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第四章 愛し愛され開発生活

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 あぁ、朝だ。起きなきゃ…。

 あれ、でも今日って日曜日か…じゃぁ、もうちょっと寝ててもいいのかな。


 寝返りを打って鼻から息を吸ったところで、ふわりとコーヒーの匂いが鼻腔をくすぐる。

 コーヒー…いい匂い、気持ちいい朝だなぁ~…



 「え、誰が入れて…」

 「おはよう、涼子」


 マグカップを片手に持った洋司さんが、大きな身体をドアに持たれかけて目を細めて私を見ていた。

 そんなまぶしいイケメンの姿、朝から見せられてしまうと思考が停止する。


 「あー…ダメだ、苦い」

 「んへ?」

 「これ、涼子にあげる。俺、カフェオレにする」


 そう言って持っていたマグカップをベッド横のサイドテーブルに置いてキッチンへ向かった。

 開け放されたドアからはキッチンまでが丸見えで、カウンターから洋司さんがコーヒーサーバーにカップをセットするのが見える。

 数秒して、ほろ苦いコーヒーの匂いに混じって、甘いミルクの匂いがしてくる。洋司さん、コーヒー苦手なんだ…

 ちょっと、かわいい…かも。

 なんて思って、コーヒーを口にしてフフっと笑みが漏れた。


 「…かっこ悪いとか思っただろ?」

 「え、いや! そんな!」


 いつの間にか、また寝室に戻ってきた洋司さんがマグカップを持ってベッド脇に腰を下ろした。

カップの中には、クリーム色のカフェオレが見えて、またクスリと笑ってしまいそうになる。


 「苦いの、ダメなんだよ」

 「そ、うなんですか? あれ、でも前にコーヒーショップで…」

 「あの店では、カフェモカ頼む事が多いんだけど…涼子がブラック頼んでるのに、なんとなく自分はカフェモカなんて言えなくて…」

 「…甘党ですか?」

 「…苦いのがダメなだけ」


 それを世間では甘党というんですよ。とは突っ込めず、マグカップを口に当てて笑いを隠した。

 うん、なんだか…前よりも近い気がする。距離じゃなくて、気持ちって言うか、心って言うか、そういうのが前よりも近くなっているように思う。


 「…なんかいいな」

 「ん?」

 「…好きな人が自分の部屋で…コーヒー飲んでるのって」

 「……」


 思わず黙ってしまった。

 洋司さんの言う“好きな人”が自分なんだと自覚したのは昨日だけれど、それを改めて実感する瞬間があるのがくすぐったくて、反応に困る。

 こういう時、世の中のリア充女子たちはどんなリアクションをするのが正解なんだろう?

 リア充であった経験なんてないから、とにかく困る。


 「あと、いい眺め」

 「ふぇ?」

 「白いシーツで身体隠して、俺の入れたコーヒーを飲む涼子…毎日だって、見ていられそう」


 ひょええぇ~~~~!!!

 どんな状況だよ、これ! っていうか、そんなまぶしそうな顔しないでぇー!

 幸せすぎて、はじけ飛びそう…

 カァッと熱の集まった顔がコーヒーの湯気でさらに熱くなった気がする。

 いや、逆かもしれない。むしろ、この際どっちでもいいのだけれど、とにかく苦いコーヒーも甘くなるような破壊力のある表情を向けてくる洋司さん。


 「…本当かわいい」


 コンと音を立ててサイドテーブルに置かれた洋司さんのマグカップと、洋司さんに奪われた私のマグカップ。

 甘いカフェオレの味が口に広がって、ゆっくりとまたベッドへ身体を横たえる結果になる。

 深くなるキスに、ぼぉーっとしてくる思考とふわふわとした気持ちのいい感覚。

 洋司さんのキスは、とにかく長くて甘くて溶けてしまいそうな感覚になる。
 自然と抜けていく力にゆっくりと身体を開かれていく。


 羽で触られているような撫でられ方でゾクゾクとした快感に肌が粟立ち、シーツを握る手に力が入る。

 昨夜、散々抱き潰されてくたくたになって眠った記憶があるだけに、またあの強烈な快感の波に追いやられるのかと思うと、胸のどこかで期待と不安が押し寄せてきた。

 極々自然な流れで、洋司さんが股の間に身体を納めると、触れてもいない秘部がクチュリと音を立てて少し開いたのが分かってしまう。

 昨夜の行為だけで、私の身体はすっかりとろけてしまったのだろうか。

 それとも、実は私がとっても変態で、その気になっただけで濡れてしまうような体質だったりするのだろうか?


 「んぁ! あぁっんぅ」

 「…くっ…痛くない?」

 「ん…痛く、はない…んぁ、はぁン」


 質量のある塊は、ゆっくりだけれど確かに奥へ奥へと挿入ってくる。

 心なしか昨晩よりも深くまで迫ってきている気がする。

 それが苦しいと思う反面、満たされた感覚もして握っていたシーツを離して、目の前にいる洋司さんの首に手を回した。

 昨晩も、最後には自分から洋司さんにしがみ付いて逃げようのない快感に必死で耐えていたっけ…。


 「…ん、涼子の中…気持ちいい」

 「ゃだぁ! んぁあっ」


 小刻みにゆっくりと動き始めた洋司さんに、自分の声とは思えないような甲高い声を浴びせて昨晩よりも奥で動く物体の存在に鳥肌を立てる。

 ゾクゾクとした電気の流れのような快感がいくつもいくつも迫ってきては小さく弾けた。これがイく感覚とは少し違うと理解したのは昨晩で、同時にこれが気持ちいいということだと理解したのも昨晩だ。

 汗で湿った肌がぴたりとくっついて、それすら気持ちがよくて腕に力が入る。


 耳元で、小さな洋司さんの声が聞こえる度に胸の中がキュゥっと締め付けられたように切なくて、「よーじさ、あぁ!」と舌っ足らずに名前を呼ぶ。

 呼んだ名前に反応するように、洋司さんがキスをしてくれると自分の中の熱い塊の形がくっきりと分かる。

 洋司さんいわく、これが“締め付ける”ということらしい。


 「んぁ、やンぅ! おっき…」

 「っく、涼子! 今、煽るな!…っふ、ん」


 ぐっと最奥まで突き入れられたかと思ったら、緩く優しい動きが激しく変わって中の塊もさらに硬度と質量が増していく。

 何度となく攻め立てられて、弾ける快感も大きくなってくると中を動く洋司さん自身を締め付けて腰が弓なりに浮き上がる。

 その浮き上がった腰に洋司さんの腕が絡められて抱きしめられたような状態で、ピクリと微かな動きを中で感じて、熱い塊に爆ぜたのが分かった。


 「ん…ぁあ、ふぁ…」

 「涼子、中動いてる」

 「や! 恥ずかし…いよ」


 まさか朝からこんな風になるなんて…世の中のリア充さんたちはみんなこうなんだろうか?

 でも、昨日も終わったと思ったらまた中で大きくなっていた気がする。

 さすがに昨日さんざんな目にあったし、朝くらいは大人しいんじゃないだろうか。

 と思ったのもつかの間で、昨晩と同じように私の中で再び硬度を取り戻し始めた塊にビクリと身体が反応してしまう。


 「ぁ…」

 「…ごめん、あと1回」

 「んぁ!」


 ズルリと抜けた塊をまたごそごそと準備して、濡れそぼった秘部に宛がわれた塊は、容赦なく最奥まで突きあがってくる。

 始めから激しい律動にもう声でしか反応できない私が解放されたのは、お昼を過ぎたあたりだった。




・ ◆ ・ ◆ ・ ◆ ・




 「…ははは、この年で腰が痛くなるなんて」


 ベッドにうつ伏せになって、お風呂の準備をする洋司さんを待っている。

 まさか、28年間守り続けた処女を捧げて、捧げた相手に翌日の朝また襲われて、腰がヘロヘロになるまで攻められるなんて、誰が想像しただろうか?

 若干、股もヒリヒリしているわけで、体液やら汗やらでべとべとの身体で人のベッドに横たわっているのもなんだか気が引けてしまう。

 私のせいではないと、全面的に言っておきたいけれど!


 「…涼子、風呂用意できたけど、入れそう?」

 「すみません! 大丈夫です」


 ひょっこりと顔を出した洋司さんがシーツで身体を隠す私を見て、眉毛を下げている。

 初心者にハードすぎたと後悔してくれているのだろうか?


 「40手前で、ここまで我慢がきかないとは思わなかった」

 「…私も、初めてでこんなになるもんだとは思ってませんでした」


 「申し訳ない」と言って肩を落とした洋司さんに苦笑いしか出てこないけれど、それさえも許せると思うのが恋人だからなんだろうなと思うのは、28年間の処女を捧げて初の彼氏をゲット出来たことから来る余裕だと思う。


 「一緒に入るか?」

 「ひょっ?! え、遠慮します!!」

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