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第34話 仮面と素顔
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「殿下、あそこの路地は少し狭いですが面白いお店があるそうです」
リオンは地元の人に教えてもらった小道を指さす。エデンは好奇心を掻き立てられた様子で、フードを直しながらその路地へ進んだ。人通りは少なく、昔からの風情を残す建物がひしめいている。
「こんな場所があるとはな。王宮では聞いたこともない」
エデンは小さく息を吐き、目を細める。ふと、古びた看板を掲げた仮面屋が目に留まった。その店先には奇妙な形の面がいくつも並んでいる。鮮やかな塗装が施され、中には怪しげな雰囲気を漂わせるものもある。
「殿下、見てください。こんな仮面、初めて見ました」
リオンが手に取ったのは、優雅な色合いの仮面。おそらく仮面舞踏会などで使われるものだろう。細かな装飾が施され、持ち手までついている。
「仮面か……俺たちには必要ないな」
エデンは皮肉っぽく笑う。日頃から王族として仮面のように表情を隠している自覚があるのかもしれない。リオンは複雑な想いでそれを聞き、少し切ない顔をする。
「殿下、もし王宮での殿下が仮面をつけているとしたら、ここではその仮面を外せるでしょうか」
すぐ隣に立つリオンの問いに、エデンは困惑気味に振り返る。人目を気にせず歩き回れる城下町でさえ、エデンは必ずどこかで王族としての自覚を手放せずにいるようだ。
「さあな。俺にも分からない。王族として生まれたからには、常に誰かの視線を意識しなければならない。それは、仮面を外すより難しいだろう」
「……僕は、殿下に仮面を外してほしいと思っています。例え少しの間でも、本当の殿下の姿を見せてくれたら嬉しい」
リオンの素直すぎる言葉に、エデンは一瞬言葉を失う。王宮で鍛えられた緊張の糸を緩めるなど、考えたこともなかった。だが、リオンの瞳はまっすぐで、エデンに嘘をつかせない力を持っているように思える。
「お前は……本当に不思議だ。俺に何かを強要するわけじゃないのに、その瞳で見つめられると、誤魔化しが通じない気がする」
エデンがそう呟くと、リオンは照れくさそうに微笑む。
「僕はただ、殿下を知りたいだけです。笑うところも、怒るところも、悲しむところも。全部を見せてほしいから」
「……俺が悲しんでいる姿など見たいか?」
エデンの言葉はどこか空虚だ。それでもリオンは、ためらわずに頷いた。
「見たいです。というより、知りたい。殿下がどんなときに悲しくて、どうすれば少しは和らげられるのか。それを知らないままで傍にいるなんて、僕にはできません」
エデンは驚きと戸惑いが入り混じった表情でリオンを見つめる。誰もが王子としての完璧さを期待し、弱みなど求めたことはなかった。だが、この青年だけは、その弱さごと受け止めたいと言っている。
「リオン……」
その呼びかけに、リオンは微笑んで小さく首を傾げる。外せない仮面があるのなら、少しだけ隙間をあけてほしい――そう訴える瞳がそこにあった。
城下町の一角。並んだ仮面が見下ろす中で、エデンは何も言わずリオンの手を取り、再び街の通りへと戻っていく。仮面を外せる日はいつか来るのか――二人はそこにささやかな希望を見出しながら、小さな冒険を続けていた。
リオンは地元の人に教えてもらった小道を指さす。エデンは好奇心を掻き立てられた様子で、フードを直しながらその路地へ進んだ。人通りは少なく、昔からの風情を残す建物がひしめいている。
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「殿下、もし王宮での殿下が仮面をつけているとしたら、ここではその仮面を外せるでしょうか」
すぐ隣に立つリオンの問いに、エデンは困惑気味に振り返る。人目を気にせず歩き回れる城下町でさえ、エデンは必ずどこかで王族としての自覚を手放せずにいるようだ。
「さあな。俺にも分からない。王族として生まれたからには、常に誰かの視線を意識しなければならない。それは、仮面を外すより難しいだろう」
「……僕は、殿下に仮面を外してほしいと思っています。例え少しの間でも、本当の殿下の姿を見せてくれたら嬉しい」
リオンの素直すぎる言葉に、エデンは一瞬言葉を失う。王宮で鍛えられた緊張の糸を緩めるなど、考えたこともなかった。だが、リオンの瞳はまっすぐで、エデンに嘘をつかせない力を持っているように思える。
「お前は……本当に不思議だ。俺に何かを強要するわけじゃないのに、その瞳で見つめられると、誤魔化しが通じない気がする」
エデンがそう呟くと、リオンは照れくさそうに微笑む。
「僕はただ、殿下を知りたいだけです。笑うところも、怒るところも、悲しむところも。全部を見せてほしいから」
「……俺が悲しんでいる姿など見たいか?」
エデンの言葉はどこか空虚だ。それでもリオンは、ためらわずに頷いた。
「見たいです。というより、知りたい。殿下がどんなときに悲しくて、どうすれば少しは和らげられるのか。それを知らないままで傍にいるなんて、僕にはできません」
エデンは驚きと戸惑いが入り混じった表情でリオンを見つめる。誰もが王子としての完璧さを期待し、弱みなど求めたことはなかった。だが、この青年だけは、その弱さごと受け止めたいと言っている。
「リオン……」
その呼びかけに、リオンは微笑んで小さく首を傾げる。外せない仮面があるのなら、少しだけ隙間をあけてほしい――そう訴える瞳がそこにあった。
城下町の一角。並んだ仮面が見下ろす中で、エデンは何も言わずリオンの手を取り、再び街の通りへと戻っていく。仮面を外せる日はいつか来るのか――二人はそこにささやかな希望を見出しながら、小さな冒険を続けていた。
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