28歳 喪女な私の愛され開発生活

甘噛屋

文字の大きさ
33 / 39
第五章 奪わせない愛し愛され開発生活

33 ―神崎 side―

しおりを挟む
 予定よりも仕事が早くに片付いたおかげで、週末前に帰国出来た。

 ということは、予定よりも早く涼子の顔を見れるわけで俺としては頑張って仕事をこなした自分を褒めたいくらいだし、さっさとご褒美も欲しい。

 というか、涼子に会いたい。

 先に涼子の部署に顔を見せるか? いや、永田にどやされる気もするし…でも、まだギリギリ休憩時間なわけだし、仕事の邪魔をするわけでもないし…って、いい年の男が何を焦っているんだ。


 涼子に会いたい気持ちを抑えて、部署に居るであろう永田宛に連絡をいれた。


 「…あぁ、永田。今会社の近くまで戻ってきた。昼一ですぐにミーティングするから空いてる会議室を1つ抑えておいて欲しい」

 『洋司!』

 「ん? ……マッテオ?!」

 『洋司! 久しぶり!!』

 『なんで、マッテオがここにいるんだ?!』 

 『呼ばれたんだよー! 理由は知らないんだけど…あ! おばさんから伝言預かってるよ!』

 「『母さんから? ちょっと待て』 いや、こっちの話だ。また戻ってから話す」


 繋がったままだった永田との通話を切って、俺の母親からの伝言とやらを聞こうと視線を彼に移した。

 マッテオ・カンザキ・コロヴァティ。

 俺のイタリア人父の妹の息子で、俺の従兄弟に当たる。ミドルネームのカンザキは、彼の母が俺の母を溺愛しているお陰で、つけることになった。始めは母の名前をと言っていたんだが、さすがに同じ名前は…と母が辞退した。

 今はイタリアでモデルの仕事をしているはずなのに、なんでか俺の目の前にいる。

 濃い茶髪気味のブロンドに、グレーがかったグリーンの瞳と彫りの深い顔立ち。

 彼は完全にイタリア男の中では最高にセクシーで格好いい部類に入る。勿論、そんな男が日本に居れば男女問わずに誰もが振り返る程の美貌の持ち主でもあるわけで。

 数年ぶりに会った彼はまた一段と色っぽさが増しているような気もする。男の俺でも。クラッとするくらいだ…そんな気は一切ないがな。


 と、マッテオが日本に来た経緯を聞こうとしたところで、手の中で携帯が震えた。

 「…『マッテオ、ちょっと待て』 郁?」

 <兄さん?! 今どこにいるの?!>

 「…会社だ…なんだ、どうした?」

 <どうしたじゃない! 大変な事になってるの! 今日は会社には行かずにとりあえず在宅にでもして!>

 「そんなことできるわけないだろう? どういうことなのか、理由はまた話を聞くから」

 <あ、ちょっと! 兄さん、どうなっても知ら>


 妹であり、親友・横溝の嫁でもある郁の電話を途中で切り上げて話を途中で止めていたマッテオに先を促した。


 『それで、母さんがなんだって?』

 『今の郁? 明日、会いに行こうかなぁ~♪ あぁ、うん。“早く相手を連れて行かないと面倒な事に巻き込まれるぞ。手は早いうちに打ってしまいなさい”って伝えろって。なんのこと?』

 『…面倒なこと?』


 さっきの郁からの電話や母さんからの伝言内容に、神崎関係で面倒な事なんて1つくらいしか思いつかないが、俺自身はその関係のレースからは遠いはずだ。

 それに、あの人たちにはきちんと俺自身のことは俺自身で決めさせてもらうと言い切っているし…でも、それで済むような人でもないし…。

 嫌な胸騒ぎも感じるが、会社を休めるほど仕事が少ないわけでもない。


 『それで、お前はなんでここに来てるんだ?』

 『洋司への伝言と、ここでマネと待ち合わせなんだよ。なんでも、香水のモデルで俺が起用されてるみたいだから、その打ち合わせと明日からの撮影スケジュールの詳細とかスタッフとの顔合わせにね』

 『へぇ、マッテオも随分と顔広く活動してるんだな?』

 『う~ん、俺もなんでお声がかかったのか分からないんだよね。数年前に日本雑誌の広告にはなったけど1度だけだし…まぁ仕事がもらえるならどこにでも楽しんで行くけどね。あ! 今度洋司のランジェリーモデルもやろうか?』

 『…まぁ、考えておいてやるよ』


 マッテオを連れて会社のエントランスに入ったところで、エレベーターから駆け足でこちらに向かってくる横溝の姿を確認した。

 なんだ、今度は旦那の方が来るのか? 郁はいつも大袈裟すぎる。


 「洋司さん!!」

 「えっ?!」

 『百合恵!』


 うちの会社の受付が着る制服を着た、よく見知った顔の女が俺に抱きついて見上げて来る。

 何年か前に神崎の家の恒例行事で紹介があった顔だ。

 そして、その時にあの人が俺に寄越してきた…元婚約者。

 寺崎 百合恵。なんでこんな所に…。


 「あぁ、遅かった…」

 「洋司さん、なかなかお会いできないようなので、私から来てしまいました」

 「…来てって、どうして…」

 『マッテオ、予定通り着いたのね。よかった。これであなたの会いたかった人に会わせられそうだわ』

 『…俺の会いたかった人?』


 「ちょっと待て、なんの話をしてる? それより、寺崎さん離れてください」

 「洋司さん、離れてなんて…そんなつれないこと言わないでください」


 上目遣いに体を押し当てて抱き着く彼女に、周りの奇異の目が痛い。


 『ほら、マッテオ。彼女よ』

 『え?…―Giglio…Il mio giglio―』

 「涼子!」

 「あぁ~、最悪だ…」


 エントランス、入ってすぐの所で同じ部署の後輩と並んでこちらを見ている涼子。

 これでもかと目を見開いて、驚ききっているのが離れていても見て取れる。

 それもそのはずだ、ほぼ2週間ぶりの恋人が受付の女にガッツリ抱きつかれている現場を見て、驚かない方が驚く。

 無理矢理に引き離そうとしたところで、視界の端にいたマッテオが消えた。



 『あぁ、会いたかった! 君だ、見間違えるわけがない、俺の百合姫!』

 「え?! ちょ、え?!」

 「マ、マッテオ!?」



 もう、何が起こっているのか…整理する事すら困難だが…俺の傍にいたはずのマッテオはまっすぐに涼子の元へ向かって走り寄り、涼子の手をとって愛おしそうに口付けている。

 百合姫? 俺の? 本当に何が起こっているんだ。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...