268 / 273
第10章 Wedding編
第267話 コント、新郎の“友人代表”挨拶
しおりを挟む
「皆さま、ご歓談中のところよろしいでしょうか。ここで新郎側友人代表として、お二人の先生からご挨拶がございます。生活指導部、国語科の藤原先生。そして、広報部で社会科の古松川先生です。どうぞ」
壇上に立ったのは、きっちりスーツの藤原先生と古松川先生だ。
生活指導部で知られる国語教師の藤原先生と、広報担当で世界史を教える古松川先生。
普段はどちらかと言えば「厳しい側の先生」で通っている二人の登場に、教え子たちからざわざわとざわめきが起こった。
「生活指導部、国語科の藤原です」
「社会科、広報担当の古松川でーす。」
「「二人合わせて白金女子のフージ子ちゃーんでーす」」
会場は、漫才が始まったのかと皆注目した。
「いやいやいやいや……今日は白金女子学園の校長先生もいらっしゃるし、乾杯は五十嵐先生でしたねー」
「そうそう! 受付は工藤先生と青柳先生、そして教え子たちでしたよ。ねえ! 本当にこんな素晴らしい会場で謝恩会が開かれるなんて……」
「いや、ちがう。謝恩会じゃないから。結婚式!」
「え、違うの? 顔ぶれが白金女子学園だから、わたしはてっきり謝恩会かと……」
「古松川先生、なんぼなんでも、それはない。まあ、確かにね、揃っている面々は白金女子学園なんだけどね」
「あ、そうそう。杉並区にあるのになんで白金って言うんですか?って、疑問の方。詳しいことは概要欄にリンク貼っておきましたので、こちらをクリックしてください」
と、古松川先生は何もない前方を指さした。
「ちょ、ちょっと待ち。このスピーチをSNSに投稿するの? ダメダメ、勝手にそんなことしたら」
「あ、わたし、広報担当ですから。勝手に許可しますんで」
「やめなさいっ! ほんとにもう……。今日はなんと……新郎の“友人代表”としてスピーチをすることになりました!」
「いや、“代表”って……藤原先生、わたしらふたり、選ばれたっていうより、残されたみたいな雰囲気でしたが」
「よしなさいって! 言い方ってものがある。これは栄誉です!」
「ああ、“現場代表”ってことね。汗と涙とチョークの粉を分かち合った戦友として」
「……さっき、チョークじゃなくてホワイトボードマーカーの時代だって、職員会議で注意されたろ」
会場からどっと笑いが溢れた。
藤原先生と古松川先生は顔を見合わせ、うなずいた。
「それにしても、サトシ先生が新郎としてこの場にいるって、感慨深いですよねー」
「……うん。我々、気づいてたからな。三年間、ずっーと」
「そう。本人たちがまだ“気づいてないふり”してた頃から」
「教員室でも話題だった。“あれは……きっとそうだよな”って」
「でも、誰も何も言わなかった。“バレてるよ”なんて、野暮なことはね」
「生徒を愛する教師としての矜持と、生徒の成長を信じる大人としての……」
「って、藤原先生、急に熱いな!」
「失礼。国語は言葉に魂を込めますんで……」
「いいなあ、国語は言葉に魂込められて。世界史は、使えるような用語が……あ、あった! ルネッサーンス!」
会場に笑いが広がった。
そして、藤原先生は、新年の職員会議を思い出したように語った。
「だからこそ、正月明けのあの日、サトシ先生が校長室でから出て来たあとの職員会議ですよ」
「“桜井さんと、結婚を前提にお付き合いしたいです”って頭下げたときな」
「あれは……本当に格好よかった」
「校長先生、黙って“うむ”ってうなずいたまま、30秒動かなくなったけどな」
「あれ、感動してたんですよ。たぶん。ねえ古松川先生」
「たぶん、ね。寝ていたなんて言いませんから安心してく……」
「言ったらダメだって!」
会場から笑いと共に温かな拍手が起こった。
「だから、我々だけが“友人代表”って、ちょっと……ね? 古松川先生、どう思います?」
「重すぎるよな、責任が」
「なので……我々、考えました!」
「“みんなで祝えば、怖くない”作戦です!ね、藤原先生」
「というわけで……我々、教職員全員で、映像を用意しました!」
「校長先生はじめ、教職員、事務さん、用務員さん、購買部の方……」
「生徒より張り切って踊って練習しましたからねー!」
「そうそう、踊り終わったあと、息切れと動悸、高血圧で保健室行った先生もいます」
「“学校全体で祝いたい”って気持ちを込めました」
「それでは、ご覧ください。スペシャルサプライズムービー!」
ふたりが深く頭を下げると、会場の照明がすっと落ち、スクリーンが明るくなった。
壇上に立ったのは、きっちりスーツの藤原先生と古松川先生だ。
生活指導部で知られる国語教師の藤原先生と、広報担当で世界史を教える古松川先生。
普段はどちらかと言えば「厳しい側の先生」で通っている二人の登場に、教え子たちからざわざわとざわめきが起こった。
「生活指導部、国語科の藤原です」
「社会科、広報担当の古松川でーす。」
「「二人合わせて白金女子のフージ子ちゃーんでーす」」
会場は、漫才が始まったのかと皆注目した。
「いやいやいやいや……今日は白金女子学園の校長先生もいらっしゃるし、乾杯は五十嵐先生でしたねー」
「そうそう! 受付は工藤先生と青柳先生、そして教え子たちでしたよ。ねえ! 本当にこんな素晴らしい会場で謝恩会が開かれるなんて……」
「いや、ちがう。謝恩会じゃないから。結婚式!」
「え、違うの? 顔ぶれが白金女子学園だから、わたしはてっきり謝恩会かと……」
「古松川先生、なんぼなんでも、それはない。まあ、確かにね、揃っている面々は白金女子学園なんだけどね」
「あ、そうそう。杉並区にあるのになんで白金って言うんですか?って、疑問の方。詳しいことは概要欄にリンク貼っておきましたので、こちらをクリックしてください」
と、古松川先生は何もない前方を指さした。
「ちょ、ちょっと待ち。このスピーチをSNSに投稿するの? ダメダメ、勝手にそんなことしたら」
「あ、わたし、広報担当ですから。勝手に許可しますんで」
「やめなさいっ! ほんとにもう……。今日はなんと……新郎の“友人代表”としてスピーチをすることになりました!」
「いや、“代表”って……藤原先生、わたしらふたり、選ばれたっていうより、残されたみたいな雰囲気でしたが」
「よしなさいって! 言い方ってものがある。これは栄誉です!」
「ああ、“現場代表”ってことね。汗と涙とチョークの粉を分かち合った戦友として」
「……さっき、チョークじゃなくてホワイトボードマーカーの時代だって、職員会議で注意されたろ」
会場からどっと笑いが溢れた。
藤原先生と古松川先生は顔を見合わせ、うなずいた。
「それにしても、サトシ先生が新郎としてこの場にいるって、感慨深いですよねー」
「……うん。我々、気づいてたからな。三年間、ずっーと」
「そう。本人たちがまだ“気づいてないふり”してた頃から」
「教員室でも話題だった。“あれは……きっとそうだよな”って」
「でも、誰も何も言わなかった。“バレてるよ”なんて、野暮なことはね」
「生徒を愛する教師としての矜持と、生徒の成長を信じる大人としての……」
「って、藤原先生、急に熱いな!」
「失礼。国語は言葉に魂を込めますんで……」
「いいなあ、国語は言葉に魂込められて。世界史は、使えるような用語が……あ、あった! ルネッサーンス!」
会場に笑いが広がった。
そして、藤原先生は、新年の職員会議を思い出したように語った。
「だからこそ、正月明けのあの日、サトシ先生が校長室でから出て来たあとの職員会議ですよ」
「“桜井さんと、結婚を前提にお付き合いしたいです”って頭下げたときな」
「あれは……本当に格好よかった」
「校長先生、黙って“うむ”ってうなずいたまま、30秒動かなくなったけどな」
「あれ、感動してたんですよ。たぶん。ねえ古松川先生」
「たぶん、ね。寝ていたなんて言いませんから安心してく……」
「言ったらダメだって!」
会場から笑いと共に温かな拍手が起こった。
「だから、我々だけが“友人代表”って、ちょっと……ね? 古松川先生、どう思います?」
「重すぎるよな、責任が」
「なので……我々、考えました!」
「“みんなで祝えば、怖くない”作戦です!ね、藤原先生」
「というわけで……我々、教職員全員で、映像を用意しました!」
「校長先生はじめ、教職員、事務さん、用務員さん、購買部の方……」
「生徒より張り切って踊って練習しましたからねー!」
「そうそう、踊り終わったあと、息切れと動悸、高血圧で保健室行った先生もいます」
「“学校全体で祝いたい”って気持ちを込めました」
「それでは、ご覧ください。スペシャルサプライズムービー!」
ふたりが深く頭を下げると、会場の照明がすっと落ち、スクリーンが明るくなった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
