25cmのシンデレラ

野守

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第41話 そろそろ真面目な話

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「……ああ」

そういえば私も昔は金澤だったっけ。なんて、ぼんやりと思った。自分で名乗った記憶はもうないけど。

「反応うすっ! 驚きとか感動とか激怒とか、何かしらないの?」
「驚いてはいますよ」
「そのトーンで?」

自分でも不思議なのだが、驚き以上に納得が勝っている感じだ。この前の馴れ馴れしい態度あたりが特に。
 一応、会釈ぐらいはした。

「そうですか、お久しぶりですね。覚えてなくてすみません。それで?」

金澤氏の方は目が泳いでいる。ちらちら私の方を見ようとはするが、ちゃんと目を合わせられないらしい。

「用件は終わりですか?」
「金澤さんもさぁ、ちゃんと言いたいこと無いわけ? 父から娘にさ」
「私は……父親らしいことは、何もしていないので……今さら……」
「よく分かってるじゃない」

ピシャっと叩きつけるように言ってみたら、ビクッと肩が跳ねるのが見えた。さすがに正輝さんも成り行きを静観している。でも一時的なショックの反動か、はたまた怒られて火が付いたのか、金澤氏の口はさっきより動くようになったらしい。

「で、でも、だからこそ! 梨代……さんには幸せになって欲しくて。篠塚家の一員になって苦労のない人生をと」
「三回浮気して離婚届突きつけられた人が言いますか」
「そっ、それは……反省している」

ああ、本当だったんだ。本日二回目の腑に落ちる感覚。
 離婚当時の私は幼すぎて記憶がないから、周囲の人がコソコソ言ってる噂を聞いて来たに過ぎない。でもそれは母親側の人たちの言い分だ。全て鵜呑みには出来ないよなぁとも思っていたけど、本人を前にしてみるとやっぱり、諸々の原因はこの人だろうなと思えてきた。悪役が定まったらスッキリした。

「正輝君だって彼女のような人が良いんだろう? 親が勧めてくる見合いは嫌だって、いつも言ってるじゃないか。会うだけ会って断ってしまうんだから」
「そういうことじゃないんだよ」
「身を固めれば仕事に熱も入るだろう。お父さんだって将来に期待してるじゃないか。そろそろ腰を据えないと」
「あのさぁ」

正輝さんとはタメ口出来る関係らしい。うん、何となく理解した。
 その正輝さんは頭をガシガシ掻きながら溜息をついている。

「俺、ちょっと梨代さんと話があるからさ。先帰ってて」
「適当に時間を潰しておくから、あとで迎えに来るよ」
「自力で帰れるっての。子供じゃないんだからさぁ」

私は何も了承していないのに、勝手に二人で話を進めている。正輝さんに追い払われた金澤氏は車とともに帰って行った。

「駅までで良いから、帰りがてら付き合ってよ。さっきので余計な誤解が生まれてそうだし」
「誤解も何も、私の気は変わってませんけど」
「いいから聞いてみて。そろそろ真面目な話」

勝手に私の行きたい方向へ付いてくるので、興味も無いのに聞くしかなかった。

「金澤さんのことは気にしないで。娘の幸せとか言ってるけど、梨代さんが篠塚家に入れば、父親の自分も恩恵受けられるんじゃないかと狙ってるっぽいから」
「だと思いました」
「さっすが梨代さん、惚れ直すわぁ」
「最悪」

これも誰かが口を滑らせた噂話。金澤氏は離婚の理由が理由だったので、職場でも噂になって居づらくなり、転職する羽目になったらしい。不安定な生活で養育費も払わなくなり、我が家との繋がりは完全に途切れた。面会した記憶も無い。今は収入があるみたいだけど、それでも養育費を払おうとしてこなかったということは、さほど私に興味も無かったんだろうと思う。今さら近づいてきた理由も見当がつくというものだ。

「じゃあ尚更、私が篠塚家に嫁ぐデメリットが増えましたね。最初から何が目的だったのか知りませんけど、いい加減に諦めてお引き取りください」
「そもそも俺はさ、相手に嫁いで欲しいんじゃないんだ。一般の人と結婚して俺が婿に行く。つまり篠塚家から解放されたいんだよ」
「は?」

予想外の話が出てきて、つい反応してしまった。聞き流してやろうと思ってたのに。

「結婚すれば戸籍は自然と離れるじゃないですか。苗字を相手の方に変えたいってことですか?」
「篠塚家ってのは、梨代さんが思ってるより相当入り組んでるんだよ」
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