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第35話 二人だけの秘密
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「殿下、もう少しだけこのまま……」
帰り道にある寂れた小公園。夜も更けてきたせいか、人の気配が途絶えている。リオンはエデンと並んで腰掛け、胸の内側から湧き上がる想いを押し殺すように息をつく。
「王宮に戻れば、また周囲の目を意識しなきゃいけない……せめて、今は二人だけでいさせてください」
その言葉に、エデンは少し恥ずかしそうに目を逸らす。普段なら王宮で堂々としている彼も、外では表情を隠す手段があまりないのだ。
「……好き勝手言いやがって。俺も少し疲れた。ここで休もう」
エデンが認めるように小さく頷き、リオンはほっと笑みをこぼす。わずかな時間、二人だけの秘密の空間が与えられたようで、胸の奥が温まる。
「殿下、今日は本当にありがとうございました。一日中一緒に歩けて、僕はとても幸せでした」
リオンが素直に気持ちを伝えると、エデンは少し顔を赤らめつつ、あくまで強気を崩さない口調で答える。
「別にお前のためじゃない。俺が気晴らしをしたかっただけだ」
「そう……ですね。僕も殿下が楽しかったなら、嬉しいです」
リオンが頬を染めながら言うと、エデンは無言でリオンの手をそっと握る。その温もりにリオンは驚きながらも、抵抗することなく手を重ね返す。
「……今はいい。誰もいない」
エデンの小さな声に、リオンの胸は高鳴る。王宮では絶対に見せない、彼の素直な姿だ。こうして夜の暗がりに紛れてこそ、初めて触れられるエデンの一面を感じる。
「殿下は……自分の時間が足りないでしょうね。仕事も多いし、周りの期待も大きいし」
「そうだな。時々、自分が何をしているのか分からなくなる。俺は一体、王族としての役割を果たしたいのか、それとも自由になりたいのか……」
エデンの呟きに、リオンは手をぎゅっと握りしめる。夜風が吹き、ふたりのマントを揺らす。月の明かりだけが、公園の片隅を照らしていた。
「僕、殿下がどんな道を選んでも、ついていきます。王家の責務を全うしたいなら、それを支えたい。もし本当に自由を求めるのなら、その手助けがしたい」
リオンの言葉に、エデンはかすかに苦笑を浮かべる。
「お前は自分の人生をないがしろにしすぎだ。……でも、そんなバカさ加減が嫌いじゃない」
エデンがリオンの手を引き寄せ、肩を並べるように座り直す。二人の距離は密着するほど近い。リオンは急に胸がドキドキして言葉を失うが、エデンは穏やかな口調で続ける。
「ありがとう。俺は……まだ何も決められないが、こうしてお前と一緒にいられるなら、悪くないと思う」
それはエデンが見せる、精一杯の優しさだった。リオンはその言葉を噛み締めるように胸に刻み、エデンの肩にもたれる。
「僕も、殿下とこうやって時間を共有できるなら……それだけで十分です」
闇夜の小公園。人目を気にせず触れ合えるひとときが、二人の秘密となる。王宮に戻ればまた多くの壁があるが、今夜だけは互いの温もりを確かめ合うことを許される。そんな甘く切ない時間が、二人の絆をさらに深めていくのだった。
帰り道にある寂れた小公園。夜も更けてきたせいか、人の気配が途絶えている。リオンはエデンと並んで腰掛け、胸の内側から湧き上がる想いを押し殺すように息をつく。
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その言葉に、エデンは少し恥ずかしそうに目を逸らす。普段なら王宮で堂々としている彼も、外では表情を隠す手段があまりないのだ。
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「殿下、今日は本当にありがとうございました。一日中一緒に歩けて、僕はとても幸せでした」
リオンが素直に気持ちを伝えると、エデンは少し顔を赤らめつつ、あくまで強気を崩さない口調で答える。
「別にお前のためじゃない。俺が気晴らしをしたかっただけだ」
「そう……ですね。僕も殿下が楽しかったなら、嬉しいです」
リオンが頬を染めながら言うと、エデンは無言でリオンの手をそっと握る。その温もりにリオンは驚きながらも、抵抗することなく手を重ね返す。
「……今はいい。誰もいない」
エデンの小さな声に、リオンの胸は高鳴る。王宮では絶対に見せない、彼の素直な姿だ。こうして夜の暗がりに紛れてこそ、初めて触れられるエデンの一面を感じる。
「殿下は……自分の時間が足りないでしょうね。仕事も多いし、周りの期待も大きいし」
「そうだな。時々、自分が何をしているのか分からなくなる。俺は一体、王族としての役割を果たしたいのか、それとも自由になりたいのか……」
エデンの呟きに、リオンは手をぎゅっと握りしめる。夜風が吹き、ふたりのマントを揺らす。月の明かりだけが、公園の片隅を照らしていた。
「僕、殿下がどんな道を選んでも、ついていきます。王家の責務を全うしたいなら、それを支えたい。もし本当に自由を求めるのなら、その手助けがしたい」
リオンの言葉に、エデンはかすかに苦笑を浮かべる。
「お前は自分の人生をないがしろにしすぎだ。……でも、そんなバカさ加減が嫌いじゃない」
エデンがリオンの手を引き寄せ、肩を並べるように座り直す。二人の距離は密着するほど近い。リオンは急に胸がドキドキして言葉を失うが、エデンは穏やかな口調で続ける。
「ありがとう。俺は……まだ何も決められないが、こうしてお前と一緒にいられるなら、悪くないと思う」
それはエデンが見せる、精一杯の優しさだった。リオンはその言葉を噛み締めるように胸に刻み、エデンの肩にもたれる。
「僕も、殿下とこうやって時間を共有できるなら……それだけで十分です」
闇夜の小公園。人目を気にせず触れ合えるひとときが、二人の秘密となる。王宮に戻ればまた多くの壁があるが、今夜だけは互いの温もりを確かめ合うことを許される。そんな甘く切ない時間が、二人の絆をさらに深めていくのだった。
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