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閑話 魔族陣営・魔王復活の儀式
第6話 魔王誘拐
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魔王クラスの力を持つ魔族の少女シャイタンは困惑していた。魔王復活の儀式が失敗し幼女になった元魔王ヤクサヤは、自身に何が起きたのか呑み込めず放心状態となっているし、儀式の開催をシャイタンに依頼してきた旧魔王軍の幹部達は失神して倒れてしまっていたからだ。
さてどうしたものかとシャイタンが悩んでいると、儀式失敗で起きた爆発の轟音を聞きつけて、周辺住人の魔族達が集まってくる喧噪が聞こえてきた。この場に残っていれば集まってくる魔族達に先ほどの爆発がなんなのか申し開きをしなければならないが、様々な経緯を説明するとなると少々面倒なので、その辺の事情説明は主催者である幹部達に任せたいところだ。儀式失敗の主因はシャイタンにあるかもしれないが、主催者責任くらいは彼らに負ってもらっても罰は当たらないだろう。魔族である彼女は神に祈りはしないし、罪と罰など気にも留めないのだが、そこは言葉のあやである。
問題なのは幼女になってしまった魔王ヤクサヤの存在だ。シャイタンは正直に言ってしまえば魔王の復活になんの思い入れもないのだが、儀式失敗の主因が自身にある以上、この場に彼女(彼?)を放置して逃げ出すのはあまりに無責任であろう。永い眠りから目覚めたばかりの魔王には現状が何もわかっていないはずであるが、理性的に考えれば魔王はシャイタンより遥かに歳を取っており、かつて魔族の頂点に君臨していた程の実力を鑑みれば、若輩であるシャイタンの手助け等必要ないはずである。しかし(見た目だけは)小さな少女であるヤクサヤにこの場を押し付けるのは心情的に気が引けたのだ。
シャイタンは放心しているヤクサヤの手を取り声をかけた。
「逃げますよ!一緒に来てください!」
「ぬおーなんだ小娘!そもそも誰だお前!?」
「その辺のことは後で説明するので、今は黙ってついて来てください!」
「ギャー魔族さらいー!」
「ちょっ、暴れないでくださいよ!」
「放せー!」
予想外に抵抗する魔王と格闘していると、集まってきた魔族達の声がいよいよ近付いてくる。事情を説明している時間はないため、シャイタンは思い切って強攻策に出た。
「せいっ!」
<ドスッ>
「ぐえー・・・。」
シャイタンは魔王のお腹に当身を入れて気絶させたのだ。
力を失ってうなだれた魔王を小脇に抱え、少女は夜の帳へと駆けだした。
「うわっ遺跡が壊れてる!何やってんだあんた達?」
彼女が遺跡を脱出すると同時にそんな声が聞こえたが、間一髪のところであったなと少女はその小さな胸をなでおろしたのだった。
遺跡を後にし、とりあえず自身の家へと向かっていたシャイタンだが、危機を脱し気持ちが落ち着いてきたところで1つの疑問が浮かんでいた。魔王クラスの力を持つと評されているシャイタンではあるが、それを差し引いても歴戦の魔王であるヤクサヤが戦闘経験もない少女の当身を無防備に受け、あまつさえ一撃で気絶する等という事があるだろうか、と。端的に言えば弱すぎるのだ。
シャイタンはぐったりしている魔王が少し心配になり、ふーっとため息を漏らした。
「儀式失敗の影響ですかねぇ。」
「もう食べられない・・・むにゃむにゃ。」
シャイタンが独り言を呟くと、魔王はびっくりするほどテンプレな寝言を返した。
「この様子なら深刻なダメージはなさそうですね。」
本来は自身の祖父より遥かに年上の爺さんだと頭では理解していたが、魔王の呑気な寝言を聞いてほっこりしてしまうシャイタンだった。
魔王復活の儀式を安請け合いしたばかりに変な騒動に巻き込まれてしまい、徐々に泥濘に嵌っていく様な感覚を覚えるシャイタンだったが、平坦で代り映えのしない日常を送っていた魔族の少女は、刺激的な体験の予感に心ならずも高揚感を覚えるのだった。
さてどうしたものかとシャイタンが悩んでいると、儀式失敗で起きた爆発の轟音を聞きつけて、周辺住人の魔族達が集まってくる喧噪が聞こえてきた。この場に残っていれば集まってくる魔族達に先ほどの爆発がなんなのか申し開きをしなければならないが、様々な経緯を説明するとなると少々面倒なので、その辺の事情説明は主催者である幹部達に任せたいところだ。儀式失敗の主因はシャイタンにあるかもしれないが、主催者責任くらいは彼らに負ってもらっても罰は当たらないだろう。魔族である彼女は神に祈りはしないし、罪と罰など気にも留めないのだが、そこは言葉のあやである。
問題なのは幼女になってしまった魔王ヤクサヤの存在だ。シャイタンは正直に言ってしまえば魔王の復活になんの思い入れもないのだが、儀式失敗の主因が自身にある以上、この場に彼女(彼?)を放置して逃げ出すのはあまりに無責任であろう。永い眠りから目覚めたばかりの魔王には現状が何もわかっていないはずであるが、理性的に考えれば魔王はシャイタンより遥かに歳を取っており、かつて魔族の頂点に君臨していた程の実力を鑑みれば、若輩であるシャイタンの手助け等必要ないはずである。しかし(見た目だけは)小さな少女であるヤクサヤにこの場を押し付けるのは心情的に気が引けたのだ。
シャイタンは放心しているヤクサヤの手を取り声をかけた。
「逃げますよ!一緒に来てください!」
「ぬおーなんだ小娘!そもそも誰だお前!?」
「その辺のことは後で説明するので、今は黙ってついて来てください!」
「ギャー魔族さらいー!」
「ちょっ、暴れないでくださいよ!」
「放せー!」
予想外に抵抗する魔王と格闘していると、集まってきた魔族達の声がいよいよ近付いてくる。事情を説明している時間はないため、シャイタンは思い切って強攻策に出た。
「せいっ!」
<ドスッ>
「ぐえー・・・。」
シャイタンは魔王のお腹に当身を入れて気絶させたのだ。
力を失ってうなだれた魔王を小脇に抱え、少女は夜の帳へと駆けだした。
「うわっ遺跡が壊れてる!何やってんだあんた達?」
彼女が遺跡を脱出すると同時にそんな声が聞こえたが、間一髪のところであったなと少女はその小さな胸をなでおろしたのだった。
遺跡を後にし、とりあえず自身の家へと向かっていたシャイタンだが、危機を脱し気持ちが落ち着いてきたところで1つの疑問が浮かんでいた。魔王クラスの力を持つと評されているシャイタンではあるが、それを差し引いても歴戦の魔王であるヤクサヤが戦闘経験もない少女の当身を無防備に受け、あまつさえ一撃で気絶する等という事があるだろうか、と。端的に言えば弱すぎるのだ。
シャイタンはぐったりしている魔王が少し心配になり、ふーっとため息を漏らした。
「儀式失敗の影響ですかねぇ。」
「もう食べられない・・・むにゃむにゃ。」
シャイタンが独り言を呟くと、魔王はびっくりするほどテンプレな寝言を返した。
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本来は自身の祖父より遥かに年上の爺さんだと頭では理解していたが、魔王の呑気な寝言を聞いてほっこりしてしまうシャイタンだった。
魔王復活の儀式を安請け合いしたばかりに変な騒動に巻き込まれてしまい、徐々に泥濘に嵌っていく様な感覚を覚えるシャイタンだったが、平坦で代り映えのしない日常を送っていた魔族の少女は、刺激的な体験の予感に心ならずも高揚感を覚えるのだった。
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