9 / 28
9
しおりを挟む
「……やはり無理だ。ユーリ、私は城の外には出ん。この茨の壁の中に一生こもって、押し花だけを作って生きていく」
ソーン城の執務室。ゼノスは机の影に隠れるようにして、深く溜息をつきました。
目の前には、近隣の村長たちから届いた「お花見の開催要請」という名の嘆願書が山積みになっています。
「何を弱気なことをおっしゃるんですか、ゼノス様! あんなに立派な茨(トゲ)をお持ちなのに!」
ユーリは机をバンと叩き、身を乗り出しました。
「いいですか? 植物だって、環境が変われば最初は萎れるものです。でも、適切な植え替えと剪定を行えば、どんなに気難しい種だって立派に開花しますわ!」
「私は植物ではない、人間だ。……それに、外に出ればまた『呪われた公爵』と石を投げられるのがオチだ。私の顔を見てみろ。この目つきで笑いかけたら、子供なら泣き出し、大人は腰を抜かすぞ」
ゼノスは自嘲気味に笑い、鋭い三白眼を伏せました。
ユーリはふむ、と顎に手を当ててゼノスを観察しました。
「なるほど。確かに今のゼノス様は、日当たりの悪い場所に放置されて徒長(とちょう)した、トゲばかりが目立つサボテンのようですわね」
「……例えがいちいち痛烈だな」
「ですが、解決策は簡単です! ゼノス様、今日からあなたは、周りの人間を『人間』だと思わなければいいのですわ!」
「……どういう意味だ? 彼らを魔物か何かだと思えと?」
「いいえ! 全員、動くジャガイモだと思ってください!」
「…………ジャガイモ?」
ゼノスは呆然とユーリを見つめました。
「そうです。あちらにいる門番は、ちょっとガタイのいいキタアカリ。あちらの村長は、泥のついたメークイン。泣いている子供は、これから芽が出る新ジャガイモです!」
「……何を言っているんだ、貴様は」
「いいですか、ゼノス様。あなたは植物相手なら、あんなに情熱的に語り合えるではありませんか。人間だと思うから怖いのです。彼らを、根っこから引っこ抜かれたばかりの、無害なナス科の植物だと思えば、緊張なんて霧散しますわ!」
ユーリはゼノスの背中を力いっぱい叩きました。
「さあ、レッツ・ガーデニング(対人交流)です! まずは庭の入り口で待っている、キタアカリ……いえ、門番に挨拶をしてきましょう!」
「待て、心の準備が……! うわあああ!?」
ユーリの凄まじい力に引きずられ、ゼノスは中庭へと連行されました。
そこには、報告事項を持ってきた門番が直立不動で待機していました。
「ひっ……! ぜ、ゼノス閣下! お、おはようございますっ!」
門番はゼノスの鋭い視線(実際は極度の緊張で固まっているだけ)を浴びて、ガチガチと歯を鳴らしました。
(落ち着け……。目の前にいるのは人間ではない。鎧を着た、少し立派なキタアカリだ。……いや、こいつは男爵芋か……?)
ゼノスは必死に自分に言い聞かせました。
「……おい、キタアカリ。……いや、門番」
「は、はいぃっ!」
「……最近の、土壌の……いや、体調はどうだ。水分は足りているか? 日当たりは……。……しっかり日光を浴びて、光合成に励めよ」
「………………は?」
門番は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしました。
「……あ、ありがとうございます? 日光浴、頑張ります……?」
ゼノスは早歩きでその場を去ると、物陰でがっくりと膝をつきました。
「……死ぬ。死ぬほど恥ずかしい。私は今、部下に光合成を強要したぞ。やはり変人だと思われたに違いない……!」
「いいえ、ゼノス様! 見てください、あの門番の顔を!」
ユーリが指差した先では、門番が感激に打ち震えていました。
「……聞いたか? 閣下が、俺の体調を気遣ってくださったぞ! しかも『日光を浴びろ』なんて、まるでお日様のような温かいお言葉じゃないか……! 閣下は、本当は俺たちの健康を考えてくださっているんだ!」
「……ええっ!?」
ゼノスの困惑をよそに、周囲の兵士たちの間で「閣下は植物だけでなく、部下も慈しむ慈愛の主だ」という誤解が爆速で広がり始めました。
「ほら、成功ですわ! 次は村長……もとい、大粒のメークインと対談しましょう!」
「もうやめてくれ! 私の尊厳が根腐れを起こしそうだ!」
その後も、ユーリの「人間=野菜」教育法は続きました。
領民の悩み相談に対しても、ゼノスはユーリのアドバイスに従い、独特の回答を連発しました。
「閣下! 隣の村との水争いが絶えません、どうすれば!」
「……水か。水の配分は重要だ。……根元に一気に注ぐのではなく、早朝に少しずつマルチングを施しながら分ければ、全員が瑞々しく育つだろう。争う暇があるなら、互いの土壌を耕し合え」
「……おおお! なんと深い比喩だ! 目先の利益ではなく、長期的な共生を説いておられる!」
「閣下! 娘が結婚相手に悩んでおりまして……!」
「……交配か。見た目の華やかさ(花びら)だけで選ぶと、冬の寒さに耐えられんぞ。……茎の太さと、根の張り具合を確認しろ。それが家庭という庭を支える礎(いしづえ)となる」
「……素晴らしい! 閣下、人生の真理を突いていらっしゃる!」
気づけば、ゼノスは「恐ろしい茨公爵」から、「難解だが深い植物の教えを授けてくれる、孤高の賢者」へとクラスチェンジを果たしていました。
夕暮れ時。
全ての対応を終えたゼノスは、抜け殻のようになってベンチに腰掛けていました。
「……ユーリ。私はもう、自分が人間なのか、歩く肥料袋なのか分からなくなってきた……」
「何を仰っているんですか。あなたは世界一立派な『茨の王様』ですわ」
ユーリはゼノスの隣に座り、ひょいと彼の髪についた小さな葉っぱを取りました。
「でも、今日一日で、随分と素敵な緑のオーラを纏うようになりましたわね。ほら、トゲが少し丸くなって、代わりに温かい魔力が溢れています」
「…………そうか」
ゼノスは、自分の掌を見つめました。
確かに、以前のような人を拒絶する刺々しい感覚が、少しだけ和らいでいる気がします。
「……貴様に言われた通り、彼らをジャガイモだと思えば、少しだけ楽になれた気がする。……礼を言う、ユーリ」
「ふふっ、どういたしまして! お礼なら、明日の朝一番で、裏山の腐葉土を一緒に回収しに行ってくださるだけで結構ですよ?」
「……やはり、最後はそれか」
ゼノスは苦笑しながらも、隣で楽しそうに明日の「肥料計画」を語るユーリの横顔を、穏やかな眼差しで見つめていました。
この時、二人の間に漂っていたのは、百合の花のような純粋で、かつ堆肥のような(?)濃厚な信頼関係の芽生えでした。
しかし、そんな穏やかな時間を壊すように、城の正門に「王家の紋章」を刻んだ豪華な馬車が到着したのは、その直後のことでした。
ソーン城の執務室。ゼノスは机の影に隠れるようにして、深く溜息をつきました。
目の前には、近隣の村長たちから届いた「お花見の開催要請」という名の嘆願書が山積みになっています。
「何を弱気なことをおっしゃるんですか、ゼノス様! あんなに立派な茨(トゲ)をお持ちなのに!」
ユーリは机をバンと叩き、身を乗り出しました。
「いいですか? 植物だって、環境が変われば最初は萎れるものです。でも、適切な植え替えと剪定を行えば、どんなに気難しい種だって立派に開花しますわ!」
「私は植物ではない、人間だ。……それに、外に出ればまた『呪われた公爵』と石を投げられるのがオチだ。私の顔を見てみろ。この目つきで笑いかけたら、子供なら泣き出し、大人は腰を抜かすぞ」
ゼノスは自嘲気味に笑い、鋭い三白眼を伏せました。
ユーリはふむ、と顎に手を当ててゼノスを観察しました。
「なるほど。確かに今のゼノス様は、日当たりの悪い場所に放置されて徒長(とちょう)した、トゲばかりが目立つサボテンのようですわね」
「……例えがいちいち痛烈だな」
「ですが、解決策は簡単です! ゼノス様、今日からあなたは、周りの人間を『人間』だと思わなければいいのですわ!」
「……どういう意味だ? 彼らを魔物か何かだと思えと?」
「いいえ! 全員、動くジャガイモだと思ってください!」
「…………ジャガイモ?」
ゼノスは呆然とユーリを見つめました。
「そうです。あちらにいる門番は、ちょっとガタイのいいキタアカリ。あちらの村長は、泥のついたメークイン。泣いている子供は、これから芽が出る新ジャガイモです!」
「……何を言っているんだ、貴様は」
「いいですか、ゼノス様。あなたは植物相手なら、あんなに情熱的に語り合えるではありませんか。人間だと思うから怖いのです。彼らを、根っこから引っこ抜かれたばかりの、無害なナス科の植物だと思えば、緊張なんて霧散しますわ!」
ユーリはゼノスの背中を力いっぱい叩きました。
「さあ、レッツ・ガーデニング(対人交流)です! まずは庭の入り口で待っている、キタアカリ……いえ、門番に挨拶をしてきましょう!」
「待て、心の準備が……! うわあああ!?」
ユーリの凄まじい力に引きずられ、ゼノスは中庭へと連行されました。
そこには、報告事項を持ってきた門番が直立不動で待機していました。
「ひっ……! ぜ、ゼノス閣下! お、おはようございますっ!」
門番はゼノスの鋭い視線(実際は極度の緊張で固まっているだけ)を浴びて、ガチガチと歯を鳴らしました。
(落ち着け……。目の前にいるのは人間ではない。鎧を着た、少し立派なキタアカリだ。……いや、こいつは男爵芋か……?)
ゼノスは必死に自分に言い聞かせました。
「……おい、キタアカリ。……いや、門番」
「は、はいぃっ!」
「……最近の、土壌の……いや、体調はどうだ。水分は足りているか? 日当たりは……。……しっかり日光を浴びて、光合成に励めよ」
「………………は?」
門番は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしました。
「……あ、ありがとうございます? 日光浴、頑張ります……?」
ゼノスは早歩きでその場を去ると、物陰でがっくりと膝をつきました。
「……死ぬ。死ぬほど恥ずかしい。私は今、部下に光合成を強要したぞ。やはり変人だと思われたに違いない……!」
「いいえ、ゼノス様! 見てください、あの門番の顔を!」
ユーリが指差した先では、門番が感激に打ち震えていました。
「……聞いたか? 閣下が、俺の体調を気遣ってくださったぞ! しかも『日光を浴びろ』なんて、まるでお日様のような温かいお言葉じゃないか……! 閣下は、本当は俺たちの健康を考えてくださっているんだ!」
「……ええっ!?」
ゼノスの困惑をよそに、周囲の兵士たちの間で「閣下は植物だけでなく、部下も慈しむ慈愛の主だ」という誤解が爆速で広がり始めました。
「ほら、成功ですわ! 次は村長……もとい、大粒のメークインと対談しましょう!」
「もうやめてくれ! 私の尊厳が根腐れを起こしそうだ!」
その後も、ユーリの「人間=野菜」教育法は続きました。
領民の悩み相談に対しても、ゼノスはユーリのアドバイスに従い、独特の回答を連発しました。
「閣下! 隣の村との水争いが絶えません、どうすれば!」
「……水か。水の配分は重要だ。……根元に一気に注ぐのではなく、早朝に少しずつマルチングを施しながら分ければ、全員が瑞々しく育つだろう。争う暇があるなら、互いの土壌を耕し合え」
「……おおお! なんと深い比喩だ! 目先の利益ではなく、長期的な共生を説いておられる!」
「閣下! 娘が結婚相手に悩んでおりまして……!」
「……交配か。見た目の華やかさ(花びら)だけで選ぶと、冬の寒さに耐えられんぞ。……茎の太さと、根の張り具合を確認しろ。それが家庭という庭を支える礎(いしづえ)となる」
「……素晴らしい! 閣下、人生の真理を突いていらっしゃる!」
気づけば、ゼノスは「恐ろしい茨公爵」から、「難解だが深い植物の教えを授けてくれる、孤高の賢者」へとクラスチェンジを果たしていました。
夕暮れ時。
全ての対応を終えたゼノスは、抜け殻のようになってベンチに腰掛けていました。
「……ユーリ。私はもう、自分が人間なのか、歩く肥料袋なのか分からなくなってきた……」
「何を仰っているんですか。あなたは世界一立派な『茨の王様』ですわ」
ユーリはゼノスの隣に座り、ひょいと彼の髪についた小さな葉っぱを取りました。
「でも、今日一日で、随分と素敵な緑のオーラを纏うようになりましたわね。ほら、トゲが少し丸くなって、代わりに温かい魔力が溢れています」
「…………そうか」
ゼノスは、自分の掌を見つめました。
確かに、以前のような人を拒絶する刺々しい感覚が、少しだけ和らいでいる気がします。
「……貴様に言われた通り、彼らをジャガイモだと思えば、少しだけ楽になれた気がする。……礼を言う、ユーリ」
「ふふっ、どういたしまして! お礼なら、明日の朝一番で、裏山の腐葉土を一緒に回収しに行ってくださるだけで結構ですよ?」
「……やはり、最後はそれか」
ゼノスは苦笑しながらも、隣で楽しそうに明日の「肥料計画」を語るユーリの横顔を、穏やかな眼差しで見つめていました。
この時、二人の間に漂っていたのは、百合の花のような純粋で、かつ堆肥のような(?)濃厚な信頼関係の芽生えでした。
しかし、そんな穏やかな時間を壊すように、城の正門に「王家の紋章」を刻んだ豪華な馬車が到着したのは、その直後のことでした。
1
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
婚約辞退いたします。だってこの国、沈みますもの
鍛高譚
恋愛
「婚約はお断りいたします――この国は近い将来、崩壊しますので」
そう言い放ったのは、社交界でも目立たない子爵令嬢、マリン・アクアリウム。
ある日、とある舞踏会に突如現れた王太子ガイア殿下。
誰もが驚く中、なんと彼はマリンに婚約を申し出る。
周囲は騒然。「子爵令嬢が王太子妃!?」「断る理由などないはず!」
――だが、彼女は断った。「この国は、もうすぐ滅びます」――と。
そんな不吉な言葉を口にしたことで、彼女は“狂言癖のある嘘つき令嬢”と噂され、
家族にさえ見放され、ついには国外追放の身に。
だが、彼女の予言は本物だった――
数年後、王国に未曾有の大災厄が迫る。
国土が崩れ、海に沈む都市。人々が絶望する中、思い出されるのは、
あの舞踏会でただひとり“滅び”を告げた少女の名。
「彼女なら、この国を救えるかもしれない……」
皮肉にも“追放令嬢”マリンは、再び王都に呼び戻され、
滅びゆく国で最後の希望として担ぎ上げられる。
信じてもらえなかった過去。
それでも人々の命を守ろうと奔走するマリン。
そして、王子ガイアが差し伸べた、あの日と変わらぬ手。
――たとえ国が滅んでも、あなたとともに歩んでいきたい。
【完結】レイハート公爵夫人の時戻し
風見ゆうみ
恋愛
公爵夫人である母が亡くなったのは、私、ソラリアが二歳になり、妹のソレイユが生まれてすぐのことだ。だから、母の記憶はないに等しい。
そんな母が私宛に残していたものがあった。
青色の押し花付きの白い封筒に入った便箋が三枚。
一枚目には【愛するソラリアへ】三枚目に【母より】それ以外、何も書かれていなかった。
父の死後、女性は爵位を継ぐことができないため、私は公爵代理として、領民のために尽くした。
十九歳になった私は、婚約者に婿入りしてもらい、彼に公爵の爵位を継いでもらった。幸せな日々が続くかと思ったが、彼との子供を授かったとわかった数日後、私は夫と実の妹に殺されてしまう。
けれど、気がついた時には、ちょうど一年前になる初夜の晩に戻っており、空白だったはずの母からの手紙が読めるようになっていた。
殺されたことで羊の形をした使い魔が見えるようになっただけでなく『時戻しの魔法』を使えるようになった私は、爵位を取り返し、妹と夫を家から追い出すことに決める。だが、気弱な夫は「ソラリアを愛している。別れたくない」と泣くばかりで、離婚を認めてくれず――。
婚約破棄したその場から、ざまぁは始まっていました
ふわふわ
恋愛
王国随一の名門、アルファルド公爵家の令嬢シャウラは、
ある日、第一王子アセルスから一方的に婚約を破棄される。
理由はただ一つ――
「平民出身の聖女と婚約するため」。
だが、その“婚約破棄したその場”で、ざまぁはすでに始まっていた。
シャウラは泣かず、怒らず、抗議もしない。
ただ静かに席を立っただけ。
それだけで――
王国最大派閥アルファルド派は王子への支持を撤回し、
王国最大の商会は資金提供を打ち切り、
王太子候補だったアセルスは、政治と経済の両方を失っていく。
一方シャウラは、何もしていない。
復讐もしない。断罪もしない。
平穏な日常を送りながら、無自覚のまま派閥の結束を保ち続ける。
そして王国は、
“王太子を立てない”という前代未聞の選択をし、
聡明な第一王女マリーが女王として即位する――。
誰かを裁くことなく、
誰かを蹴落とすことなく、
ただ「席を立った」者だけが、最後まで穏やかでいられた。
これは、
婚約破棄から始まる――
静かで、上品で、取り返しのつかないざまぁの物語。
「私は何もしていませんわ」
それが、最強の勝利だった。
世界の現実は、理不尽で残酷だ――平等など存在しない
鷹 綾
恋愛
「学園内は、身分に関係なく平等であるべきです」
その“正義”が、王国を崩しかけた。
王太子ルイスは、貴族学院で平民出身の聖女マリアがいじめられたと信じ、
婚約者である公爵令嬢アリエノール・ダキテーヌを断罪し、婚約破棄を宣言する。
だが――
たとえそれが事実であったとしても、
それは婚約破棄の正当な理由にはならなかった。
貴族社会において、婚約とは恋愛ではない。
それは契約であり、権力であり、国家の均衡そのものだ。
「世界は、残酷で不平等なのです」
その現実を理解しないまま振るわれた“善意の正義”は、
王太子の廃嫡、聖女の幽閉、王家と公爵家の決定的な断絶を招く。
婚約破棄は恋愛劇では終わらない。
それは、国家が牙を剥く瞬間だ。
本作は、
「いじめられたという事実があっても、それは免罪符にはならない」
「平等を信じた者が、最も残酷な結末に辿り着く」
そんな現実を、徹底して描く。
――これは、ざまぁではない。
誰も救われない、残酷な現実の物語である。
※本作は中世ヨーロッパをモデルにしたフィクションです。
学園制度・男女共学などは史実とは異なりますが、
権力構造と政治的判断の冷酷さを重視して描いています。
---
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる