煌めく世界のリバティリア

ル・ブラン

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「小さな味方」

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 メイド頭からの注意事項の説明を終え、ラターナの部屋にコルンと二人戻っていた。コルンが部屋の隅に少し緊張した様子で立っていると、「いいわ、そこにでもかけて」と声をかけるが、「いえ、私はこのままで、」と言う。

通常アルトマーレのメイドは、王族や客人の前、なにも任を命じられてないときは、慎ましく、邪魔にならない隅に立つと教えられているためである。

「そんなところに突っ立ってたら、気になってしょうがないから言ってるの!」若干怒りを込めて返答する。

「はっ、はい、失礼しますぅぅ……」ラターナはコルンにも聞こえるように大きくため息をついた。

「んで、前の酒場はどうしたの?」コルンは驚いて、「ご存じだったのですか?」と答える。

「それでは、私は、ラターナ様のご指名でここに?」 

「知らないわよ、偶々見かけただけ!あんたなんか指名するわけないじゃない……」そう少し冷たく突き放した。

「ですよね……」といいしょんぼりと下を向くコルンに少し罪悪感を覚えながらもその日はそれ以上の会話は控えるようにした。



 

 翌日ラターナは朝食の時間に30分遅れて起床した。慌てて、朝の支度を終え向かうと、もうとっくに全員揃っていて、全ての視線がラターナへ向いた。

ラターナは小さく「おはようございます。」と言い、席に付いた。コルンもラターナの席の後方にそっと立っていた。

「やっとお目覚めかしら?」と姉のキサリアが若干嫌味を込めて尋ねる。

「全く、ラターナは王女としての品格のかけらもないわ、周辺国に問題視される前に対処しなければ……」サナーラは怒りをあらわにして怒鳴りつける。

「まぁ、お母さま、ラターナはたった30分遅れただけですのよ、たった30分」と遅刻時間を強調する。

「二人ともその辺にしておけ」とギルシュが言いその後食べ終えるまで誰一人しゃべることはなかった。





 その後ギルシュは隣国の貴族と密会に行き、その日の夕食はギルシュ以外の三人で取っていた。

「さぁ、いただきますか、そうだお母さま!今朝の罰として、ラターナの夕食を抜きにしては?」とキサリアが提案し、

「さすがキサリア!名案ねコルン、ラターナの食事を下げなさい」と言うサナーラに、

「ですが、」と、戸惑いながら答える。

「いいわよ、コルン、命令通りになさい」と答えるラターナに深くお辞儀して、「失礼します」といい、食器を下げた。





 その後ラターナは入浴を終え、部屋に戻るとコルンが下げたはずの食事を銀色のトレーに乗せて持ってくる。ラターナは思わず、「ばか!ばれたらひどい目に遭わされるわよ」と言うが、

「罰なのはわかります。でもあの二人のやり方はひどいです。ギルシュ様の外出を狙って……」と力を込めて言う。

「もぅ、ヒヤヒヤさせないでよ」と少し怒るが、「私は姫様の味方です!」と言い張るコルンに小さく

「私の味方なんかしてもなにもないわよ……」と呟いた。



それからも、姉と母の仕打ちは続くが、コルンは何一つ変えることなくラターナの味方であり続け、一月が過ぎた。



 この日、アルトマーレで月白公国の客人との会談があり、その後サナーラは客人と会食をしていた。この日はコルンが配膳を担当していた。客人とサナーラの前に食事を運び終え、しばらくすると、サナーラが激怒した。



「ここへ来い、世話係」

「はいっ、」コルンは驚いて駆けつけた。

「お口に合いませんでしたか?」と問いかけるコルンに対し

「私の物は乳製品は抜けと伝えさせているはずだぞ!何をしている」怒るサナーラに

「ええっと、そのような報告は……」と小さく答えかけていると、

「ラターナめ、あれほど言っておいたのに、今度という今度は」と、サナーラが言うと、

「申し訳ございませんでした。姫から、しっかり伝達されていたにもかかわらず、私の不手際で……」と、とても大きな声で謝罪した。

珍しいコルンの大きな声に、さすがのサナーラも驚き、客人の宥めもあり、何とか、収束した。



 その後、世話係の休憩室で休んでいると話を聞きつけたラターナが走って飛び込んできた。

「あなた、バカじゃないなの!ほんとにバカ!」

「ええ、あのぉ、」というコルンに「バカよぉ、バカ、救いようのないバカよ、」と徐々に声が小さくなり、泣き崩れていった。



「お願いだから、私のために、そんな、もう自分を犠牲にしないで……」



初めて見たラターナの涙にコルンは自身のハンカチを差し出し、手を握り、「国を背負うラターナ様じゃなくて、一介の世話係の失態でよかった」と言うコルンにラターナは力強く抱き着いた。
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