。ナインや此処に居る者達と同じ姿。
言語はアルフレッドにとって聞き覚えの無い音。

ゴス…と嫌な音が耳に響く。
どこか他人事のように、目の前の光景を見つめていた。
その場に倒れ伏す黒いローブの人物。手に持つ木製のステッキが、頭部に振り下ろされる。

『(役立たず)。』…ゴスッ

『(無能)。』ガッ…

『(ゴミ屑)。』パキ…

耳に馴染みのない言語と共に、人間の頭部を殴打される音が続く。ファイブと呼ばれた人物は側近の2人に引き起こされ、蹲るのも身体を縮こめる事も許されない。

『(も、申し訳…ありません、お許し…下さっ…)』
『(汚い声が非常に不愉快だ)。』

アルフレッドにとって会話の内容は知り得ない。
それでも、自分の返事一つが理由であると察していた。
フレデリクとギー公爵の、冷めた中の少し安心した空気。

ただの、誘拐犯達の内輪揉めと言ってしまえば良い。

良かったじゃないか、矛先が変わったし。
上手く切り抜けられたんだよな?

「…止めろ。」

殴打の音が止む。

「何か聞こえた気がするが、用でもあるのか?人質殿。」

息も絶え絶えのファイブと呼ばれた者。
フードの人物の態とらしい口調。震える世話係達。
止めておけ…とユミル王子の表情が目の端に映る。
ドクンドクン…と心臓の音が五月蝿い。脳内の警報が喧しく鳴り響く。

「止めろと言ったんだ、その手を止めてさっさと消えろ。」








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