サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない

白神ブナ

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第10章 Wedding編

第270話 二階テラスの放送事故

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「新郎新婦と新婦のご友人たちによる、お色直しパフォーマンスでした! さすが、新郎率いる教え子たちとあって、息もぴったりでしたよね。皆さま、もう一度盛大な拍手をお願いします!!」

レイコ姉さんによるみごとな後振りで、拍手につつまれて新郎新婦は席についた。

「皆さん、いまのパフォーマンス、いかがでしたか?
実はこのダンス、美柑さんが高校一年生の時、白金女子学園の文化祭、白金祭で披露した伝説のステージの再現なのだそうです。
美柑さんは、その時にクラスと協力して創作する喜びを体験し、その勢いで翌年、生徒会に立候補しました。公約はなんと……“先生アイドル化計画”!」

招待客から笑いと驚きの声があがった。

「……ええ、わたしも正直、聞いたときはびっくりしました(笑)
ですが、美柑さんは有言実行。二年生の白金祭では、先生方を巻き込み、振り付け、演出、そして舞台裏まで全力で支えたそうです。
今日のこの結婚式でも、美柑さんは変わらず全力投球です!」

ここで、レイコ姉さんは一拍おいた。

「……ということで……、次にご覧いただくのは、現在の生徒会執行部の皆さんから届いた、スペシャルメッセージです!」


披露宴会場の照明がふわりと落ちた。
スクリーンに映し出されたのは「生徒会執行部からのメッセージ」の文字だ。
桜井は思わず、サトシに確認した。

「知ってた? 生徒会執行部からメッセージだって……」

「いや、知らないな」

「生徒会顧問のくせに?」

「マジで、知らないって」


映像スクリーンの中で、白金女子学園の制服姿の女生徒たちが、元気よく手を振っていた。

「サトシ先生、美柑先輩、ご結婚おめでとうございますー!」

「今日は私たち、生徒会執行部から、先輩にどうしても伝えたいことがあってビデオを作りました!」

画面には、二年生の文化祭でのステージ映像が映し出された。
先生たちが踊る「恋するフォーチュンクッキー」の懐かしい映像だった。
サトシがエスコートしているのは、アイドル風のドレスを着た、今は退職した教頭先生。

「副会長に立候補したとき、美柑先輩が掲げた公約、覚えてますか?」


映像は数年前の生徒会選挙に変わった。
「先生アイドル化計画、実行します!」と、マイクを握って叫んでいた在学中の桜井の映像が流れ、会場から笑いと歓声が起きた。

映像を見て桜井は恥ずかしがった。

「やだ。あの演説って、動画に残してたの? サトシ先生知ってた?」

「知ってたよ。逆に、桜井は知らなかったの? 青柳先生が学校のHPにアップして、SNSでも拡散されてたんだぞ」

「やーん! 知らなかったわ!」

生徒会執行部のメッセージはお祝いの言葉で終わった。

「…ほんとにやっちゃったのが、先輩らしかったです!」

「「「サトシ先生、美柑先輩、末永くお幸せに!!」」」


生徒会執行部からのメッセージビデオに、サトシと桜井は感動し、流れる涙をそっと拭いた。




 そして、映像が終わると、司会席に戻っていたレイコ姉さんが、少し声を張ってマイクを取った。

「さぁ、感動の余韻を胸に……、ここで一枚、みなさんと新郎新婦の集合写真を撮りましょう!」

と同時に、二階のテラスに姿を現したレイコ姉さん。
と、……カメラを抱えた青柳先生だった。

「すみませーん。僕、広報担当なんで……上の方から失礼しまーす!」

青柳先生が頭を下げた様子が、モニターに映って笑いを誘った。
レイコ姉さんは、台本通りに二階のテラスに移動しただけだったが、青柳先生はレイコ姉さんにご指名をもらったと喜んでいた。

レイコ姉さんは、得意げにアナウンスした。

「フォトグラファーはこの披露宴最大のカメラ小僧、青柳先生でーす!」

会場がわっと湧いた。
レイコ姉さんは、皆に聞こえないように小声で話した。

「さっきから、わたしを撮ってたんでしょ? カメラ小僧くん」

「はっ、バレてた?」

「とにかく、台本通りに動いてくださいよ。ここはあなたの腕にかかってるんですから」

「は、はいっ! 僕、頑張ります」

青柳先生は、あわあわしながらマイクを持ち直し、しどろもどろに話し始めた。

「しゅ、しゅうう、集合写真撮りますから、真ん中に全員集合してくださーい! もっと、真ん中に寄ってくださーい。そ、そ、そこの白いドレスの人、ちょっと……下がってください! で、できれば、ハッピーな笑顔で……えっと、ハッピー……スマイル、プリーズ……!」

笑いが起きるなか、レイコ姉さんがそっとマイクの電源を切ろうとしたその瞬間だった。
青柳先生は、カメラの向きをレイコ姉さんにかえた。
そして、ぼそりと、しかしマイクの拾う声量でつぶやいた。

「……好きだ……」

……静まり返る会場。
レイコ姉さんは固まって、聞き返した。

「……え? マイク・オンですけど?」



青柳先生は悲鳴を上げた。

「うわぁあああ!?」

レイコ姉さんは慌ててマイクをオフにした。
余りの恥ずかしさに、青柳先生はカメラで顔を隠すようにして小さくなった。

会場でそれを見ていたサトシの母が喜んだ。

「あなた! 見ました? 今、レイコがプロポーズされましたわ!」

しかし、父は不満そうに顔をしかめた。

「違う! あれは単なる余興だ。あんなものプロポーズではない! だとしても、わしが許さーん!!」

サトシも桜井も二階を見上げて唖然としていた。

「やっちまったな。……青柳先生」

「レイコ姉さん、真に受けないで欲しいわ。嫌よ、青柳先生と親戚になりたくない……」

「俺もだ」

「それにおかしいわよ。なんで白金女子学園の広報が関係あるの? 結婚式ってプライベートなもので、学校行事とは関係ないのに」

桜井の批判にサトシは反論できなかった。
それというのも、記念撮影と称して青柳先生を2階テラスに上げたのはサトシの計画で、桜井に内緒のサプライズのためだったから。


サトシの結婚式の招待客が見ている中、告白されたレイコ姉さんは心の中でつぶやいた。

「このひと、アホなの? 変わってる子……今までにないタイプだけど、これでサプライズうまくいくの?」
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