革命のエチュード

鳴真 のわか

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ふたりの愛憎編

10.傍観者Bの独白

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東城陽介のことをはじめて知った時、非の打ち所がなさすぎて漫画のキャラみたいだなと思った。
なんせ顔がいいしピアノが上手い。これだけでも恵まれているなぁと思うのに、物腰や言葉まで柔らかい。小学生のころから「王子様」なんて呼んでいた女子がいたほどだった。
学区がいっしょだという理由だけで小学校は同じだったけど、中学からは別れた。近くに名門の音楽学校があって、彼はそこの中等部に進学したからだ。

「こいつのショパンがヤバいんだって!」
「ふぅん…?」

そして彼、月島秋人。ピアノ教室がいっしょだったんだけど、普段はドイツに住んでいるとかでほとんど顔を見ることがなかった男だ。
こいつもまた綺麗な顔をしていて、亜麻色の髪と透き通るような肌の白さが作り物みたいな印象に拍車をかけている。同世代の男と並ぶと華奢な方なのにピアノの演奏は力強くて、そのギャップに惚れ込んでいる奴も多そうだった。
しかもドイツ語喋れるってことだしな、チートすぎるよな。たぶん英語もイケんじゃね?
しかし、だ。普段はピアノ教室で顔を見るなり月島のピアノを褒めちぎる俺だけど、その日ばかりは例外だった。
先日行われたとあるコンクールでの東城の演奏がマッジで最高で、日本にもこんなスゲー奴がいるんだぜ! って教えてやりたかったからだ。相変わらず表情がわかりにくい奴だったけど、俺がスマホで見せた東城の演奏する動画は食い入るように見つめてくれてたっけなぁ。
そのコンクールで月島が人生ではじめて優勝を逃したのだということを、俺はずいぶん時間が経ってから知ることになる。

「こいつ、俺よりも上手いの?」

東城が舞台袖に消えていくまでをきっちり見終えた月島は、普段よりもずいぶんと声を低くした。瞳孔が開いた瞳で見つめてきて、鋭利な凶器みたいな声色で質問を投げかけてきたのを覚えている。
慌ててフォローするようにその時の精一杯の語彙力で喋り続けたんだよなぁ。

でも月島も東城と同じ学校に通っているらしく、高校に進学したいまではいろんなコンクールで二人の名前を耳にする。
美しいライバル関係ってやつ? ますます漫画みたいになってきたな。

俺は中学の時に高校受験をきっかけにピアノを辞めちまったんだけど、二人の幼いころの姿を知っている身としてはなんとなく誇らしい。
プロになったりすんのかなぁ、サインもらっときゃ良かったかなぁ。もったいないことしたな。
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