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第五章 奪わせない愛し愛され開発生活
33 ―神崎 side―
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予定よりも仕事が早くに片付いたおかげで、週末前に帰国出来た。
ということは、予定よりも早く涼子の顔を見れるわけで俺としては頑張って仕事をこなした自分を褒めたいくらいだし、さっさとご褒美も欲しい。
というか、涼子に会いたい。
先に涼子の部署に顔を見せるか? いや、永田にどやされる気もするし…でも、まだギリギリ休憩時間なわけだし、仕事の邪魔をするわけでもないし…って、いい年の男が何を焦っているんだ。
涼子に会いたい気持ちを抑えて、部署に居るであろう永田宛に連絡をいれた。
「…あぁ、永田。今会社の近くまで戻ってきた。昼一ですぐにミーティングするから空いてる会議室を1つ抑えておいて欲しい」
『洋司!』
「ん? ……マッテオ?!」
『洋司! 久しぶり!!』
『なんで、マッテオがここにいるんだ?!』
『呼ばれたんだよー! 理由は知らないんだけど…あ! おばさんから伝言預かってるよ!』
「『母さんから? ちょっと待て』 いや、こっちの話だ。また戻ってから話す」
繋がったままだった永田との通話を切って、俺の母親からの伝言とやらを聞こうと視線を彼に移した。
マッテオ・カンザキ・コロヴァティ。
俺のイタリア人父の妹の息子で、俺の従兄弟に当たる。ミドルネームのカンザキは、彼の母が俺の母を溺愛しているお陰で、つけることになった。始めは母の名前をと言っていたんだが、さすがに同じ名前は…と母が辞退した。
今はイタリアでモデルの仕事をしているはずなのに、なんでか俺の目の前にいる。
濃い茶髪気味のブロンドに、グレーがかったグリーンの瞳と彫りの深い顔立ち。
彼は完全にイタリア男の中では最高にセクシーで格好いい部類に入る。勿論、そんな男が日本に居れば男女問わずに誰もが振り返る程の美貌の持ち主でもあるわけで。
数年ぶりに会った彼はまた一段と色っぽさが増しているような気もする。男の俺でも。クラッとするくらいだ…そんな気は一切ないがな。
と、マッテオが日本に来た経緯を聞こうとしたところで、手の中で携帯が震えた。
「…『マッテオ、ちょっと待て』 郁?」
<兄さん?! 今どこにいるの?!>
「…会社だ…なんだ、どうした?」
<どうしたじゃない! 大変な事になってるの! 今日は会社には行かずにとりあえず在宅にでもして!>
「そんなことできるわけないだろう? どういうことなのか、理由はまた話を聞くから」
<あ、ちょっと! 兄さん、どうなっても知ら>
妹であり、親友・横溝の嫁でもある郁の電話を途中で切り上げて話を途中で止めていたマッテオに先を促した。
『それで、母さんがなんだって?』
『今の郁? 明日、会いに行こうかなぁ~♪ あぁ、うん。“早く相手を連れて行かないと面倒な事に巻き込まれるぞ。手は早いうちに打ってしまいなさい”って伝えろって。なんのこと?』
『…面倒なこと?』
さっきの郁からの電話や母さんからの伝言内容に、神崎関係で面倒な事なんて1つくらいしか思いつかないが、俺自身はその関係のレースからは遠いはずだ。
それに、あの人たちにはきちんと俺自身のことは俺自身で決めさせてもらうと言い切っているし…でも、それで済むような人でもないし…。
嫌な胸騒ぎも感じるが、会社を休めるほど仕事が少ないわけでもない。
『それで、お前はなんでここに来てるんだ?』
『洋司への伝言と、ここでマネと待ち合わせなんだよ。なんでも、香水のモデルで俺が起用されてるみたいだから、その打ち合わせと明日からの撮影スケジュールの詳細とかスタッフとの顔合わせにね』
『へぇ、マッテオも随分と顔広く活動してるんだな?』
『う~ん、俺もなんでお声がかかったのか分からないんだよね。数年前に日本雑誌の広告にはなったけど1度だけだし…まぁ仕事がもらえるならどこにでも楽しんで行くけどね。あ! 今度洋司のランジェリーモデルもやろうか?』
『…まぁ、考えておいてやるよ』
マッテオを連れて会社のエントランスに入ったところで、エレベーターから駆け足でこちらに向かってくる横溝の姿を確認した。
なんだ、今度は旦那の方が来るのか? 郁はいつも大袈裟すぎる。
「洋司さん!!」
「えっ?!」
『百合恵!』
うちの会社の受付が着る制服を着た、よく見知った顔の女が俺に抱きついて見上げて来る。
何年か前に神崎の家の恒例行事で紹介があった顔だ。
そして、その時にあの人が俺に寄越してきた…元婚約者。
寺崎 百合恵。なんでこんな所に…。
「あぁ、遅かった…」
「洋司さん、なかなかお会いできないようなので、私から来てしまいました」
「…来てって、どうして…」
『マッテオ、予定通り着いたのね。よかった。これであなたの会いたかった人に会わせられそうだわ』
『…俺の会いたかった人?』
「ちょっと待て、なんの話をしてる? それより、寺崎さん離れてください」
「洋司さん、離れてなんて…そんなつれないこと言わないでください」
上目遣いに体を押し当てて抱き着く彼女に、周りの奇異の目が痛い。
『ほら、マッテオ。彼女よ』
『え?…―Giglio…Il mio giglio―』
「涼子!」
「あぁ~、最悪だ…」
エントランス、入ってすぐの所で同じ部署の後輩と並んでこちらを見ている涼子。
これでもかと目を見開いて、驚ききっているのが離れていても見て取れる。
それもそのはずだ、ほぼ2週間ぶりの恋人が受付の女にガッツリ抱きつかれている現場を見て、驚かない方が驚く。
無理矢理に引き離そうとしたところで、視界の端にいたマッテオが消えた。
『あぁ、会いたかった! 君だ、見間違えるわけがない、俺の百合姫!』
「え?! ちょ、え?!」
「マ、マッテオ!?」
もう、何が起こっているのか…整理する事すら困難だが…俺の傍にいたはずのマッテオはまっすぐに涼子の元へ向かって走り寄り、涼子の手をとって愛おしそうに口付けている。
百合姫? 俺の? 本当に何が起こっているんだ。
ということは、予定よりも早く涼子の顔を見れるわけで俺としては頑張って仕事をこなした自分を褒めたいくらいだし、さっさとご褒美も欲しい。
というか、涼子に会いたい。
先に涼子の部署に顔を見せるか? いや、永田にどやされる気もするし…でも、まだギリギリ休憩時間なわけだし、仕事の邪魔をするわけでもないし…って、いい年の男が何を焦っているんだ。
涼子に会いたい気持ちを抑えて、部署に居るであろう永田宛に連絡をいれた。
「…あぁ、永田。今会社の近くまで戻ってきた。昼一ですぐにミーティングするから空いてる会議室を1つ抑えておいて欲しい」
『洋司!』
「ん? ……マッテオ?!」
『洋司! 久しぶり!!』
『なんで、マッテオがここにいるんだ?!』
『呼ばれたんだよー! 理由は知らないんだけど…あ! おばさんから伝言預かってるよ!』
「『母さんから? ちょっと待て』 いや、こっちの話だ。また戻ってから話す」
繋がったままだった永田との通話を切って、俺の母親からの伝言とやらを聞こうと視線を彼に移した。
マッテオ・カンザキ・コロヴァティ。
俺のイタリア人父の妹の息子で、俺の従兄弟に当たる。ミドルネームのカンザキは、彼の母が俺の母を溺愛しているお陰で、つけることになった。始めは母の名前をと言っていたんだが、さすがに同じ名前は…と母が辞退した。
今はイタリアでモデルの仕事をしているはずなのに、なんでか俺の目の前にいる。
濃い茶髪気味のブロンドに、グレーがかったグリーンの瞳と彫りの深い顔立ち。
彼は完全にイタリア男の中では最高にセクシーで格好いい部類に入る。勿論、そんな男が日本に居れば男女問わずに誰もが振り返る程の美貌の持ち主でもあるわけで。
数年ぶりに会った彼はまた一段と色っぽさが増しているような気もする。男の俺でも。クラッとするくらいだ…そんな気は一切ないがな。
と、マッテオが日本に来た経緯を聞こうとしたところで、手の中で携帯が震えた。
「…『マッテオ、ちょっと待て』 郁?」
<兄さん?! 今どこにいるの?!>
「…会社だ…なんだ、どうした?」
<どうしたじゃない! 大変な事になってるの! 今日は会社には行かずにとりあえず在宅にでもして!>
「そんなことできるわけないだろう? どういうことなのか、理由はまた話を聞くから」
<あ、ちょっと! 兄さん、どうなっても知ら>
妹であり、親友・横溝の嫁でもある郁の電話を途中で切り上げて話を途中で止めていたマッテオに先を促した。
『それで、母さんがなんだって?』
『今の郁? 明日、会いに行こうかなぁ~♪ あぁ、うん。“早く相手を連れて行かないと面倒な事に巻き込まれるぞ。手は早いうちに打ってしまいなさい”って伝えろって。なんのこと?』
『…面倒なこと?』
さっきの郁からの電話や母さんからの伝言内容に、神崎関係で面倒な事なんて1つくらいしか思いつかないが、俺自身はその関係のレースからは遠いはずだ。
それに、あの人たちにはきちんと俺自身のことは俺自身で決めさせてもらうと言い切っているし…でも、それで済むような人でもないし…。
嫌な胸騒ぎも感じるが、会社を休めるほど仕事が少ないわけでもない。
『それで、お前はなんでここに来てるんだ?』
『洋司への伝言と、ここでマネと待ち合わせなんだよ。なんでも、香水のモデルで俺が起用されてるみたいだから、その打ち合わせと明日からの撮影スケジュールの詳細とかスタッフとの顔合わせにね』
『へぇ、マッテオも随分と顔広く活動してるんだな?』
『う~ん、俺もなんでお声がかかったのか分からないんだよね。数年前に日本雑誌の広告にはなったけど1度だけだし…まぁ仕事がもらえるならどこにでも楽しんで行くけどね。あ! 今度洋司のランジェリーモデルもやろうか?』
『…まぁ、考えておいてやるよ』
マッテオを連れて会社のエントランスに入ったところで、エレベーターから駆け足でこちらに向かってくる横溝の姿を確認した。
なんだ、今度は旦那の方が来るのか? 郁はいつも大袈裟すぎる。
「洋司さん!!」
「えっ?!」
『百合恵!』
うちの会社の受付が着る制服を着た、よく見知った顔の女が俺に抱きついて見上げて来る。
何年か前に神崎の家の恒例行事で紹介があった顔だ。
そして、その時にあの人が俺に寄越してきた…元婚約者。
寺崎 百合恵。なんでこんな所に…。
「あぁ、遅かった…」
「洋司さん、なかなかお会いできないようなので、私から来てしまいました」
「…来てって、どうして…」
『マッテオ、予定通り着いたのね。よかった。これであなたの会いたかった人に会わせられそうだわ』
『…俺の会いたかった人?』
「ちょっと待て、なんの話をしてる? それより、寺崎さん離れてください」
「洋司さん、離れてなんて…そんなつれないこと言わないでください」
上目遣いに体を押し当てて抱き着く彼女に、周りの奇異の目が痛い。
『ほら、マッテオ。彼女よ』
『え?…―Giglio…Il mio giglio―』
「涼子!」
「あぁ~、最悪だ…」
エントランス、入ってすぐの所で同じ部署の後輩と並んでこちらを見ている涼子。
これでもかと目を見開いて、驚ききっているのが離れていても見て取れる。
それもそのはずだ、ほぼ2週間ぶりの恋人が受付の女にガッツリ抱きつかれている現場を見て、驚かない方が驚く。
無理矢理に引き離そうとしたところで、視界の端にいたマッテオが消えた。
『あぁ、会いたかった! 君だ、見間違えるわけがない、俺の百合姫!』
「え?! ちょ、え?!」
「マ、マッテオ!?」
もう、何が起こっているのか…整理する事すら困難だが…俺の傍にいたはずのマッテオはまっすぐに涼子の元へ向かって走り寄り、涼子の手をとって愛おしそうに口付けている。
百合姫? 俺の? 本当に何が起こっているんだ。
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