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エリックとの夜の婚約式が成功裏に終わり、シャーベット家は祝福ムードに包まれていた。アリスは“寝るのが嫌いな令嬢”というレッテルを背負いながらも、きちんと夜会を盛り上げ、伯爵家の名に恥じない形で騎士との結婚を選んだという評価が高まりつつある。
翌日、アリスは疲れを感じながらも、いつになく穏やかな気分で朝を迎えた。今まで夜会や事件のあとには寝不足感が強かったが、今回は「達成感」で身体がやや軽いのだ。侍女や使用人も「お嬢様、表情が晴れやかで何よりです」と笑顔を向ける。
「ふぁ……やっぱり、夜の婚約式ってロマンチックでしたね。父様やフローレンス、みんなに感謝です」
ダイニングで軽い朝食を取りながら、アリスはそう呟く。寝るのが嫌いという自分の特性が、こうして幸福な方向に作用するとは思っていなかった。
そこへ使用人が「グラント様が応接間でお待ちです」と告げ、アリスは「はーい」と返事して腰を上げる。どうやら昨夜の婚約式に参加できなかった外部の人から伝言があるとのことだ。
応接間に入ると、父グラントが手紙を開いて目を通している。アリスは「父様、おはようございます」と挨拶し、「何かありましたか?」と尋ねる。グラントは微妙に苦笑しているようだ。
「……うん、ハリス家の親戚筋から“早く挨拶に来い”と急かす書簡が届いていてな。エリックが男爵家の一族として貴族の慣習を守るべき、という意見も出ているらしい」
「ふぁ……そうなんですか。じゃあエリック、また時間作らなきゃ……。わたしも行くんですか?」
「一緒に行くかは彼ら次第だが、まあ“二人で来て顔を見せろ”という要望もあるようだ。寝るのが嫌いなお前には昼の移動がしんどいかもしれないが、必要なら覚悟してくれ」
アリスはうめき声を上げる。「わたし、夜ならまだしも昼の行動は苦手なんですけど……エリックの親戚だし、頑張らないとですよね」
寝るのが嫌いで夜型の彼女にとって、昼の移動は未だ慣れない部分がある。だがエリックの家とも繋がりを深める以上、避けては通れない道だ。結局、結婚準備をするためには昼間の社交も必要になる。
「父様、わたし、エリックとの夜会のあと、疲れが溜まってるんですけど……どうしましょう?」
「休めるときに休めばいい。今すぐ行く話ではないし、数日中にエリックやハリス夫人と調整してから日程を決めればいいだろう。……婚約式は終わったが、結婚までまだ色々あるからな」
グラントの言葉に、アリスはどこか安堵しながらも、新たな壁を意識する。昼の社交は寝るのが嫌いな彼女には精神的にもハードルが高い。でもエリックと結婚して共同生活を送る未来を考えれば、昼に家事や用事をこなす日常が待っているかもしれない。
その日の夜、アリスは久々に大きな休息を取ろうと決め、エリックが不在でも寝る準備をする。寝るのが嫌いなはずなのに、婚約式で燃え尽きた疲れもあって、ベッドに入ると意外とすんなり眠気が襲ってきた。
しかし、夜半にふと目が覚め、眠れなくなってしまう。悪夢ではなく、頭が冴えてしまう感覚だ。寝るのが嫌いだった頃の習慣が蘇るのかもしれない。
「ふぁ……これが久々にきた“夜の目覚め”ですね。わたし、クッキーを作りに行こうかな。……でも、婚約式の疲れがまだ残ってるし……」
逡巡の末、アリスはベッドで横になったまま、エリックの顔を思い出す。今なら夜に無理して起きなくても、昼に彼と話せる未来がある。「そっか、もう夜中にクッキーを作る必要ないかもしれない」と気づき、心が少し揺れる。
(わたし、夜更かししなくてもエリックと昼に過ごせるなら、もう無理して夜起きてなくてもいいんだ。寝るのが嫌いなまま、でも時々はしっかり眠ることを覚えてもいいのかな)
胸が暖かくなると同時に、小さな寂しさも感じる。夜が彼女にとって特別な時間だったのは確かだが、これからは昼も夜もエリックが隣にいてくれるはずだ。
迷っているうちに、再び眠気が訪れ、アリスは「あ、寝ちゃいそう……」と微笑んで瞼を閉じる。寝るのが嫌いだったからこそ、こうして素直に眠れることが少し嬉しい。婚約式の成功が、彼女を大きく変え始めているのかもしれない。
「エリック、わたし……あなたといれば夜も昼も怖くない。本当に……ありがとう……」
小さく呟いた言葉が夜の静寂に溶ける。ベッドのシーツに身を預けていると、安らかな眠りが意識をさらい、深い眠りの中でエリックの笑顔やクッキーの香りを思い出す。寝るのが嫌いという設定を抱えながらも、眠りの大切さを少しずつ学んでいる姿がそこにあった。
こうして夜が明けるころには、アリスは珍しくぐっすり眠り続けていた。朝に侍女が起こしに来るまで一度も目を覚まさなかったという――寝るのが嫌いだった日々に小さな変化が訪れる瞬間でもあった。
翌日、アリスは疲れを感じながらも、いつになく穏やかな気分で朝を迎えた。今まで夜会や事件のあとには寝不足感が強かったが、今回は「達成感」で身体がやや軽いのだ。侍女や使用人も「お嬢様、表情が晴れやかで何よりです」と笑顔を向ける。
「ふぁ……やっぱり、夜の婚約式ってロマンチックでしたね。父様やフローレンス、みんなに感謝です」
ダイニングで軽い朝食を取りながら、アリスはそう呟く。寝るのが嫌いという自分の特性が、こうして幸福な方向に作用するとは思っていなかった。
そこへ使用人が「グラント様が応接間でお待ちです」と告げ、アリスは「はーい」と返事して腰を上げる。どうやら昨夜の婚約式に参加できなかった外部の人から伝言があるとのことだ。
応接間に入ると、父グラントが手紙を開いて目を通している。アリスは「父様、おはようございます」と挨拶し、「何かありましたか?」と尋ねる。グラントは微妙に苦笑しているようだ。
「……うん、ハリス家の親戚筋から“早く挨拶に来い”と急かす書簡が届いていてな。エリックが男爵家の一族として貴族の慣習を守るべき、という意見も出ているらしい」
「ふぁ……そうなんですか。じゃあエリック、また時間作らなきゃ……。わたしも行くんですか?」
「一緒に行くかは彼ら次第だが、まあ“二人で来て顔を見せろ”という要望もあるようだ。寝るのが嫌いなお前には昼の移動がしんどいかもしれないが、必要なら覚悟してくれ」
アリスはうめき声を上げる。「わたし、夜ならまだしも昼の行動は苦手なんですけど……エリックの親戚だし、頑張らないとですよね」
寝るのが嫌いで夜型の彼女にとって、昼の移動は未だ慣れない部分がある。だがエリックの家とも繋がりを深める以上、避けては通れない道だ。結局、結婚準備をするためには昼間の社交も必要になる。
「父様、わたし、エリックとの夜会のあと、疲れが溜まってるんですけど……どうしましょう?」
「休めるときに休めばいい。今すぐ行く話ではないし、数日中にエリックやハリス夫人と調整してから日程を決めればいいだろう。……婚約式は終わったが、結婚までまだ色々あるからな」
グラントの言葉に、アリスはどこか安堵しながらも、新たな壁を意識する。昼の社交は寝るのが嫌いな彼女には精神的にもハードルが高い。でもエリックと結婚して共同生活を送る未来を考えれば、昼に家事や用事をこなす日常が待っているかもしれない。
その日の夜、アリスは久々に大きな休息を取ろうと決め、エリックが不在でも寝る準備をする。寝るのが嫌いなはずなのに、婚約式で燃え尽きた疲れもあって、ベッドに入ると意外とすんなり眠気が襲ってきた。
しかし、夜半にふと目が覚め、眠れなくなってしまう。悪夢ではなく、頭が冴えてしまう感覚だ。寝るのが嫌いだった頃の習慣が蘇るのかもしれない。
「ふぁ……これが久々にきた“夜の目覚め”ですね。わたし、クッキーを作りに行こうかな。……でも、婚約式の疲れがまだ残ってるし……」
逡巡の末、アリスはベッドで横になったまま、エリックの顔を思い出す。今なら夜に無理して起きなくても、昼に彼と話せる未来がある。「そっか、もう夜中にクッキーを作る必要ないかもしれない」と気づき、心が少し揺れる。
(わたし、夜更かししなくてもエリックと昼に過ごせるなら、もう無理して夜起きてなくてもいいんだ。寝るのが嫌いなまま、でも時々はしっかり眠ることを覚えてもいいのかな)
胸が暖かくなると同時に、小さな寂しさも感じる。夜が彼女にとって特別な時間だったのは確かだが、これからは昼も夜もエリックが隣にいてくれるはずだ。
迷っているうちに、再び眠気が訪れ、アリスは「あ、寝ちゃいそう……」と微笑んで瞼を閉じる。寝るのが嫌いだったからこそ、こうして素直に眠れることが少し嬉しい。婚約式の成功が、彼女を大きく変え始めているのかもしれない。
「エリック、わたし……あなたといれば夜も昼も怖くない。本当に……ありがとう……」
小さく呟いた言葉が夜の静寂に溶ける。ベッドのシーツに身を預けていると、安らかな眠りが意識をさらい、深い眠りの中でエリックの笑顔やクッキーの香りを思い出す。寝るのが嫌いという設定を抱えながらも、眠りの大切さを少しずつ学んでいる姿がそこにあった。
こうして夜が明けるころには、アリスは珍しくぐっすり眠り続けていた。朝に侍女が起こしに来るまで一度も目を覚まさなかったという――寝るのが嫌いだった日々に小さな変化が訪れる瞬間でもあった。
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