28歳 喪女な私の愛され開発生活

甘噛屋

文字の大きさ
32 / 39
第五章 奪わせない愛し愛され開発生活

32

しおりを挟む
 色んな事が片付き始めて、私もようやく落ち着いてコーヒーを飲む時間がとれるようになった。

 こんな余裕は、いつぶりだろうかとさえ感じる。


 「先輩、撮影スケジュールの変更連絡来ていたので来週にずらしますね」

 「うん、見た見た。ありがとう」

 「飯塚さん、研究開発部からパッケージデザインの部署に引き継ぎ完了の連絡入ってます」

 「高木君ありがとー! デザイン部に連絡してデザインの進捗と完成予定日確認しておいて」


 小田ちゃんも、高木君もすっかり頼りになってて、高木君に関して言えば見違える程に激変していて感心させられるばかりでもある。


 「小田さん、後ろ髪少し出てますよ?」

 「え? ほんとだぁ~…っちょ!?」


 そんな二人の会話が横から聞こえて視界に写ったのは、高木君が腰を曲げて小田ちゃんの耳元に口を寄せて囁くところで…えぇーーー!? 待って、二人っていつの間にそんな関係になってたの?

 クスクス笑ってコップを片手に給湯室に向かった高木君の背中を、耳を抑えて赤くなりながら睨みつける小田ちゃんの姿で何が何だかよく分からない状況に目ん玉をひん剥いて驚いていると、赤いまんまの小田ちゃんが私の方を向いて「先輩、お昼は外行きましょう」と小さな声で誘ってくれた。

 うん、気になるから、外でゆっくりと話を聞こうじゃないか…。






 「先輩、気付きましたよね?」

 「まぁ…そりゃ、気付いちゃうよね?」


 「ですよね」って言いながら頬をほんのり赤く染めて俯いた小田ちゃんはものすっごくカワイイ乙女の顔をしていた。


 「その…いつから?」

 「…高木が変わってから、残業してる時に二人で終電逃した時があって…金曜日だったし、せっかくだからお酒飲みに行こうって……その、それから…で…」


 段々と尻すぼみしていく小田ちゃんの声は、なんだか少し後ろめたいような、歯切れの悪さを感じてしまう。

 日頃から社内恋愛は絶対しないと公言していただけに、今のこの状況に頭の整理がついていないっていったところなのかなぁ~…


 「でもいいじゃない! 二人ともうまくいってるみたいだし!」

 「…うまく、いってるんでしょうか?」

 「…だって付き合ってるんでしょ?」

 「…はっきり、とは…」

 「えっ?」


 え…あの、リアルの充実しすぎている若者たちがなってしまう、セフレという関係になってしまっているから小田ちゃんは後ろめたいのかしら?

 っていうか、自分の身近にそんな関係の部下がいるなんて想像するだけで…どんな顔して仕事すればいいんだろう。いや、普通でいいんだけどさ…なんか、ねぇ?


 「いえ、高木からはその…気持ちっていうか、そういうのは言われたんです」

 「…え?! 高木君は小田ちゃんが好きなのに、セフッ」

 「先輩! 声大きいです! …私もその時はどうしていいか分からなかったし、その…前に付き合ってた人に…振られてすぐだったりで、なんかもうよく分からなくって困ってたら…高木に言われたんです。『好きにさせてみせるから待ってろ』って…」

 「わぁお…」


 ひゃぁーーーーーっ!?

 た、高木君って結構男っぽいのね…。

 もっとなよなよっていうか、頼りないっていうか、ヘタレ?っぽいって勝手に思ってたけど、好きな相手に対してはそんなに男らしくいけるんだぁ~…。


 「で、小田ちゃんはどうなの?」

 「…そんなの…だから困ってるんです」


 運ばれてきたパスタを皿の上でくるくるとフォークに巻き付けながら、小田ちゃんは綺麗な形の眉毛を下げて少し考えてから口を開いた。


 「い、今更なんて言うんですか?! と、年下の男なんて初めてだし、どういう雰囲気で言うもんなんですか? っていうか、自分からなんて言ったこともないのに…」


 真っ赤な顔で早口言葉でも口にするような口調に、かわいいなぁと思いつつ、高木君は多分小田ちゃんの気持ちに気付きながらワザと待っているような気がする。

 うーん、悪い男だ。分かっていなければ、あんなふうに愛おしそうに笑ったりはしないと思うし…。

 あの笑い方は、洋司さんがたまに私に意地悪した時の面白がってる時の顔と同じだったし。って、こんなことが分かるようになったってことは、私は少し恋愛偏差値が上がったりしてるんだろうか?


 「…いいんじゃない? ちょっとくらい待たせてやっても。だって、向こうは小田ちゃんに好きになってもらえると思ってるからそんな強気なんでしょ? ちょっと焦らしても罰は当たらないんじゃない?」

 「せ、先輩…言うようになりましたね」


 小田ちゃんはちょっと困ったように笑ってパスタを一口、小さな口の中にしまいこんだ。


 そもそも、高木に小田ちゃんかぁ。
 いや、悪いわけじゃないんだが、最初の評価がなぁ。
 まぁ、変わってくれてる所を見ると、心底ダメな奴じゃないんだと思う。周りを見ているし、考え方も先を見越して二通り三通りと用意周到になった。
 能ある鷹はなんとやら。だったわけだけども、小田ちゃんを落とすとはなぁ。

 泣かせたら、ぶん殴る。



 
 「ところで、先輩」
 
 「ん?」

 「先輩は大丈夫なんですか?」
 

 小田ちゃんが、ほんのり赤い顔のまま今度は私の方へ話題をずらしてきた。
 ただ、小田ちゃんはこっちの話も気になっていたようで、分からないでもないなぁと思ってしまう。

 「んー…まぁ、多分?」

 「何の事か分かってるんですか?」

 「まぁ……例の受付の子でしょ? 確かに可愛かったしなぁ。なんだろ、守りたくなる系女子?」

 「もう! ふざけてるんですか? あのタイプの女はちゃんと対処しなきゃ面倒ですよ! 聞いた話だと、あの部長とは家同士が決めた婚約で既に日取りなんかも決まってるんですって。しかも、部長はその結婚を期に、重役への昇進がほぼ確定。親会社へ出向の話だって持ち掛けられているらしいです! 本当に、大丈夫なんですか?」

 「………小田ちゃん、探偵にでも転職したら?」

 小田ちゃんから出てくる言葉の数々は、多分知る人ぞ知る情報だと思う。その情報を知っているだなんて……前々から、顔が広いなぁとは思っていたけど、小田ちゃん……貴女、怖い子。

 
 「つってもねぇ。だって、本人が居ないわけだし、容易に連絡取れるような距離でもないし……帰ってきてから聞いたって」

 「甘い! 先輩、先手打たなきゃ! 絶対、痛い目見るんですから!」


 小田ちゃんは、運ばれてきたミルフィーユをザクザクを皿の上で一口大にして食べながら、ズイッと迫る勢いで忠告してくれる。

 痛い目と言われても、やっぱり本人に確認できない以上、どうやって先手を打てばいいのかなんて分かりもしない。
 そもそも、婚約者がいる時点で私に手を出すような、そんな薄情な人ではないと思う。洋司さんは、ちゃんとしてくれてる。気がする。

 モヤモヤとした気持ちのまま、コーヒーにいつも入れないミルクが渦を巻いて行くのを眺めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...