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第33話 城下町への小旅行
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「殿下、こちらのマントをどうぞ」
リオンは手際よくマントをエデンに渡す。二人は王宮を抜け出し、城下町へと足を運ぼうとしていた。もちろん、身分を隠すため、エデンは平民服に近い質素な装いをしている。
「まさか、こんな形で城下へ行くことになるとはな」
エデンがぼやくように言うが、その声にはどこか弾む色が混じる。日々の政務と周囲の圧力から解放され、少しでも自由な時間を過ごしたいという思いがあった。
「僕も、殿下とこうして街を散策するなんて思ってもみませんでした。……とても楽しみです」
リオンは素直に笑みを浮かべる。いつもは王宮の華やかな世界にいるエデンが、普通の人々が暮らす街並みに足を運ぶ。そこには何か新しい発見があるかもしれない。
「よし、行くか」
エデンはフードをすっぽりかぶり、リオンと並んで城門から外へ出る。護衛を最小限に絞り、遠くから見守る形にしてもらっている。二人だけで歩くことにこそ意味があるのだ。
城下町へ降りると、石畳の道には多くの露店が並び、活気ある声が飛び交う。リオンは周りの様子に興奮しつつ、エデンの顔色を伺う。
「殿下、大丈夫ですか。人混みが辛くはないですか」
「心配しすぎだ。こうして歩いていると、俺だと気づく者はいないだろう」
エデンはフードを深く被りながらも、目が輝いている。新鮮な野菜や果物、雑貨が山積みになった露店を見ては、時折足を止めて興味を示す。
「リオン、あれは何だ。あんな菓子は王宮では見たことがない」
エデンが指さしたのは、街の菓子職人が売っている素朴な焼き菓子だ。リオンは嬉しそうに微笑んで、数枚買い求める。
「これをちぎって食べるんです。甘くて美味しいですよ」
「そうか……ここで食べてもいいのか」
エデンが恐る恐る口に運ぶと、その素朴な甘さに目を見開く。王宮では出てこないような庶民的な味が、かえって新鮮で美味しく感じられたようだ。
「……悪くない」
その一言に、リオンは胸が温かくなる。エデンが笑ってくれるだけで、なんだか幸せな気分になってしまう。
さらに二人は市場を回り、小さな小物屋にも立ち寄る。エデンは普段使う機会がなさそうな安価な装飾品を手にとっては不思議そうに眺め、リオンがその用途を説明しては笑い合う。
「殿下、こういう時間を一緒に過ごせて嬉しいです。……あまり長くはいられないでしょうけど」
リオンはふと寂しげな表情になる。王宮に戻ればまた、二人の間には王族と貴族という壁が立ちはだかる。今は、それを忘れているだけだ。
「お前といるのは不思議と気が楽だ。……王宮では味わえない自由を感じる」
エデンの言葉に、リオンの瞳が潤む。ほんの少しの間でも、エデンが素直に笑ってくれるなら、自分がいる意味は充分にあるのだと思えた。
「ありがとう、殿下」
リオンは心の底から微笑む。エデンは気恥ずかしそうに視線を逸らし、再び露店の並ぶ通りへ足を向ける。
こうして二人は、束の間の小旅行を楽しみ、城下町の賑わいの中でささやかな幸せを噛み締めていたのだった。
リオンは手際よくマントをエデンに渡す。二人は王宮を抜け出し、城下町へと足を運ぼうとしていた。もちろん、身分を隠すため、エデンは平民服に近い質素な装いをしている。
「まさか、こんな形で城下へ行くことになるとはな」
エデンがぼやくように言うが、その声にはどこか弾む色が混じる。日々の政務と周囲の圧力から解放され、少しでも自由な時間を過ごしたいという思いがあった。
「僕も、殿下とこうして街を散策するなんて思ってもみませんでした。……とても楽しみです」
リオンは素直に笑みを浮かべる。いつもは王宮の華やかな世界にいるエデンが、普通の人々が暮らす街並みに足を運ぶ。そこには何か新しい発見があるかもしれない。
「よし、行くか」
エデンはフードをすっぽりかぶり、リオンと並んで城門から外へ出る。護衛を最小限に絞り、遠くから見守る形にしてもらっている。二人だけで歩くことにこそ意味があるのだ。
城下町へ降りると、石畳の道には多くの露店が並び、活気ある声が飛び交う。リオンは周りの様子に興奮しつつ、エデンの顔色を伺う。
「殿下、大丈夫ですか。人混みが辛くはないですか」
「心配しすぎだ。こうして歩いていると、俺だと気づく者はいないだろう」
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「リオン、あれは何だ。あんな菓子は王宮では見たことがない」
エデンが指さしたのは、街の菓子職人が売っている素朴な焼き菓子だ。リオンは嬉しそうに微笑んで、数枚買い求める。
「これをちぎって食べるんです。甘くて美味しいですよ」
「そうか……ここで食べてもいいのか」
エデンが恐る恐る口に運ぶと、その素朴な甘さに目を見開く。王宮では出てこないような庶民的な味が、かえって新鮮で美味しく感じられたようだ。
「……悪くない」
その一言に、リオンは胸が温かくなる。エデンが笑ってくれるだけで、なんだか幸せな気分になってしまう。
さらに二人は市場を回り、小さな小物屋にも立ち寄る。エデンは普段使う機会がなさそうな安価な装飾品を手にとっては不思議そうに眺め、リオンがその用途を説明しては笑い合う。
「殿下、こういう時間を一緒に過ごせて嬉しいです。……あまり長くはいられないでしょうけど」
リオンはふと寂しげな表情になる。王宮に戻ればまた、二人の間には王族と貴族という壁が立ちはだかる。今は、それを忘れているだけだ。
「お前といるのは不思議と気が楽だ。……王宮では味わえない自由を感じる」
エデンの言葉に、リオンの瞳が潤む。ほんの少しの間でも、エデンが素直に笑ってくれるなら、自分がいる意味は充分にあるのだと思えた。
「ありがとう、殿下」
リオンは心の底から微笑む。エデンは気恥ずかしそうに視線を逸らし、再び露店の並ぶ通りへ足を向ける。
こうして二人は、束の間の小旅行を楽しみ、城下町の賑わいの中でささやかな幸せを噛み締めていたのだった。
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