28歳 喪女な私の愛され開発生活

甘噛屋

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第三章 愛され開発生活本番

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 焦り、という言葉で片付けるには幼稚すぎる気がする。

 本当は色々と考えていた。
 ベタに夜景の見えるホテルのレストランに連れて行くとか、雰囲気のいい庭の見える料亭とか、涼子の好きそうな居酒屋とか…。

 でも、考えあぐねた結果ゲスイと言われても仕方が無いが、下心3割で自宅に呼ぶことにした。

 別に食ってしまおうと考えているわけでも、それがメインというわけでもない。あわよくば…という程度には期待していたが、彼女は全てが初めてなんだ。無理矢理美味しく食って、嫌われては元も子もない。

 ちゃんと一線を引いて、営業口調を崩さなければ、理性で抑えられる自信がある。
 ──いや、あった・・・


 駅で、普段とは違って隙だらけの涼子の私服に軽く気持ちがぐらついた。

 華奢な身体から覗く鎖骨、襟から覗く白い首筋、きゅっと締まった太ももと尻…そんな煩悩が頭をよぎって、理性で抑えられる自信があった自分が情けなくなる。

 悪戯心…だったのか、緊張する彼女がかわいくてからかいたくなる。

 何度か繰り返すうちに分かったのは、意外と耳が弱いこと。吐息がかかるほどの距離で声をかけると、慌てる涼子が俺の胸に体を預けるようによろけた。不意に伸ばした腰の細さに、ドクリと血液の温度が上がる感覚と、仄かに甘い香りについつい腰にまわした腕を引き寄せた。

 緊張で熱いくらいの涼子の身体に、じかに触れるとどうなるのか…なんて変態のような想像にまた情けなさが増す。
 理性はどこに行ったんだ。


 「い、いや!? あの、えっと…ぶ、ぶちょっ」

 「洋司、ですよ?」


 なかなか名前で呼んでくれない涼子に、追い討ちをかけるように口元に軽く人差し指を当てた。フニっとした柔らかさに、この間のキスを思い出して食いつきたくなったが、カァッと頬を赤くして俯いてしまった涼子の不慣れなかわいさに、とりあえずはこの辺で許しておくことにした。


 車に乗って一応自宅に呼ぼうと思っていることについて了承を貰うつもりで声をかけた。

 焦る彼女が断れないように、少し強引に出てみる。


 仕事ぶりを見て、彼女への横溝の評価を聞いて、ある程度理解している事がある。もちろん、これまでの俺の強引過ぎる行動を振り返ってみてもそうだが、『彼女は押しに弱い』

 仕事が出来て、プライドもあって、自分の外見にも自信があって、経験もある女は、強引に出られることを少し嫌う。そういう女はどちらかといえば、おだてて持ち上げて『君が一番』とでも扱ってやればコロリともできるが、きっと涼子は違う。

 仕事が出来るのは、男に舐められたくなくて人一倍頑張っているから。間違っても自信があるわけじゃない。
 プライドがあるのは、仕事に対して真摯に向き合っているから。間違ってもお高くとまっているからではない。

 そして、涼子は自分の外見に自信も無く経験だって無いから、男の上手い断り方を知らない。どうすれば、男が引いてくれるのかを知らない。だから、多少強引なくらいが涼子にはいいんだろうと思う。

 卑怯だと言われそうだが、好きな女を手に入れるために──卑怯な──努力をして何が悪いと開き直ってしまう方が、今は楽だ。


 自宅への誘いは、彼女が観念してくれたおかげで俺の勝利だ。

 でも、同じ空間にずっと一緒だと俺はきっと手を出してしまうだろうから、今日は酒を控えようと思っていたのに、可愛らしく「神崎部長は飲まないんですか?」と首を傾げる。

 分かってやっているわけではないから、憎めないんだ。最初から帰すつもりは…ほんの少しはあった。
 まぁ、あわよくば…というのを狙いはしたが、横溝から『飯塚、小田ペアは企画営業部で一番酒が強いコンビ』だと聞かされ、あの横溝が潰れかけたほどらしいので酔ってそのまま、というのは期待していなかった。
 ただ、いつものように強引に行けば、もしかしたら…とも考えるゲスイ自分を、何とか抑えておきたかったから酒は口にしないようにしておきたかったのに。

 ひとまず、彼女に少しは警戒してもらおうと発した言葉の意味は、半分も伝わらなかった。


 パスタを口にして、「すっごく美味しいですよ! 神崎部長って、料理まで出来るんですね!」と涼子に言われて、未だに部長と呼ばれることに少し焦りと切なさがよぎる。
 意識されていないのか、それとも呼び慣れないからそうなってしまうのか…恐らく両方だろうとは思うが、それでは前に進めない。

 いつもならすっと引いてやるところだが、今日くらいはもう少し粘ってみてもいいかもしれない。

 じぃっと揺れる瞳を見つめて待っていると、振り絞ったようなか細い声が空気を伝って耳に届いた。


 「…よ…ぅ……」

 「……」

 「じ、さん」


 尻すぼみした俺の名前に、ぶわっと鳥肌が立つほどの興奮が身体を抜けていく。

 これまで、何度だって名前は呼ばれてきたが、こんなにも腹の下がざわつくような感覚になったことはない。
 どんな女にだってこうはならなかったし、なりたいとも思わない。涼子だから、こんなにもざわつくんだと実感して、これ以上はテーブルを跨いで迫ってしまいたい衝動に駆られる気がした。

 離れかけた理性を何とか繋ぎ止めて「まぁ、今はそんな感じでいいですよ」と言って誤魔化してみる。顔を赤くしている涼子に、もっと色んな表情を見てみたいと欲望も出たが、ひとまずはそれを抑えて別の話に花を咲かせた。



 飯塚 涼子。
 5年前に入社してからずっと企画営業部の1課だ。

 横溝からもらった営業先と自分で開拓した営業先が今はちょうど半分くらいらしい。今後はそれを逆転させてやるのが目標らしいが、十分だと俺は思う。あの熊野郎の営業先など、もうとっくの昔に自分のものにしているだろうからな。

 中学から大学まで女子校育ち。
 お嬢様かと思えば、普通の家庭だったようで、母親の母校が家から近いからという理由で進学したらしい。あとは、父親の強い希望のようだ。──ありがとうございます、本当に。──
 中学から高校までは女子バスケで、言いにくそうだったがファンクラブがあったようだ。しかもあだ名が『王子』。大会に行けば、他校の女子から手紙を貰ったり、バレンタインにはチョコを貰ったりと女子へのモテ方は尋常ではなかったらしい。確かに、整った顔つきにキリっとした目と女子にしては高い身長で同性に対して優しければ、モテもするだろうが…俺からしてみればその環境女子校があって良かったとも思う。

 大学時代はバスケもしたらしいが、ゼミ活動が中心だったらしい。合コンにも何度が呼ばれたが、男より女の扱いが上手いせいでどんなに当たりのメンツでも、女子の評価基準が涼子になってしまうので、大学1年の後半からは合コン参加を控えた。──悪い虫がつかない結果になったことには感謝したい。

 誕生日は12月23日で、クリスマスイブの前日ということもあり誕生日ケーキとクリスマスケーキは一緒だったらしい。プレゼントももちろん1つ。小さな頃はそれがイヤだったようだが、この歳になると親の判断が正しかったと振り返るらしい。──今年からはケーキを2つとプレゼントが2つでお祝いになりそうだな。

 生まれたときはそれほど大きかったわけではないらしいが、小学校を卒業する頃には既に160はあったらしい。その頃から小学校時代の男子連中に男だと言われて女子トイレに行けば『変態だ!』と騒がれ、スカートで行けば『おかまだ!』と言われ、自然と男がいない場所を好んでしまった結果が女子校コースと言う事らしい。


 「大学時代の涼子さん、会ってみたかったですね」

 「いやぁ~…大学から変わらずこんな感じなので今とそう変わらないって同級生たちには言われますよ」

 「でも、いい雰囲気になった男がいなかったわけではないでしょ?」


 俺の発言に、ピクリとチーズを持つ手が止まった。地雷を踏んだか?

 ソファの背もたれに身体を横向きに沈ませた状態で動きを止めた涼子の様子を伺う。


 「…はは、いい雰囲気だと思ったのは私だけっていうのはありましたよ~」


 そういう男がいたのか、ということにざわりとする。苛立ちなのか、やきもちなのか、その続きを聞きたい気持ちと、止しておけと忠告する気持ちが混ぜこぜになる。


 「なんていうか…友達の紹介だったんですけどね……話も合うし、バスケも出来るしで、よく休日は一緒に出かけたんですよ? でも、全くそういう雰囲気にならなくって、多分好きだったんだと思います。ただ、当時はそれで良かったんです。楽しかったし、一緒にいられるのが嬉しかったし。それ以上になりたいなんて、考えてもなかった………でも、飲みの席ではっきり言われたんですよね。『涼は女というより、男って感じだから気が楽だ。性格とか、テンションとか、あと体型!』って。冗談だったと思うんです。いつもの軽い冗談…でも、なんていうか、ね」


 当時を思い出したのか、眉間に寄せた皺がプルプルと震えている。彼女の身体に対するコンプレックスの強さはここから始まっているのか…。そうさせた男が憎かったが、それと同時に俺自身の体の力が抜けた。

 「ははは」と無理矢理笑おうとする涼子に、キュッと胸のしまる想いが混じる。


 気付いて欲しい。涼子が俺にとってどんなに魅力的な女性であるか。どんなにその身を抱きしめたいのか。どれだけ俺が欲を抑え込んでいるのか。

 分かって欲しい。こんなにも涼子を欲しいと思う俺の気持ちを。


 気づけば、下がった顔を上げて驚く涼子の唇にカプリと噛み付いていた。

 涼子が手に持っていたチーズが床に落ちた音がする。片手に持っていたグラスをカツンとガラステーブルに置いて、ぐっと身体を近づけた。

 軽く唇で数回上唇と下唇を食んで、小さなリップ音をワザと立てる。ぐっと力の入った涼子の背中を撫でるように手を添わせると、いつもは無い留め金の感触に腹の下へと熱が集まる。


 「…何色に、したんですか?」

 「ん…ぅん…ぇ?」

 「下着…着けて来てくれているんでしょう?」


 ブワっと思い出したかのような涼子の頬の赤みに、理性も微かにほどけていく。

 ここで全てを暴いてしまうのはもったいない。でも、今すぐにでも暴いてしまいたい。涼子自身が選んで身に着けている、俺が渡した下着。そのどれをつけて今日ここに来てくれたのか。

 きっと選ぶ時はどきどきしただろうし、焦っていただろう。俺の事を考えて、そうなってくれたんだろうと思えば思うほどに、今すぐ剥いてしまいたい。


 「えっと…んぅ…ぶ、ちょ…」

 「…涼子、名前」

 「んゃ…ふぅ、んぅ…」

 「言えるまで、逃がさない」


 唇をくっつけたまま、恥ずかしくて口を閉じる涼子に追い討ちをかける。

 ソファに完全に横向きに座って、足の間に涼子を強引に引き入れた。驚きに口が開いた隙に、舌を滑り込ませると、チーズと白ワインの味が口腔内に広がる。避けようとする舌を追いかけて、逃げようとする顔を後頭部に手を回して阻止した。ピチャリと時折唾液が混じる音が聞こえると、涼子の甘ったるいくぐもった声も恥ずかしいのか小さくなる。

キスだけで、こんなに気持ちが高ぶって気持ちがいいと感じることは無かった。きっとこんな気持ちになるのは涼子だけな気がする。…いや、間違いなく、涼子だけだ。


 「んぅ…ぶ」

 「だめだ。言えるまで」

 「ふぁ…んぁ…んぅ…」

 「涼子」


 キスの合間にチャンスを与えて、先を促す。名前だけで終わりじゃない。

 だから、涼子。早く続きを教えて。


 「ん…よ、じさ」

 「ん…いい子。かわいい」

 「はぁ…はぁ…」


 まだ2回目のキスで、意地悪をし過ぎてしまったのか涼子の息が上がっている。

 名前の次があるから、まだ終われない。


 「それで」

 「ん…」

 「何色にしたの?」

 「ひゃっ! ちょ、ぶちょ」

 「涼子…名前は?」

 「えと…よう、じさん」


 慌てたせいで、呼び方が戻ってる。それもかわいいし、まだ攻められるのはいいけれど焦らされるとさすがにキツイ。

 耳にキスをして、白く細い首筋にも唇を寄せる。軽いリップ音をいくつも立てながら、下着の色を聞く。ただの変態親父じゃないか。と突っ込みが入りそうだが、恋人同士ならそれも許される。


 「涼子、教えてくれないってことは…」

 「ハァ…んぅ…ゃ」

 「捲って見てもいいってことか?」

 「だ、だめぇ…んぅ…」


 焦って服の裾を下に引っ張った涼子の幼さに、むくむくといけない悪戯心が膨れ上がる。

 下心、隠したつもりがこんなところで出す羽目になってしまった。


 「ほら、教えて?」

 「んぅ…ぁ…ふぁ…か」

 「うん?」

 「あ、かぁ…んぅ」


 赤か…なんてもの着てくれるんだ。赤、黒、紫とそれぞれ原色に近い色の下着を渡したが、まさか赤で来るとは思わなかった。黒が無難なところだと思っていたのに、赤と来たか。

 頭の中で、華奢な体つきの色白肌の涼子が赤い下着をつけている姿を想像して、ズクリと下半身が質量を増す。


 「涼子、色っぽいの選んだね」

 「ん…そ、なこと…」

 「…その大学の男はただのバカだな」

 「え?」

 「今の涼子で、こんなになる俺がいるんだから…体型が女じゃないなんて、見る目が無い」

 「っ…」


 涼子の手を取って、質量を増した自身をジーパンの上から確かめさせた。

 強烈過ぎた刺激に、涼子の身体に力が入って固まってしまっている。怖がらせるつもりは無い。

 ただ、知って欲しい。自分でこんな風になる男が身近にいることを。そして理解して欲しい。自分の身体が男を雄に出来ることを。


 「涼子、怖がるな。今日はひどくしない」

 「…ぇ?」

 「涼子が本気で怖がって、本気で嫌がることはしない」

 「あ、あの…」

 「だから、涼子に触れることを許して」


 返事を待たずに、また深く唇を奪うと宛がったままの手に力が入って、微かな快楽に腰が浮く。

 こんなの、覚えたてのセックスに夢中になった頃以来だ。

 涼子の腰を引き寄せて、そのままソファに押し倒した。黒いソファに華奢な体つきの涼子が映える。

 こんなことで簡単に興奮してしまえる自分にも驚いたが、真っ赤な顔の涼子がほんの少し小さく頷いたことにも驚いた。
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