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夜の披露宴が華やかに続く中、アリスはやはりクライヴへ一言挨拶したいと思い、エリックに「ちょっと行ってくるね」と断って端のテーブルへ向かった。クライヴはバラ一輪を手に取りながら、グラスの酒を静かに嗜んでいた。
アリスが「クライヴさま……」と声をかけると、彼は柔和な笑みを浮かべて立ち上がる。
「アリス、久しぶりだな。昼の式には行けなかったけど、夜の披露宴だけでも見届けようと思ってね。……おめでとう」
「ありがとうございます。わたし……本当にクライヴさまには申し訳ない気持ちもあったんですけど、こうやって来てくれて嬉しいです」
クライヴは首を振り、「いや、謝らなくていいさ」と言い、淡々と続ける。「俺も次の縁談候補があるんだ。まだ決めてはいないけど、いずれ公爵家として義務を果たすだろう。君に固執しているわけでもない」
「ふぁ……そうなんですね。次の縁談、きっと素敵な方が現れますよ」
「まあ、そうだといいな。……それより、エリックとはうまくいってるようで何より。君が昼も夜も活躍してる姿を見て、安心したよ。もう寝るのが嫌いなんて言えないかもしれないな」
クライヴの冗談に、アリスは「そうですね……嫌いなままだけど、今は昼に起きるのもそんなに苦痛じゃありません」と笑う。クライヴも少しだけ目を細め、「大した成長だ」と穏やかに返す。
少しの間、沈黙が流れた後、クライヴが「これを渡したかった」と言って小さな包みを差し出す。中にはバラをモチーフにした小さな髪飾りが入っており、華やかというよりは可憐なデザインだ。
「クライヴさま……これは?」
「気にしなくていいよ。ちょっとした祝いの品さ。君が夜に披露宴をするなら、この髪飾りも似合うかと思ってね。……クライヴからの最後のプレゼントということで、受け取ってほしい」
アリスは胸が詰まる。一瞬断るべきか迷うが、クライヴの瞳には未練ではなく“最後の優しさ”が宿っているように感じられる。だからこそ、アリスは心で感謝し、包みを静かに受け取る。
「……ありがとうございます。わたし、あなたの幸せを祈ってます。きっと素敵な方と夜でも昼でも踊れる日が来るって信じてますから」
「うん、俺もそう思う。……エリックと末永くな。夜も昼も、君らしく生きろ。寝るのが嫌いだろうが、昼を嫌わないようにね」
クライヴは小さく笑い、アリスも涙をこらえて「はい……がんばります」と返す。周囲の人々は踊りや談笑に忙しく、二人の会話に気づく者はほとんどいない。まるで静かな別れのシーンのように、アリスとクライヴの周囲だけ空気が穏やかに流れている。
やがてクライヴが「では、俺はそろそろ退散する」とグラスを置き、出口へ向かう。アリスは「本当に、来てくださってありがとうございました」と頭を下げる。クライヴは一瞬振り返り、軽く手を振って大広間を出ていく。
“寝るのが嫌い”な少女が夜に築いた縁……クライヴとその関係は、こうして完全に幕を下ろした。アリスは包みを胸元に抱き、「クライヴさま、ありがとう」と小さく呟く。次はエリックの隣で朝を迎える自分を想像するだけだ。
気づけばエリックが遠くからアリスを見守っている。アリスはホッとしたように微笑み返し、夜の披露宴の喧騒に戻る。これで本当に、ディーンもクライヴも、何もかも遠い過去になった。最後まで穏やかに祝ってくれたクライヴへの感謝を忘れず、アリスは寝るのが嫌いでも昼と夜を同じくらい大事にする道を選んでいる。
アリスが「クライヴさま……」と声をかけると、彼は柔和な笑みを浮かべて立ち上がる。
「アリス、久しぶりだな。昼の式には行けなかったけど、夜の披露宴だけでも見届けようと思ってね。……おめでとう」
「ありがとうございます。わたし……本当にクライヴさまには申し訳ない気持ちもあったんですけど、こうやって来てくれて嬉しいです」
クライヴは首を振り、「いや、謝らなくていいさ」と言い、淡々と続ける。「俺も次の縁談候補があるんだ。まだ決めてはいないけど、いずれ公爵家として義務を果たすだろう。君に固執しているわけでもない」
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少しの間、沈黙が流れた後、クライヴが「これを渡したかった」と言って小さな包みを差し出す。中にはバラをモチーフにした小さな髪飾りが入っており、華やかというよりは可憐なデザインだ。
「クライヴさま……これは?」
「気にしなくていいよ。ちょっとした祝いの品さ。君が夜に披露宴をするなら、この髪飾りも似合うかと思ってね。……クライヴからの最後のプレゼントということで、受け取ってほしい」
アリスは胸が詰まる。一瞬断るべきか迷うが、クライヴの瞳には未練ではなく“最後の優しさ”が宿っているように感じられる。だからこそ、アリスは心で感謝し、包みを静かに受け取る。
「……ありがとうございます。わたし、あなたの幸せを祈ってます。きっと素敵な方と夜でも昼でも踊れる日が来るって信じてますから」
「うん、俺もそう思う。……エリックと末永くな。夜も昼も、君らしく生きろ。寝るのが嫌いだろうが、昼を嫌わないようにね」
クライヴは小さく笑い、アリスも涙をこらえて「はい……がんばります」と返す。周囲の人々は踊りや談笑に忙しく、二人の会話に気づく者はほとんどいない。まるで静かな別れのシーンのように、アリスとクライヴの周囲だけ空気が穏やかに流れている。
やがてクライヴが「では、俺はそろそろ退散する」とグラスを置き、出口へ向かう。アリスは「本当に、来てくださってありがとうございました」と頭を下げる。クライヴは一瞬振り返り、軽く手を振って大広間を出ていく。
“寝るのが嫌い”な少女が夜に築いた縁……クライヴとその関係は、こうして完全に幕を下ろした。アリスは包みを胸元に抱き、「クライヴさま、ありがとう」と小さく呟く。次はエリックの隣で朝を迎える自分を想像するだけだ。
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