25cmのシンデレラ

野守

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第46話 ごめんなさい

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 篠塚さんが普通の口調で凄いことを言った気がする。二人とも平然としすぎて、いまいち衝撃が来ないけど。

「でも俺だったら、そんな父親の手から抜け出すために必死で足掻く。ずっとスケープゴートにされてるのは癪だ」
「俺なりの足掻きが梨代さんだったんだけど」
「論外。部外者を巻き込むな」
「最初に巻き込んだのはタツ兄じゃん! ホントずるいわぁ。てかさ、部外者とか言ってるから俺が手を出せちゃったワケっしょ? いつまでも放っといて良いのかなぁ」

篠塚さんが何か言い返そうとしたようだが、言葉を発することなく口は閉じられた。私が眼光鋭く二人を見下ろしていたからだ。

「芋と一緒に焼いてやろうか」

低い声で言ったら、二人分の「すみません」が重なって聞こえた。
 その後も二人はブツブツ言い合いながら芋を転がし、芋を配り、芋を食べた。ほくほくの芋を食べている間だけはピタリと静かになった。美味しいは正義というやつだろうか。

「……美味いな」
「焼き芋、沁みるわぁ」

私も久しぶりの焼き芋にかぶりつく。熱くて甘くて、焦げた皮のカケラがちょっぴり苦かった。

「はい片付けでーす。ゴミはこちらの袋。その辺に捨てないでくださいね」

食べ終わったら余韻も何もなく片づけ。スタッフの人がテキパキと段取りを勧めて行くのも、地域イベントあるあるだと思う。

「あーメンド。後片付けって、何で準備よりずっと腰が重く感じるんだろ」
「これ以上楽しみが待ってないからだろう」

いちいち答えてあげる篠塚さんも律義だなぁ。独り言として放っておけば良いのに。

「後始末の大変さが分かっているなら、最初から何事も起こすな。やってくれている誰かのことを考えろ」
「こじつけで説教されても困るんだけど。……やっぱタツ兄も他のやつらと同じかぁ。結局何かしら欠点を指摘する側になりたいだけなんだろ、人を非難するのって快感だもんな。相対的に自分が正しく見えるからさ」
「事実を言っているだけだ。被害妄想だな」
「そうやって小言をぶつけるサンドバッグにされてんのが毎回俺だって分かんない? 親戚一同、誰も聖人君子の生き方なんかしてないはずなのにさぁ。うちの一家に対しては遠慮なく言って良いみたいな風潮おかしいだろって」

どっちも良く口が回ることだ。当分のエネルギーが回ったからだろうか。
 結局二人は少しでも近づくたびに何かしらの言い合いをし、その場の作業が終われば中断して次の持ち場に移動し、また顔を合わせれば応酬を再開するという、コマ切れの喧嘩を最後の最後まで続けていた。

「よく働いてくれて助かりましたよ。ご興味があれば、来年もぜひいらしてください。ボランティアですがね」

神主さんがそう言って、芋と一緒にお土産の野菜を渡していた。親戚の家で採れたものだという。

「ただ、手が動いていた以上に口も動いていましたなぁ。そんなに喧嘩ばかりしていては、いずれ神様も見放してしまわれますよ。美味しいものでも一緒に食べてみなさい」
「……すみませんでした。神聖な境内で」
「やっぱ聞かれてたしぃー。タツ兄が説教するから」
「お、ま、え、なぁ!」
「それも神様が聞いてるかもよ」

後ろで聞いていた私が二人の頭を強制的に下げさせた。力づくで。

「大変失礼いたしました。こいつら、しばらく修行でもさせてもらえませんかね」
「禅寺と勘違いしてないかい。うちは神社なんだが」
「やっぱダメですか」

これにて焼き芋大会は終わり。ひたすら罵り合うだけの一日になったかと思いきや、実は悪いことだけでも無かったらしい。帰り際に正輝さんがボソッと言ったのだ。

「来年は勝つ。要は段取りと、あと全体見りゃいいんだろ」

言いたいことを言い返してスッキリした結果、自分の力量に関してだけは反省する気になったのだろうか。別に焼き芋なんて価値も負けも無いのだけれど。

「んで、俺の方が有能だって証明出来たら、今度こそ梨代さんもらっちゃうかもよ」

こちらに寒気のするようなウインクを飛ばし、野菜の重みで千切れそうなビニール袋をぶら提げて帰って行った。
今までで一番可愛げのある姿に見えた。
 うるさいのが去ったところで篠塚さんを見たら、向こうはすでに私を見ていたらしく、見事に目を合わせる形となってしまった。どうしよう、視線を掴まれて逸らせない。直視しすぎながらでは話しづらいのに。

「坂本さん。今後のお話ですが」
「はい」
「やはり、俺では駄目ですか」

そんな聞き方を本当にする人がいるとは思わなかった。ものすごく答えづらい聞き方をしてくれる。

「これ以上お近づきにはなれません」
「これから時間をかけて慣れる、お互いの世界を徐々に知ってゆくというのでも、無理ですか」
「ごめんなさい」
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