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第7章 三年一学期
第200話 サトシをバックアップする先生たち
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夏期講習の初日。
桜井は、午前中の講習はTEAP試験のため欠席した。
そして、午後になっても桜井は学校に来なかった。
「桜井、午後は来るんじゃなかったっけ。おかしいなぁ。サトシ先生、何か聞いてませんか?」
職員室で青柳先生は、桜井の欠席に不安になって、サトシに聞いてみた。
「何も聞いてませんよ。心配なら長谷川さんの家に電話したらいいじゃないですか」
「そうですね。でも、長谷川さんから理事長に話が行っているってこと、……ないですよね」
「何を恐れているんですか? 面談で何かマズい話でもしたんですか?」
「い、いいえ、何も」
サトシは、青柳先生の挙動不審ぶりが不快だった。
昨夜、桜井は長谷川と実家に帰ったので、サトシは詳細を知らない。
(なんなんだ?)
サトシがむっとして席に座ろうとすると、工藤先生が「こっちに来て」と無言のジェスチャーで呼んでいた。
サトシは工藤先生と一緒に進路指導室に入った。
「聞いてないのか、サトシ」
「何を」
「青柳先生が桜井に論破されたって話」
「え? 論破したぁ?!」
「まあね。どうやら、青柳先生は指定校推薦を勧めたらしいんだが、お父さんはそれでお願いしますと言ったらしい」
「桜井は?」
「納得したと、青柳先生は言っているけど、本心かどうか……、あの子の事だ。家族に気を使った可能性があると俺は読んでいる。青柳先生は、まだそこまで深く生徒の心理を読めていないからな」
「で、論破ってなんだよ……」
「TEAP試験があるから午前中欠席しますと、桜井は言ったらしい。それで、青柳先生は指定校推薦ならTEAP試験の必要は無いと言ったんだと」
「言わなくもいいものを……」
「そこで、桜井は『それなら夏期講習も必要ありませんよね。それってダブルスタンダードです』と。そして、『相互不信、モチベーションの低下につながるから注意した方がいい』と。青柳先生はトドメを刺されたらしい」
「なるほど、……だから昨日はあんなに荒れながら下校してたのか」
「荒れていた?」
「下校の様子だけな。二階の窓から見ていた。やらかしたなとは思ってたけど……それって……笑えるな。ふっ……」
「午後も学校に来ないのは、夏期講習は必要ないという抵抗ではないかと、俺は思うんだが。サトシ、お前、桜井から聞いておいた方がいいぞ。J大学の指定枠は、桜井の希望する学科じゃないからな」
「そうなのか」
「最後に決めるのは生徒本人だ。桜井がそう決めたのならいいけど、もし、無理に変更しようとしているのなら……、今日の欠席はその反抗心の表れかもしれないぞ」
「わかった。ありがとう、工藤」
「でも、無理に聞くなよ。指定枠はまだ公表できない。他に漏れたらやっかいだ」
「やっかいなことって?」
「特に桜井の周りには、一ノ瀬や夏梅がいる。彼女たちは当然、指定校推薦を狙っていると思うぞ。女子校はそんな些細な事からいじめが始まることだってあるんだからな」
工藤先生は、女子校の進路指導経験からサトシにアドバイスした。
サトシはいじめという言葉に緊張した。
その日の夏期講習は終わった。
サトシは国語の藤原先生の前で話していた。
「藤原先生、夏期講習のカリキュラムで小論文ありましたっけ」
「ああっと……、小論文は夏期講習後期の内容ですね。基本の現代文が出来ないと、論文なんて書けませんから。だから初日は現代文ですよ」
「じゃあ、今日欠席した生徒に、明日はプリントを渡してくれませんか?」
「……サトシ先生、はっきり言ったらどうですか? はい、このプリント。サトシ先生から桜井に渡してやってください」
「あ、すみません」
「もうバレバレなんですから、ストレートに言ってくださいよ。ほら! 古松川先生も、社会科の今日のプリントをサトシ先生に渡してください」
古松川先生も机の上で、夏期講習のファイルを探した。
「今日の社会科……、ああ、なるほどね。そう意味ですね。はいどうぞ」
藤原先生も古松川先生も、サトシ先生の想いに応えてくれた。
「ありがとうございます」
サトシは、このプリントを持って、桜井の実家に行く口実が出来た。
すれ違いになるといけないので、サトシは早速LINEした。
:TEAP試験おつかれさまでした!
今日の国語と世界史のプリントを持って長谷川さんの家に伺います。
長谷川さんの家で待っていてください。
桜井の返信はいつもより早く返って来た。
:ありがとうございます。
数学は要らないから持って来ないでね。
:わかってる。数学はない。
:じゃ、来てよし!
スイートコーンを茹でて待ってまーす。
(なんで上から目線?)
:プリントを渡したら帰るから、何も用意しなくていいよ。
:それはダメ。
わたしを先生の家に連れて帰ってくれなきゃ、
:くれなきゃ……?
:グレてやる。
:古語だな。それは困る。生徒指導に関わる問題だ。
:先生なら指導されたいです。
:え?
:進路ですよ。
:もちろん、進路だ
:何か別の事、想像したとみた。
:大人をからかうな。
:待ってるからねー!
メッセージと一緒に桜井の自撮り画像が送られてきた。
唇に指をあてて投げキッスしている。
(桜井……、俺っておちょくられてる? ま、負けるもんか)
:その誘惑、のった! 待ってろよ!
サトシは、今日もノー残業で桜井の実家へと走った。
桜井は、午前中の講習はTEAP試験のため欠席した。
そして、午後になっても桜井は学校に来なかった。
「桜井、午後は来るんじゃなかったっけ。おかしいなぁ。サトシ先生、何か聞いてませんか?」
職員室で青柳先生は、桜井の欠席に不安になって、サトシに聞いてみた。
「何も聞いてませんよ。心配なら長谷川さんの家に電話したらいいじゃないですか」
「そうですね。でも、長谷川さんから理事長に話が行っているってこと、……ないですよね」
「何を恐れているんですか? 面談で何かマズい話でもしたんですか?」
「い、いいえ、何も」
サトシは、青柳先生の挙動不審ぶりが不快だった。
昨夜、桜井は長谷川と実家に帰ったので、サトシは詳細を知らない。
(なんなんだ?)
サトシがむっとして席に座ろうとすると、工藤先生が「こっちに来て」と無言のジェスチャーで呼んでいた。
サトシは工藤先生と一緒に進路指導室に入った。
「聞いてないのか、サトシ」
「何を」
「青柳先生が桜井に論破されたって話」
「え? 論破したぁ?!」
「まあね。どうやら、青柳先生は指定校推薦を勧めたらしいんだが、お父さんはそれでお願いしますと言ったらしい」
「桜井は?」
「納得したと、青柳先生は言っているけど、本心かどうか……、あの子の事だ。家族に気を使った可能性があると俺は読んでいる。青柳先生は、まだそこまで深く生徒の心理を読めていないからな」
「で、論破ってなんだよ……」
「TEAP試験があるから午前中欠席しますと、桜井は言ったらしい。それで、青柳先生は指定校推薦ならTEAP試験の必要は無いと言ったんだと」
「言わなくもいいものを……」
「そこで、桜井は『それなら夏期講習も必要ありませんよね。それってダブルスタンダードです』と。そして、『相互不信、モチベーションの低下につながるから注意した方がいい』と。青柳先生はトドメを刺されたらしい」
「なるほど、……だから昨日はあんなに荒れながら下校してたのか」
「荒れていた?」
「下校の様子だけな。二階の窓から見ていた。やらかしたなとは思ってたけど……それって……笑えるな。ふっ……」
「午後も学校に来ないのは、夏期講習は必要ないという抵抗ではないかと、俺は思うんだが。サトシ、お前、桜井から聞いておいた方がいいぞ。J大学の指定枠は、桜井の希望する学科じゃないからな」
「そうなのか」
「最後に決めるのは生徒本人だ。桜井がそう決めたのならいいけど、もし、無理に変更しようとしているのなら……、今日の欠席はその反抗心の表れかもしれないぞ」
「わかった。ありがとう、工藤」
「でも、無理に聞くなよ。指定枠はまだ公表できない。他に漏れたらやっかいだ」
「やっかいなことって?」
「特に桜井の周りには、一ノ瀬や夏梅がいる。彼女たちは当然、指定校推薦を狙っていると思うぞ。女子校はそんな些細な事からいじめが始まることだってあるんだからな」
工藤先生は、女子校の進路指導経験からサトシにアドバイスした。
サトシはいじめという言葉に緊張した。
その日の夏期講習は終わった。
サトシは国語の藤原先生の前で話していた。
「藤原先生、夏期講習のカリキュラムで小論文ありましたっけ」
「ああっと……、小論文は夏期講習後期の内容ですね。基本の現代文が出来ないと、論文なんて書けませんから。だから初日は現代文ですよ」
「じゃあ、今日欠席した生徒に、明日はプリントを渡してくれませんか?」
「……サトシ先生、はっきり言ったらどうですか? はい、このプリント。サトシ先生から桜井に渡してやってください」
「あ、すみません」
「もうバレバレなんですから、ストレートに言ってくださいよ。ほら! 古松川先生も、社会科の今日のプリントをサトシ先生に渡してください」
古松川先生も机の上で、夏期講習のファイルを探した。
「今日の社会科……、ああ、なるほどね。そう意味ですね。はいどうぞ」
藤原先生も古松川先生も、サトシ先生の想いに応えてくれた。
「ありがとうございます」
サトシは、このプリントを持って、桜井の実家に行く口実が出来た。
すれ違いになるといけないので、サトシは早速LINEした。
:TEAP試験おつかれさまでした!
今日の国語と世界史のプリントを持って長谷川さんの家に伺います。
長谷川さんの家で待っていてください。
桜井の返信はいつもより早く返って来た。
:ありがとうございます。
数学は要らないから持って来ないでね。
:わかってる。数学はない。
:じゃ、来てよし!
スイートコーンを茹でて待ってまーす。
(なんで上から目線?)
:プリントを渡したら帰るから、何も用意しなくていいよ。
:それはダメ。
わたしを先生の家に連れて帰ってくれなきゃ、
:くれなきゃ……?
:グレてやる。
:古語だな。それは困る。生徒指導に関わる問題だ。
:先生なら指導されたいです。
:え?
:進路ですよ。
:もちろん、進路だ
:何か別の事、想像したとみた。
:大人をからかうな。
:待ってるからねー!
メッセージと一緒に桜井の自撮り画像が送られてきた。
唇に指をあてて投げキッスしている。
(桜井……、俺っておちょくられてる? ま、負けるもんか)
:その誘惑、のった! 待ってろよ!
サトシは、今日もノー残業で桜井の実家へと走った。
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