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「シロエ様ー! がんばれー!」
揺れる松明の光の中、周囲の野次馬からそんな声援が飛ぶ。どう考えても今、わたしは王国施設を破壊しようとする“犯罪者”のような立ち位置であるはずなのに、なぜか人々は応援してくる。あるいは単純な興味本位かもしれないが、こちらとしては理解できない。
「応援なんていらないんだよ……わたしはあんた達を不幸にしたいんだから!」
思わず心の声が口をついて出る。その言葉に周囲が一瞬静まるものの、すぐに「ああ、シロエ様はまた冗談を」「彼女なりの優しさだ」なんて、おかしな解釈をされてしまう。
「それが……違うのに! 本気で悪事を働いてるんだから! なんで周りは気づいてくれないの!?」
わたしは内心で絶叫する。怒りや悲しみや虚しさが混然となり、自分が何をしているのかさえ、わからなくなりそうだ。そんな混乱の中で、騎士団長がさらに厳格な声を張り上げる。
「これ以上、破壊行為を続けるなら、我々も容赦なく鎮圧するぞ!」
「……どうして、そうやってわたしを守るような言い回しをするの? さっさと“捕まえる”とか“斬る”とか言えばいいのに!」
わたしの言葉に、騎士団長は苦い顔をする。しかし彼の背後には民衆がたくさん見ている。もし公爵家の令嬢、しかも王子の婚約者候補を傷つけるような行為をしたら、どんな事態になるか。騎士団長はわかっているのだろう。わたしを危害から守るためでもあり、王子の立場を守るためでもあるのだ。
「……ちくしょう、本当にわたしはどうしようもないな。こんなに大勢の騎士を相手にして、みんなから応援されて、何が悪役なんだ」
ぽろっと弱音が漏れそうになる。わたしはぐっと唇を噛みしめ、必死に涙をこらえる。泣いてる場合じゃない。今さらやめても、ここまで来たら意味がない。
「シロエ様、もう充分です! 何か理由があってのことなのでしょう!? 事情を話していただければ――」
騎士の一人が言葉をかけてくるが、わたしは耳を貸さない。事情なんて言えるわけがない。言ったところで、やめさせられるだけだ。そうなれば婚約破棄が遠のくだけ。
「ほっといて! わたしは……わたしはこの国を滅茶苦茶にしてやるんだから!」
わたしが叫んだ瞬間、民衆の中から歓声が上がる。「やれやれー!」なんて面白半分のものも混じっていて、完全にカオスな状況だ。まるで一大イベントを見に来ているかのような熱狂だが、わたしとしては絶望に近い気分に陥る。
「どうしてこうなるの……。わたしは嫌われたいだけなのに……」
そんなとき、不意に人混みがザワリと揺れた。遠巻きにしていた人々が次々と道を空けていく。わたしは嫌な予感を覚えつつ、その方向を振り返る。すると、そこには見慣れた銀髪の姿――王子、ルーカスがいた。
「ルーカス……」
王子はゆっくりとこちらへ近づいてくる。周囲の騎士たちが慌てて頭を下げ、「殿下……」と声をかけるが、彼はそれには応えず、ただわたしを見つめている。その瞳はどこか揺れを帯びているようで、まるで覚悟を決めたような色を帯びていた。
「シロエ。こんなに大きな騒ぎをして、何がしたい?」
王子の静かな声に、わたしの胸がドキリと高鳴る。何度も聞かれてきた問いだ。でも今さら答えなんて……。
「……決まってるでしょ。あんたに嫌われたいのよ、わたしは」
言い放つわたしの声は、震えていた。王子がどんな反応をするかを考えるだけで、なぜか足元がふらつきそうになる。
「そうか。なら、もっと早く言ってくれればよかったのに」
王子はそう言うと、なぜか悲しげな微笑を浮かべる。人々の期待や勘違い、騎士団の困惑など、すべてがごちゃ混ぜになったこの場で――わたしは王子の視線を正面から受け止めるしかなかった。
揺れる松明の光の中、周囲の野次馬からそんな声援が飛ぶ。どう考えても今、わたしは王国施設を破壊しようとする“犯罪者”のような立ち位置であるはずなのに、なぜか人々は応援してくる。あるいは単純な興味本位かもしれないが、こちらとしては理解できない。
「応援なんていらないんだよ……わたしはあんた達を不幸にしたいんだから!」
思わず心の声が口をついて出る。その言葉に周囲が一瞬静まるものの、すぐに「ああ、シロエ様はまた冗談を」「彼女なりの優しさだ」なんて、おかしな解釈をされてしまう。
「それが……違うのに! 本気で悪事を働いてるんだから! なんで周りは気づいてくれないの!?」
わたしは内心で絶叫する。怒りや悲しみや虚しさが混然となり、自分が何をしているのかさえ、わからなくなりそうだ。そんな混乱の中で、騎士団長がさらに厳格な声を張り上げる。
「これ以上、破壊行為を続けるなら、我々も容赦なく鎮圧するぞ!」
「……どうして、そうやってわたしを守るような言い回しをするの? さっさと“捕まえる”とか“斬る”とか言えばいいのに!」
わたしの言葉に、騎士団長は苦い顔をする。しかし彼の背後には民衆がたくさん見ている。もし公爵家の令嬢、しかも王子の婚約者候補を傷つけるような行為をしたら、どんな事態になるか。騎士団長はわかっているのだろう。わたしを危害から守るためでもあり、王子の立場を守るためでもあるのだ。
「……ちくしょう、本当にわたしはどうしようもないな。こんなに大勢の騎士を相手にして、みんなから応援されて、何が悪役なんだ」
ぽろっと弱音が漏れそうになる。わたしはぐっと唇を噛みしめ、必死に涙をこらえる。泣いてる場合じゃない。今さらやめても、ここまで来たら意味がない。
「シロエ様、もう充分です! 何か理由があってのことなのでしょう!? 事情を話していただければ――」
騎士の一人が言葉をかけてくるが、わたしは耳を貸さない。事情なんて言えるわけがない。言ったところで、やめさせられるだけだ。そうなれば婚約破棄が遠のくだけ。
「ほっといて! わたしは……わたしはこの国を滅茶苦茶にしてやるんだから!」
わたしが叫んだ瞬間、民衆の中から歓声が上がる。「やれやれー!」なんて面白半分のものも混じっていて、完全にカオスな状況だ。まるで一大イベントを見に来ているかのような熱狂だが、わたしとしては絶望に近い気分に陥る。
「どうしてこうなるの……。わたしは嫌われたいだけなのに……」
そんなとき、不意に人混みがザワリと揺れた。遠巻きにしていた人々が次々と道を空けていく。わたしは嫌な予感を覚えつつ、その方向を振り返る。すると、そこには見慣れた銀髪の姿――王子、ルーカスがいた。
「ルーカス……」
王子はゆっくりとこちらへ近づいてくる。周囲の騎士たちが慌てて頭を下げ、「殿下……」と声をかけるが、彼はそれには応えず、ただわたしを見つめている。その瞳はどこか揺れを帯びているようで、まるで覚悟を決めたような色を帯びていた。
「シロエ。こんなに大きな騒ぎをして、何がしたい?」
王子の静かな声に、わたしの胸がドキリと高鳴る。何度も聞かれてきた問いだ。でも今さら答えなんて……。
「……決まってるでしょ。あんたに嫌われたいのよ、わたしは」
言い放つわたしの声は、震えていた。王子がどんな反応をするかを考えるだけで、なぜか足元がふらつきそうになる。
「そうか。なら、もっと早く言ってくれればよかったのに」
王子はそう言うと、なぜか悲しげな微笑を浮かべる。人々の期待や勘違い、騎士団の困惑など、すべてがごちゃ混ぜになったこの場で――わたしは王子の視線を正面から受け止めるしかなかった。
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