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第8章 三年二学期
第236話 仲良しグループ五人目のメンバーは
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教室でひとり読書をしている桜田ミレイがいた。
桜井は、ミレイの隣の席に座って声をかけた。
「ミレイちゃん、話しかけてもいい?」
「あら、桜井さん。よろしくってよ」
「何の本を読んでるの? また花嫁修業の本?」
「夫の両親との付き合い方」
(え、もう、その段階?!……知らない間に上級コースになってる!)
「ミレイちゃんって、結婚したら旦那さんの家に入るの?」
「ええ、嫁入りって言いますから……、もう結納も済ませましたし……」
「えっと……ゆいのう? You know. 何それ、おいしいの?」
「両家が集まってする、結婚前の儀式よ。新郎側から結納金をいただいたりするの」
「何時代の話? それって、人身売買じゃ……」
「ホホホホ……、いやですわ。両家の顔合わせみたいなものです」
「両家の顔合わせ? それが終わったってこと?」
「ええ」
桜井は、両家の顔合わせをすると父が言っていたのを思い出した。
(ということは、わたしもそれに出席するのかな……)
「ふーん、それで、ミレイちゃんは衣装合わせとかしているの?」
「しましたわ」
「え、もう?! ミレイちゃん、いつ結婚する予定なの?」
「来年の6月ですわ。ジューンブライドっていうのかしら」
桜井は焦った。
桜井とサトシは5月挙式予定なのに、何一つ進んでいない。
「そ、そ、そうなんだー。忙しいんだねー」
「結婚に向けて、準備することがいっぱいありますの」
「準備……。その、……ミレイちゃん、あれからはどこまで進んでいるの?」
「ん? あれからって、どれからかしら?」
「その、……帯を自分で解いたっていう……ああああああ、わたしも今朝、ミレイちゃんと同じような事をするところだったわ!」
桜井は、今朝サトシの目の前でパジャマを脱ごうとしたことを思い出し、頭を抱えた。
「桜井さん? 今朝っておっしゃいました? もしかして、男のかたと一緒に住んでいらっしゃるの?」
桜井は、ハッとして取り消した。
「あ、違う、違う! 今朝起きたら、ミレイちゃんと同じような夢を見ていたって意味よ」
「あ、ああ、ああ。夢。そうですわよね。桜井さんが帯を解くはずありませんものね。うふふふふふ……」
「うふふふふふ……」
桜井は、ミレイそっくりにお嬢様笑いをして、その場をごまかした。
昼休み時間。
B組の教室に、C組の一ノ瀬と柚木がやってきた。
「美柑、ハルちゃん、お昼を一緒に食べようよー」
「わーい、いいよー。ここに座りなよ」
桜井と桃瀬、一ノ瀬と柚木。
この四人は、全員年内合格している。
和気あいあいと、お弁当を広げておしゃべりを始めた。
「ねえねえ、冬休みどうする?」
「わたし、大学から課題が出てるから、それをやらなきゃなー」
「ハルちゃん、大学から課題なんか出てるの?」
「そうよー。受験終わったから遊びに行こうと思ってたのに、ぜーんぜん遊べそうにない」
桃瀬の大学は、総合選抜合格者には課題を出していた。
「柚木くんは?」
「わたし、スポーツ推薦だから、冬休みは自主トレかな。一ノ瀬は?」
「わたしの大学は、課題はないけど、3月はオンライン新入生ガイダンスっていうのがあるの。ある意味、授業だよね。ねえ、美柑」
「う、うん……」
こういう話は、一般選抜の子の気に障るのではないかと心配で、桜井は小さくうなずいた。
そこへ、案の定、夏梅がやって来た。
「ちょっと、あんたたち、C組でしょ。ここはB組の教室なんだから、騒がないでくれる?」
夏梅の言葉に、一ノ瀬はカチンときた。
「はぁ? 昼休み時間なのよ。どこでお弁当食べようと自由なんじゃないの? それに、静かにお弁当を食べる方が気持ち悪いわ」
桜井は一ノ瀬を止めた。
「一ノ瀬、いいよ。ここじゃないところで食べようよ」
「美柑、何、こいつに気を使ってんのよ」
一ノ瀬の言葉に、夏梅は怒った。
「こいつ、ですって? なんて品のない言葉。B組の学級委員長として、注意します。B組のクラスの空気を乱さないで!」
「夏梅、ごめんね。今、教室から出るからさ……」
「美柑、なんで謝るのよ。わたしたち別に悪いことしてないのに!」
桜井は、桃瀬と柚木に目配せして、この場から一ノ瀬を引き離そうとした。
柚木も桃瀬も、一ノ瀬をなだめながら、お弁当箱を片付け始めた。
「まあ、まあ、一ノ瀬。天気がいいから外で食べようよ」
「わたし、いい場所を知ってるの。そこへ移動しよう」
桃瀬と柚木が上手に一ノ瀬を連れ出している後ろで、桜井は夏梅に向かって手を合わせた。
「ごめんね、夏梅」
桜井たちは、校庭の横の芝生にいた。
「ちょっとー、確かに天気はいいけど……寒くない? 美柑」
「確かにね」
「ハルちゃん、さっきの夏梅と一ノ瀬、すごかったよねー」
「ほーんと。戦争勃発かと思ったわ」
四人は、さっきのことを思い出しながら笑いあっていた。
その様子をB組の教室の窓から、他のクラスメイトたちが見ていた。
「あー、あの四人。あんなところでお弁当食べているわ」
「寒いでしょうに」
「でも、笑い転げてるわよ。ほんと、あの子たちって一年生のときから、仲いいよね」
「ふふふふ……、まるでじゃれあっている子犬みたい」
「どうして、あの四人は仲がいいのかしら。四人とも違う性格なのに」
「慣れじゃない?」
桜井たちを見ているクラスメイトたちの会話に、夏梅が入った。
「慣れ? それだけじゃないわ。それと、四人じゃなくて五人だから」
「五人?」
「夏梅さん、五人目って誰?」
「し、知らないわよっ」
夏梅の答えに、クラスメイトたちは首をかしげた。
夏梅はあの四人と同じグループのつもりでいたのだ。
(一年生の時から彼女たちと一緒なのは、わたし! わたしなのよ。それなのに一ノ瀬さんったら、こいつですって……。わたしだって同じグループなのに)
夏梅が、一人寂しくお弁当箱を片付けていると、目の前にレモンキャンディーが一個置かれた。
顔をあげると、桜田ミレイだった。
「うふふ、よろしかったらどうぞ。夏梅さんって、頭のいいかたね」
「え? いいの? これもらっても」
「よろしくってよ。よくわかったわね、わたくしよ。五人目のメンバーは……」
夏梅は、ミレイの優しい言葉と壮大な勘違いに泣きたくなった。
「そうじゃない……」
桜井は、ミレイの隣の席に座って声をかけた。
「ミレイちゃん、話しかけてもいい?」
「あら、桜井さん。よろしくってよ」
「何の本を読んでるの? また花嫁修業の本?」
「夫の両親との付き合い方」
(え、もう、その段階?!……知らない間に上級コースになってる!)
「ミレイちゃんって、結婚したら旦那さんの家に入るの?」
「ええ、嫁入りって言いますから……、もう結納も済ませましたし……」
「えっと……ゆいのう? You know. 何それ、おいしいの?」
「両家が集まってする、結婚前の儀式よ。新郎側から結納金をいただいたりするの」
「何時代の話? それって、人身売買じゃ……」
「ホホホホ……、いやですわ。両家の顔合わせみたいなものです」
「両家の顔合わせ? それが終わったってこと?」
「ええ」
桜井は、両家の顔合わせをすると父が言っていたのを思い出した。
(ということは、わたしもそれに出席するのかな……)
「ふーん、それで、ミレイちゃんは衣装合わせとかしているの?」
「しましたわ」
「え、もう?! ミレイちゃん、いつ結婚する予定なの?」
「来年の6月ですわ。ジューンブライドっていうのかしら」
桜井は焦った。
桜井とサトシは5月挙式予定なのに、何一つ進んでいない。
「そ、そ、そうなんだー。忙しいんだねー」
「結婚に向けて、準備することがいっぱいありますの」
「準備……。その、……ミレイちゃん、あれからはどこまで進んでいるの?」
「ん? あれからって、どれからかしら?」
「その、……帯を自分で解いたっていう……ああああああ、わたしも今朝、ミレイちゃんと同じような事をするところだったわ!」
桜井は、今朝サトシの目の前でパジャマを脱ごうとしたことを思い出し、頭を抱えた。
「桜井さん? 今朝っておっしゃいました? もしかして、男のかたと一緒に住んでいらっしゃるの?」
桜井は、ハッとして取り消した。
「あ、違う、違う! 今朝起きたら、ミレイちゃんと同じような夢を見ていたって意味よ」
「あ、ああ、ああ。夢。そうですわよね。桜井さんが帯を解くはずありませんものね。うふふふふふ……」
「うふふふふふ……」
桜井は、ミレイそっくりにお嬢様笑いをして、その場をごまかした。
昼休み時間。
B組の教室に、C組の一ノ瀬と柚木がやってきた。
「美柑、ハルちゃん、お昼を一緒に食べようよー」
「わーい、いいよー。ここに座りなよ」
桜井と桃瀬、一ノ瀬と柚木。
この四人は、全員年内合格している。
和気あいあいと、お弁当を広げておしゃべりを始めた。
「ねえねえ、冬休みどうする?」
「わたし、大学から課題が出てるから、それをやらなきゃなー」
「ハルちゃん、大学から課題なんか出てるの?」
「そうよー。受験終わったから遊びに行こうと思ってたのに、ぜーんぜん遊べそうにない」
桃瀬の大学は、総合選抜合格者には課題を出していた。
「柚木くんは?」
「わたし、スポーツ推薦だから、冬休みは自主トレかな。一ノ瀬は?」
「わたしの大学は、課題はないけど、3月はオンライン新入生ガイダンスっていうのがあるの。ある意味、授業だよね。ねえ、美柑」
「う、うん……」
こういう話は、一般選抜の子の気に障るのではないかと心配で、桜井は小さくうなずいた。
そこへ、案の定、夏梅がやって来た。
「ちょっと、あんたたち、C組でしょ。ここはB組の教室なんだから、騒がないでくれる?」
夏梅の言葉に、一ノ瀬はカチンときた。
「はぁ? 昼休み時間なのよ。どこでお弁当食べようと自由なんじゃないの? それに、静かにお弁当を食べる方が気持ち悪いわ」
桜井は一ノ瀬を止めた。
「一ノ瀬、いいよ。ここじゃないところで食べようよ」
「美柑、何、こいつに気を使ってんのよ」
一ノ瀬の言葉に、夏梅は怒った。
「こいつ、ですって? なんて品のない言葉。B組の学級委員長として、注意します。B組のクラスの空気を乱さないで!」
「夏梅、ごめんね。今、教室から出るからさ……」
「美柑、なんで謝るのよ。わたしたち別に悪いことしてないのに!」
桜井は、桃瀬と柚木に目配せして、この場から一ノ瀬を引き離そうとした。
柚木も桃瀬も、一ノ瀬をなだめながら、お弁当箱を片付け始めた。
「まあ、まあ、一ノ瀬。天気がいいから外で食べようよ」
「わたし、いい場所を知ってるの。そこへ移動しよう」
桃瀬と柚木が上手に一ノ瀬を連れ出している後ろで、桜井は夏梅に向かって手を合わせた。
「ごめんね、夏梅」
桜井たちは、校庭の横の芝生にいた。
「ちょっとー、確かに天気はいいけど……寒くない? 美柑」
「確かにね」
「ハルちゃん、さっきの夏梅と一ノ瀬、すごかったよねー」
「ほーんと。戦争勃発かと思ったわ」
四人は、さっきのことを思い出しながら笑いあっていた。
その様子をB組の教室の窓から、他のクラスメイトたちが見ていた。
「あー、あの四人。あんなところでお弁当食べているわ」
「寒いでしょうに」
「でも、笑い転げてるわよ。ほんと、あの子たちって一年生のときから、仲いいよね」
「ふふふふ……、まるでじゃれあっている子犬みたい」
「どうして、あの四人は仲がいいのかしら。四人とも違う性格なのに」
「慣れじゃない?」
桜井たちを見ているクラスメイトたちの会話に、夏梅が入った。
「慣れ? それだけじゃないわ。それと、四人じゃなくて五人だから」
「五人?」
「夏梅さん、五人目って誰?」
「し、知らないわよっ」
夏梅の答えに、クラスメイトたちは首をかしげた。
夏梅はあの四人と同じグループのつもりでいたのだ。
(一年生の時から彼女たちと一緒なのは、わたし! わたしなのよ。それなのに一ノ瀬さんったら、こいつですって……。わたしだって同じグループなのに)
夏梅が、一人寂しくお弁当箱を片付けていると、目の前にレモンキャンディーが一個置かれた。
顔をあげると、桜田ミレイだった。
「うふふ、よろしかったらどうぞ。夏梅さんって、頭のいいかたね」
「え? いいの? これもらっても」
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